日本選手団が、合計45個のメダルを獲得したパリオリンピック。その中のひとり、フェンシングの銅メダリスト、高嶋理紗選手(25)は福岡県のタレント発掘事業出身だ。タレント発掘事業とはどんなところなのか?取材した。
まだオリンピックの興奮冷めやらぬ8月16日。タレント発掘事業を訪れた高嶋選手は、トレーニングに勤しむ子どもたちを前にオリンピックで獲得したメダルの報告を行った。
この記事の画像(9枚)高嶋選手も小学生のとき、タレント発掘事業に参加して初めてフェンシングに出会い、メダリストにまで成長したのだ。「福岡に帰って来たら、一番に報告に来たいなと思っていたので、すぐメダルを持ってくることが出来てよかったです」と後輩たちに語る高嶋選手。メダルに触れたり、首からかけてもらったり、子どもたちにとっても何よりの刺激になったようだ。
生まれて初めてフェンシングに出会う
子どもの1人に話を聞くと、もともと陸上競技をしていたが、中学1年のときのオーディションでフェンシングに適性があるといわれフェンシングを始めたという。「2032年のブリスベンオリンピックでメダルを取ることです」と目標も明確だ。
タレント発掘事業の大きな特徴は、俊敏性や跳躍力、持久力など、それぞれの特性を見極めた上で、より将来活躍できる可能性の高い競技へとつなぐところ。オリンピック競技でありながら、ライフル射撃やカヌーなど小中学生には馴染みもなく、普段は接することもない競技を紹介する。
高嶋選手も「タレント発掘事業に入ってからフェンシングに出会って、最初はソフトボールを続けようと思ったんですけど、フェンシングの適性を見いだしてもらって、東京で頑張ろうと決めてオリンピックでメダル取りたいと強く思って、卒業したのを思い出します」と当時を振り返る。20年前から全国に先駆けて行ってきたこの取り組みで、パリオリンピックには8人の卒業生が出場し、初めてのメダリストが誕生するまでになったのだ。
子どもたちにスポーツの魅力を
8月20日に高嶋選手が訪れた先は、福岡県立玄界高校。タレント発掘事業で出会った恩師が指導するフェンシング部がある。「タレント発掘事業を通して、世界で戦える選手が増えたらいいなと思うので、関われる仕事があれば関わりたいです」。実は高嶋選手、子どもたちにスポーツの魅力を伝えることに興味を持っているという。
小学生の高嶋選手を指導した野元伸一郎先生は「初めてメダリストが誕生して、さらにメダルを取ってほしいと思いますし、そういった子たちが、さらに若い子たちを育てる指導者になってくれたら、本当に幸せです」と嬉しさを隠さない。
自分に適したスポーツとの出会い
次世代のトップアスリートの育成、タレント発掘事業の役割はそれだけにとどまらない。取材班が訪れたのは、タレント発掘事業の一次選考にあたる測定会の会場。タレント発掘事業に参加するためには、測定会で選ばれる必要がある。
高い運動能力が必要な狭き門だが、測定会にはいわゆる“普通の子たち”も参加している。子どもが参加した保護者に聞くと「ちょっと(うちの子)運動神経が、いいかなと思って参加」と笑いながら応えた。もし経験したことのない競技で、適性が向いていたら挑戦してみたいと子どもは話しているそうだ。自分が本当に向いているスポーツは何なのか?適性を把握するためにこの測定会を利用する人も増えているという。
福岡県スポーツ振興センター手島和人スポーツ推進課長に事情を聞くと「当初は、エリート教育ということに疑問を抱く方もいらっしゃったと思うけど、エリートだけではなくて全ての子どもたちの体力などに興味を持ってもらえるきっかけになっていると思う。タレント発掘事業というのが浸透したと思います」と話す。
福岡の子どもたちがもっとスポーツを楽しむ未来へ。タレント発掘事業は大きな可能性を秘めているのかもしれない。
(テレビ西日本)