パリオリンピックで高知に92年ぶりの金メダルを届けた幼なじみの2人、レスリング日本代表の桜井つぐみ選手(22)と清岡幸大郎選手(23)の栄光への軌跡をたどる。

幼なじみは「一番のライバル」

高知・香南市出身の桜井つぐみ選手と高知市出身の清岡幸大郎選手は、高知県勢として92年ぶりの金メダルを獲得した。2人がレスリングを始めたのは20年前。桜井選手の父・優史さんが立ち上げた高知レスリングクラブに1期生として入門した。

幼少期から活躍していた桜井つぐみ選手(左)と清岡幸大郎選手(右)
幼少期から活躍していた桜井つぐみ選手(左)と清岡幸大郎選手(右)
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2人の恩師である桜井優史監督は「つぐみなんかほんとに鈍くさくて。体を動かすのは嫌いじゃなかったと思うんですけど、どっちかというと座ってままごとしたりとかそっちのほうが向いているんじゃないかなっていう子だったので。幸大郎はほんとに活発な子で、この子は面白いなとはずっと思ってたんですけど、この子らが強くなるとか、それこそオリンピックとかってそんなこと考えてなかったですね」と話していたが、2人は幼少期から頭角を現していった。

中学時代の桜井選手を指導する父・優史さん
中学時代の桜井選手を指導する父・優史さん

中学1年の頃の桜井選手に父・優史さんは、「当たり前のことやってくれんか。中学校1年生に何回こんなこと言わすの。お前何回言われてんだよ。二度と言わすなよ」と指導していた。熱血指導のもと2人は成長。桜井選手が中学時代に全国大会3連覇を果たせば、清岡選手は高校時代インターハイを制するなど互いの活躍に刺激を受けながら切磋琢磨してきた。

清岡選手は、「やっぱり一番のライバルでもありますし、彼女が結果を残せば、自分はすごく悔しくて悔しいから頑張れるし、逆もそうで諦めない要因になったというか、欠かせない存在だったなっていうふうに思います」と話していた。

「腕取り」で隙与えず圧巻の金メダル

そして夢の舞台が開幕。世界ランキング1位の桜井選手の得意技は、両腕で相手の片腕を取り試合を優位にすすめる「腕取り」だ。桜井つぐみ選手は初めてのオリンピックでカナダのテイラー選手に勝って初戦突破。その後も世界一の名に恥じぬ盤石の試合運びで決勝進出を決めた。

決勝戦の相手は対戦経験のあるモルドバの選手。序盤からポイントを重ね、4対0で前半を折り返した。後半に入っても得意の「腕取り」でつけ入る隙を与えず、6対0で見事、金メダルを獲得した。

桜井選手は、「ほんとにここで優勝するために練習してきたので、色んな人に支えてもらってここまで来ることができて優勝できてほんとに良かったです。(Q.お父さんからはどんな言葉が?)よくやったって言ってくれて。このオリンピックのために沢山の時間を犠牲にして自分たちのために厳しい練習も厳しいことも言ってくれたし、やってきて良かった」と語った。

先輩の歴史的快挙を目にした高知レスリングクラブ所属で高知学芸高校の1年・下田結月さんは、中学2年で全国優勝した次世代のホープだ。下田さんは「最高です。銀でもすごいんですけど、金取ってくれてめっちゃうれしいです。自分もやっぱりオリンピックで金メダルを取りたいので頑張る」と話した。

またレスリングクラブ時代、桜井選手に「腕取り」を指導した森誠司さんは、「いやーやりましたね。(Q.自分の教えた腕とりで勝ったが?)僕が教えた技ではもうレベルが全然違ってるが、何か一つそういうふうなきっかけになったということは、自分自身がレスリングやってて良かった」と語った。

亡き父へ「世界で一番きれいな景色」

そして、清岡選手の出番がやってきた。「今回も先に彼女(桜井選手)の方が試合をするので、また多分、先に優勝を決めて僕にプレッシャーをかけてくれると思うので、それの力も使って最後、優勝っていう形を残せたら最高かなと思います」と話していた清岡選手は、素早いタックルから相手を翻弄する快進撃で決勝へ進出。

金メダル獲得に沸くパブリックビューイング会場
金メダル獲得に沸くパブリックビューイング会場

決勝当日、清岡選手の母校・高知南高校ではパブリックビューイングが開かれ、会場のボルテージは最高潮に達していた。決勝戦の相手は、ここまで無失点というイランの強豪選手。1ポイントを先制されるも、試合中盤、怒涛の攻撃で金メダルを獲得した。

高知南高校の同級生・竹崎凜星さんは「本当にうれしい。自分が金メダルを取ったかのようなうれしさが出てきました」と話し、高校時代の担任・亀井久美子さんは、「喜びと感激でいっぱい。『(桜井選手と)2人でダブル金メダルを』ってずっと言っていたので、それが本当に叶って夢みたいです」と話した。

8月11日午後9時半、高知市では号外が配られた。号外を受け取った高知市の親子からは「良かったーすごい2人やん」「もうすごいとしか、尊敬します本当に」「まさかですね?うれしいですね。つぐみ選手の次にきてうれしいです」といった声が聞かれた。

清岡選手は、2022年、父・義雅さんを病気で亡くした。「金メダルをかけてもらった表彰台の一番上(2022年急逝した)お父さんとの時間はどんな時間でしたか?」と聞かれた清岡選手は「世界で一番、きれいな景色なんだよと。このオリンピックという舞台で優勝することができてすごく嬉しいですし、僕たちの活躍が地元高知にも届いて高知の皆さんにも元気や勇気、力を届けられたんじゃないか」と語った。

これまで一番近くで息子を応援してきた母・えりかさんは「(金メダルをかけて)もらうことを想定してなかったのでほんとにうれしくて。でも金メダルの重さは混乱して分かりませんでした。ほんとにうれしかったです」と話した。

愛弟子2人から桜井監督にも金メダルのサプライズ。桜井監督は「まあほんとにすごすぎて。ちょっとどんな感情だったかもよくわからないぐらい、すごすぎて」と語った。清岡選手と桜井選手は初出場にして頂点へ。高知に1932年のロサンゼルスオリンピック以来92年ぶりの金メダルを届けてくれた。

(高知さんさんテレビ)

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