香川・高松市のハンセン病療養所「大島青松園」の入所者に対し、戦時中、旧陸軍が開発した薬「虹波(こうは)」の“人体実験”が行われていた。実験中に9人が死亡したとの記録も残る虹波。被験者となった男性に話を聞くことができた。
「恐ろしかったから言いなり」
10歳の時、高松市にあるハンセン病療養所の大島青松園に入所した松本常二さん(92)は「モルモット代わりにされたと思う。恐ろしかったから言いなり。断れない。全国的にハンセン病(患者)を試験台に使ったと思う」と当時の体験を語った。

松本さんは、約80年前に青松園の入所者180人に対して行われたという「虹波」の臨床試験の被験者となった。
まだ子どもだった松本さんは、約半年間にわたり虹波を錠剤で服用させられ、その後にハンセン病の症状も進んだという。

虹波を服用した際のことを「西も東も分からない状態で、10日ほどベッドで意識不明で寝ていた。眉毛が抜けたり、目も悪くなったのも虹波の影響があったのでは。ただ恐ろしい、よく耐えたなと思う」と語った。
実験中に9人死亡…激しい副作用も
虹波は旧陸軍が開発した薬で、戦闘に必要な人体機能の増進などが目的とされ、熊本県のハンセン病療養所「菊池恵楓園」では、少なくとも472人に対し“人体実験”が行われたことが分かっている。

菊池恵楓園の検証報告によると、実験中に9人が死亡したという記録も残されているほか、激しい副作用があっても投与が中止されることはなかったという。
近年、虹波投与問題が取り沙汰されていることについて、松本さんは「遅すぎる。80年もたっていることを掘り起こさないで、静かに眠らせてほしい」と胸の内を語る一方、「解決したら、うれしい」と実態解明を望んでいた。
(岡山放送)