賭け事にのめり込み、“普通の生活”さえ困難になる病「ギャンブル依存症」。借金と嘘を重ね、窃盗を繰り返し逮捕歴もある男性は、同じ病で悩む人たちとの集団生活を送りながら社会復帰を目指している。
「普通の会話もできなくなった」
「ギャンブル依存症」のため約20年にわたって生活がむしばまれてきた男性、ゴウさん(仮名)47歳。
この記事の画像(12枚)賭け事にのめり込み借金を抱えはじめた30代から、徐々に生活は荒んでいった。嘘をつかなくていい時にも嘘をついてしまうなど、普通の会話もできなくなり、人との接し方がわからなくなったという。
借金を重ね窃盗を繰り返し逮捕
借金と嘘を重ねて孤立し、追い詰められたゴウさんは、金が尽きてしまうと窃盗に走るようになった。
「これしか方法はない」と自分を追い込んでいたゴウさんは、盗みに走る度に手が震えたという。そして窃盗を繰り返した挙句、2023年11月に逮捕された。
ギャンブル依存症 ゴウさん:
正直、いま思えば捕まって“ほっとした”んですよね。やっと捕まえてくれたみたいな
留置所でギャンブルから離れることができ、ようやく自分の病と向き合えたゴウさんは、2024年3月、社会復帰への第一歩を踏み出した。
社会復帰へ集団生活でリハビリ
佐賀市にあるギャンブル依存症リハビリ施設「COBYPLAN」。
この施設では同じ病に悩む人たちが社会復帰を目指して約1年間、集団生活を送る。ゴウさんも入所しリハビリに取り組むことになった。
320万人に上るギャンブル依存症
20歳以上でギャンブル依存症を経験している、または将来、依存症になるおそれがある人は、全国で約320万人に上ると推計されている。
人が楽しいことをしたいと思うときにはドーパミンという物質が脳内で分泌され、報酬系と呼ばれる神経回路を刺激する。しかし、ギャンブルでは“過剰なドーパミン”が分泌されるため、その回路が強く刺激され、次第に行動を制御できなくなってしまうのだ。
ギャンブルでの借金を恥じ“孤立”
そして、「ギャンブルで借金をしていること自体が恥ずかしくなり、借金額が増えるほど、そのような気持ちが膨らみ、誰にも言えず一人で抱え込むようになる」と、ゴウさんは孤立していった自身の経験について語った。
リハビリ施設に入所したゴウさんは、「1日3食と睡眠がしっかり取れる。普通の生活をしたいと思ってこの施設に入った。少しずつだが、素直な自分を取り戻すことができてきている」と話す。
一方で、「何が回復か、というところはまだ見えていない状況」と話す入所者もいる。ギャンブル依存症のリハビリは容易ではない。
「一軒家を買えるくらい」失った
この施設で、ある日、入所者たちが取り組んだのは、質問や反論のない「言いっぱなし、聞きっぱなし」のミーティング。各々が自らの思いや経験を率直に話すという試みだ。
ある入所者は「ギャンブルで失った金額は普通の一軒家を買えるくらい」と話す。
また他の入所者は、「11か月半で施設を飛び出して逃げた。金を作れなくなり、帰る場所がなくなって、助けを求めて戻ってきた」とリハビリから挫折しそうになった経験を告白する。
このミーティングに参加したゴウさんは、「(失敗した話は)こういう場でしか聞けないので同じ境遇の仲間がいると気持ち的に楽」と語る。
特効薬がないギャンブル依存症
ギャンブル依存症には“特効薬”がない。専門家の医師は、仲間との“つながり”が回復するために重要と話す。
さがセレニティクリニック 山田幸子院長:
ギャンブル依存症に対してこの薬が効きますよっていうものはもちろん存在しないわけで、回復していくなかで大事にしているのは、人との“つながり”
孤立しない環境に身を置いて社会復帰を目指す入所者たち。ギャンブル依存症と闘う毎日が続いている。
(サガテレビ)