さらに高齢者は暑さを感じにくいことに加えて、
・汗をかきにくく熱が体内にこもりやすい
・喉が渇きにくく水分摂取が遅れがち
という。

この3点を踏まえ、高齢者は熱中症のリスクが高いと考えられるのだ。

“過信”している場合は危険

クーラーをつけない原因にはこうした体の機能の衰えがある一方で、意識の問題もある。

三菱電機の調査にもあったように「親の子供時代に、エアコンを使う習慣がなかったことの影響も考えられる」と清益医師は指摘する。

「私自身もそうですが、我々の子供時代に比べると暑さが厳しい印象です。平均気温も上がり、“真夏日”と言われる日も増えている。

そのために『扇風機で十分』『窓を開ければ大丈夫』といった昔の感覚でいるのは危険で、昔と違うことを自覚する必要があります」

気象庁によると、実際2023年の日本の夏の平均気温は、平年と比べて1.76℃高かった(6~8月・1991~2020年の平均値を平年とした場合)。

1898年の統計開始以降、それまで1番だった2010年を上回り最も高い値になっている。

「扇風機で十分」の感覚では危ない!(画像:イメージ)
「扇風機で十分」の感覚では危ない!(画像:イメージ)

このように暑さがだんだんと厳しくなっている中で、もし親が“昔のような”感覚でいるのであれば、「暑いからエアコンをつけて」と促すだけでは不十分だ。

清益医師は「昔の感覚でいる親は、子供の話を受け入れてくれないこともあると思います。親の“過信”を理解して、根気強く説得する必要があるでしょう」と語る。

例えば、「テレビで言っていた」などと自身の意見として話すのではなく、かかりつけの医者や親戚など同年代の第三者に伝えてもらうと耳を傾けてくれるかもしれない。

「まずは、傾聴が大切なので、話を聞くことです。しっかりと話を聞いた上でなるべく否定せずにほんのちょっとだけお願いする感じ。『ちょっと、これだけしてみよう』などと接すると聞いてもらえることもあります。

また、強めのお願いしてから、弱めのお願いをする。『毎日つけて』から『蒸し暑い日はつけて』などとハードルが下がって、聞いてもらえるかもしれません」

電気代などを気にしている場合は「冷蔵庫もずっと動いているよ」と伝えてみることで、親の認識が変わるきっかけになるという。

エアコンを使うことが熱中症のリスクを下げる(画像:イメージ)
エアコンを使うことが熱中症のリスクを下げる(画像:イメージ)

「熱中症は最悪の場合、死に至ることもありますが、注意すれば防げるもの。救急搬送されてくる高齢者の半分以上は屋内での熱中症です。まずは身を守ることが大切で、これからも生きていくためにはこのリスクを下げましょう」

またエアコンには、アプリでリモート管理ができるものや、見守り機能付きのものもあるため、導入してみるのも一つの手段だ。

さらに、「離れて暮らす親には電話をしてください。話しているときにうまく会話ができなかったり、息が荒いと室温が高いと気づけます」と清益医師。