まもなく本格的な新米のシーズンを迎えるが、政府は、随意契約で売り渡された備蓄米について2025年8月末としていた販売期限の延長を正式に発表した。
備蓄米の販売期限延長 消費者も好意的
小泉進次郎農林水産相は8月20日「契約した数量を約束通り流通させることが農水省としての責任だと考えます。引き続き販売を希望する方については、引き渡しと販売の期限を延長することといたします」と発表。販売期限は設けないとしているが「引き渡し後、1カ月以内に売り切る努力をしてほしい」としている。

福岡市内のスーパー『サニー平尾店』では、入荷したばかりの備蓄米が、店内の目立つ場所に並べられていた。

この店舗では政府の随意契約の備蓄米を5キロ税込み1890円で販売しているが、入荷は不定期で、予告なしで店頭に並んでも、その日のうちに売り切れてしまうことが殆どだという。

『サニー平尾店』店長の崎秀嗣さんは「長く備蓄米の販売が続くということは、こういった価格帯のものは国産米では存在していないので、選択肢が広がっていることはいいことだと思う」と話す。

また買い物客からも「いいんじゃないですか、豊かな人ばっかりじゃないですから」「チャンスが来たら買おうと思ってます」「備蓄米も店頭に並んだ方がいいと思います。選択肢が増える方がいい」などの声が聞かれ、備蓄米の販売期限延長については、店だけでなく消費者も好意的に受け止めているようだ。

一方で、今回の販売期限延長の背景には小売業者などと随意契約された28万トンのうち10万トンほどについて、まだ事業者への引き渡しができていないという現状がある。
懸念される新米への影響
福岡・広川町に本社を置くコメの卸売会社『カネガエ』は、6月に始まった備蓄米の随意契約に合わせて150トンを申し込んでいるが、そのうち50トンがまだ届いていない。

小泉農水相が、期限の延期を発表したその日の午後、農水省から連絡があり、届いていない分については需要があることからキャンセルせず、引き渡しを希望したという。

『カネガエ』米穀部門長の森島一紗さんに備蓄米の売れ行きを尋ねると「購入のために結構、遠方から来られたり、会社の方に問い合わせがあったり、結構、求めてあるんだなというのは感じています。一昨年くらいからコメの情勢って急に変わったりしているので、精一杯やっていくしかないと思っています」と話す。これまでにグループ企業の倉庫で、5キロ税込み1800円で実施した3回の直売会は好評だという。

こうしたなか、備蓄米の期限が伸びたことで懸念されているのが新米への影響だ。当初、8月末までの期限が設けられていたのは、新米が市場に出回る時期と重ならないようにすることが理由だった。

『カネガエ』でも7月末から宮崎県産の早場米を800トン仕入れているが、2024年に60キロあたり2万円ほどだった仕入れ価格が、2025年は約3万4千円と1.7倍に跳ね上がっている。

店頭での価格が2024年より上がることは間違いないとしているが、備蓄米の期限延長がどのような影響を及ぼすかは未知数だという。

森島部門長は「生産者さんの方からの『これくらいで買ってほしい』という思いも結構、詰まった価格なのかなと思います。やっぱり需要と供給のバランスによって相場って決まっていくので、自分たちも卸業者さんも心配しているところではあるかな。先行き不透明ですね」と話す。不安は拭いきれないようだ。
JA組合長 農政への不安を訴える
小泉農水相は、期限の延長が新米の価格に影響することはないとしているが、市場からの不安は拭えないままだ。8月20日には福岡県内のJA直鞍(直方市・宮若市・鞍手町・小竹町)の組合長、堀勝彦さん(83)が小泉農水相の元を訪れ、農政への不安を直接訴えた。

「コメの値段が下がるんじゃないか。そうしたら農家や農協に打撃があるんじゃないか」(堀組合長)。

「マーケットが落ち着いた段階で備蓄米を放出した量を水準に戻します」(小泉農水相)。

「私たちは農水省の指導の通りに動いているんですよ」(堀組合長)。「そうですか?なかなかそんなことないですよ」(小泉農水相)。「どういう意味ですか?」(堀組合長)。

コメ価格の先行きもこれからの日本の農業のあり方も見通せないまま、まもなく本格的な新米のシーズンを迎える。
(テレビ西日本)