ギャンブル依存症で苦しんでいるのは当事者だけではない。周囲の支援が“逆効果”になることもあり「あえて助けの手を引き突き放す」家族もいる。問題を抱え込まず医師などへの相談が重要と専門家は指摘する。
「年金を息子が全部使ってしまった」
ギャンブル依存症の当事者を抱える家族が6年前(2018年)に発足させた「ギャンブル依存症家族の会佐賀」。
この記事の画像(10枚)ここでは月に1回、家族会を開き、それぞれの経験や悩みを打ち明けている。
息子がギャンブル依存症というある女性。この女性は息子に年金を全て渡したところ3日間で全部使ってしまったという。いまも毎日、金の無心をする息子に困っていると語った。
当事者と家族…通じ合えない現実
ギャンブル依存症は、その当事者と家族の向き合い方が難しいという。
ギャンブル依存症の家族:
優しく言ったり、涙ながらに言ったり、怒って言ったり、いろいろやったんですけど、通じ合えないんですよ
同じ悩みを抱える家族同士の気持ちは通じ合えるが、家族と当事者の気持ちはなかなか通じないケースが多いのが現実だ。
“金銭管理”には意味がない
家族の会を立ち上げたメンバーでもある村田麿美さんは、ギャンブルの資金目当てに家庭内で窃盗を繰り返す大学生の息子との向き合い方で悩んだ経験を語った。
村田さんは、「息子にお金の使い方をきちんと教えなかった自分が悪い」と思ったという。このため、「金銭感覚を養わなければならない」と考え、息子の金銭管理を始めた。
ところが、「金銭管理には意味がない」ことを家族会のメンバーから指摘され、「息子本人が責任を感じなければならない」ことに気付いたという。
全国ギャンブル依存症家族の会 村田麿美さん:
当事者本人が本当に困らないと回復の道にはつながらない、そのためには家族が(助けの)手を引く、これが苦しい
村田さんは、“愛する家族を突き放す”辛さを覚悟し向き合う道を選んだ。
“周囲の支援”が逆効果に
ギャンブル依存症では、家族や周囲の支援が逆効果になることもあると専門家の医師も指摘する。
さがセレニティクリニック 山田幸子院長:
(家族が)“借金を解決してあげるから2度としないように”とするのが実は一番良くない。まず専門のところに家族が相談することが一番重要
“家族の絆”深いほど長引く問題
佐賀県によると、1年間(2020年)でギャンブル依存症が疑われる人が県内に1.2万人いるとされる中、病院の受診や相談窓口を利用した人はわずか160人あまり。人知れず悩みを抱える当事者や家族は少なくない。
また、家族の絆が深い地域ほど自分たちで何とか解決しようとするため、問題が長引く傾向もあると家族の会の村田さんは感じている。
問題抱え込まず相談してほしい
また村田さんは、「当事者の家族が問題を抱え込まず、悩む仲間と“つながる”ことが解決への近道」と語った。
全国ギャンブル依存症家族の会 村田麿美さん:
(家族が依存症であることは)恥でもなんでもないわけだから、家族は、困ったな、これどういうことだろう、と思ったときに必ず相談していただきたい
回り道もあった村田さんだが、ようやく我が子の回復を今は実感している。息子は自分がギャンブル依存症だということを採用面接の時に伝えて、“その経験は面白い”と言ってもらい、現在ある会社で社員として働いている。
佐賀県は、ギャンブル依存症に悩む本人や家族に、まずは県の精神保健福祉センターに相談するよう呼びかけている。
(サガテレビ)