長崎市の諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」が10月7日に開幕。7つの踊町が奉納踊を披露した。雨の影響が心配されたが、奉納踊は予定通り午前7時に始まった。2024年の踊町は興善町、八幡町、万才町、西浜町(浜はまゆはま)、麴屋町、銀屋町、五嶋町の7カ町だ。
興善町「本踊・石橋」圧巻の紅白獅子「毛振り」
祭りの開幕を告げたのは興善町「本踊・石橋(しゃっきょう)」。
この記事の画像(25枚)中国の清涼山文殊菩薩の浄土にかかる石橋の前で、紅白の獅子が登場。能を基にした格調高く、おめでたい踊りだ。牡丹(ぼたん)の花が咲き誇る石橋の傍らで、獅子と胡蝶(こちょう)が戯れる様子を表現している。
紅白の獅子が勇ましく豪快に乱舞する姿は圧巻。長さ約2メートル、重さ3kgにもなる「かつら」を振り乱して大きく弧を描く「毛振り」が見せ場だ。
白獅子の藤間織月さんは「雰囲気も違ったし、観客とも近いということもあって緊張したが、これまでしっかりやってきたので自信を持って踊れた」とほっとしていた。
八幡町「弓矢八幡祝い船」白鳩が飛ぶ
2番手は八幡町「剣舞・弓矢八幡祝い船」。
山伏たちが諏訪神社に奉祷文を納めようと、侍大将に守られながら、長崎に入港する様子を表している。
注目は、神の使いである白鳩が飛び立つ演出だ。
船を連続して曳き回す大技「八幡返し」でも、長坂を魅了した。
根曳の堤亮介さんは「全員けがすることもなく、全力で最後までやり切れたので悔いはない」と話した。
万才町「本踊」町内総参加の踊り
3番手・万才町が奉納するのは本踊「祭祝萬歳町」である。2024年は曲も演出も一新。
「長崎ぶらぶら節」や「浜節」「あっかとばい」など、長崎で歌い継がれてきた民謡や童歌を独自に作った楽曲でまとめ、長崎の四季と情景を描いた。
子どもの踊子に初めて男の子が出演し、これまでにない演出も飛び出した。
踊子だけでなく、踊り子の父母や町の役員、婦人部まで総出の町内総参加で踊る場面もあり、町がひとつになった。
踊子の園田彩乃さんは「楽しくできました。もっと客が盛り上がってくれる踊りをしたい」と意気込む。
西浜町「龍船」船上で二胡の演奏も
4番手の西浜町(浜はまゆはま)は「龍船」だ。船の上では中国・上海出身のシシーチィさんが二胡を演奏した。
船上の舞台を使った演出は、西浜町でしか見ることができない。
船はハンドルとブレーキを備え、前方1輪、後方2輪の3輪構造。全長11m、重さ3.7tの最大級と言われる船が豪快に回る。
船首の龍は煙を吐き、豪快かつ趣向を凝らした演出に、見物客のボルテージも上がった。舵手の森武義治さんは「やっぱりいいですね。みんなとできて最高でした」と奉納を終えて感無量の様子だった。
麹屋町「川船」網打船頭が一網打尽!
5番手、麹屋町の「川船」には2人の船頭がいる。舳先で采を握るのは、飾船頭の淵颯佑(ふちそうすけ)ちゃん。
長崎刺繡の衣装は町の誇りだ。
網打船頭は小学5年生の久米緩征(くめかんせい)さんが務める。
5月に約3kgの投網を持ち始め、この日のために毎日のように練習してきた。
2回連続で一網打尽にした。「全部捕れた!うれしかった!」と笑顔で語った。
川船は捉えた鯉を諏訪神社に献上する様を描いた演し物だ。終盤には山車から水しぶきを上げ、5回転半の大技「梅の風車」も披露して、くんちファンを沸かせた。
網打船頭が成功したことで、根曳や采振も気持ちが高まったという。町がひとつになった瞬間だった。
銀屋町「鯱太鼓」鯱が天へ舞い上がる
6番手は銀屋町「鯱太鼓(しゃちだいこ)」。据太鼓の迫力ある演奏で始まった。
人々に幸運を招くという中国の蓬莱鯱(ほうらいこ)伝説に基づいた「鯱太鼓」を奉納する。
山飾は約750kg。担手の心をひとつに回したり投げたりして海をわたる鯱が天高く舞い上がり、龍になる様をあらわす。
38人の心をひとつに鯱が空へ舞い上がると、諏訪の杜は熱気に包まれた。
初出演の担手である堤公輔さんは「緊張したが、始まったら楽しかった。今までやってきたことを全部出し切りたい」と話した。
五嶋町「龍踊」青龍と白龍が駆け抜ける
トリを務めるのは五嶋町「龍踊」。龍が登場すると踊り馬場が一気に中国色に染まった。
龍は不老長寿の源とされる「月」を飲み込もうと珠を追い求める。嵐の訪れを示す唐楽拍子にあわせ、重さ120kgの龍を10人の龍衆が入れ替わりながら操るのだ。
目まぐるしいスピードで駆け抜ける龍は2体。青龍と白龍だ。
白煙から龍が登場するのは前回10年前に取り入れた演出だ。62人の龍衆が思いを込めて龍に命を吹き込んだ。
2体の龍が天高く舞うとアンコールの「モッテコーイ」が飛び交い、諏訪の杜は祭り一色になった。
長崎は9日までの3日間、くんちムードに染まる。
(テレビ長崎)