今年も蒸し暑い夏がやってきた。ちょっと動くだけでも汗ばむが、疲れているのに仕事や家事を頑張ったり、遊びに出かけたりしていないだろうか。
「そうした生活を続けていると、夏を乗り切れても“秋バテ”になることがあります」
こう話すのは体の冷えに詳しい、医師の川嶋朗さんだ。夏の疲れを軽くみると9月以降にだるさや食欲不振などを抱えることがあるといい、川嶋さんはこれを20年ほど前から“秋バテ”と呼んでいる。
秋は暑さがやわらいで過ごしやすくなるイメージもあるが、心身の不調はどんな流れで起きてしまうのか。夏バテと秋バテの違い、それぞれの原因を聞いた。
バテるのは自律神経の乱れが原因
そもそも「バテ」はどうして起きるのだろう。川嶋さんによると、呼吸・血管・内臓の働きなど生きるために欠かせない機能は、全身に分布している「自律神経」によって、無意識にコントロールされている。
自律神経には、心身を活発にさせる「交感神経」、リラックスさせる「副交感神経」があり、このふたつがうまく切り替わることで「日中は活動的に頑張る、夜はリラックスして休む」といった生活リズムを整えているという。
逆に自律神経のバランスが乱れると、頑張りたいのにやる気が湧いてこなかったり、休みたいのに眠れなくなったりする。これがバテで、次のような症状が出るという。
・疲労感(疲れ)
・倦怠感(だるさ)
・食欲が湧かない
・眠りが浅い、眠れない
・めまいや立ちくらみ
・頭痛や肩こり
この状況に陥りやすいのが、夏から秋にかけての“季節の変わり目”なのだ。
暑さや寒暖差でヘトヘトになる
私たちにはもともと体温を一定に保つ機能が備わっていて、自律神経は体温調節の役割も担っている。暑いところにいると汗が出てくるのも、熱を逃がそうとしているからだ。
ただ、夏の暑さが続いたり、暑い屋外と冷えた屋内を頻繁に行ったりきたりすると、自律神経が振り回されてヘトヘトになってしまう。これで体調を崩すのが「夏バテ」だ。
「昔は単純な暑さが原因でしたが、今は冷房の効かせすぎも影響しています。暑さに負けないよう体温を下げる、冷房に負けないように体温を維持することで、体力を使い果たしてしまうんですね」(以下、川嶋さん)
夏の疲れと秋の気候が“引き金”に
では、涼しくなる秋にバテるのはなぜか。こちらは夏の過ごし方が関係してくるという。暑いと冷房をガンガンにつけたくなるし、冷たい食べ物や飲み物も欲しくなるが、こうした生活が続くと「知らず知らずのうちに体が冷え、体力が奪われていく」というのだ。
そこにやってくるのが、秋の寒暖差や気圧。晴れたり雨が降ったりと天気が変わりやすく、日中は暑くて朝晩はぐっと冷えることもあるので、自律神経のバランスが乱れやすい。
さらに「低気圧」が近づいてくると、夕方や夜に高まるはずの副交感神経が昼に高まってしまうことも。こうした要因が重なることで「秋バテ」が起きるという。
「秋の気候の変化に心身が負けてしまうんですね。夏バテをそのまま引きずることもあれば、夏の疲れがたまっていることに気づかず、秋の気圧や寒暖差が引き金となって、心身の調子を崩すこともあります」
秋バテも夏バテも症状はほぼ同じだが、秋バテは「精神的なだるさ、気持ちの落ち込み」も出るという。メンタルの不調も加わるので、よりつらく感じることも多いのだとか。家事や育児に忙しく、冷えを感じやすいママたちは特に注意が必要という。
当てはまったら注意!チェックポイント
自律神経は不規則な生活を送ったり、疲れやストレスをため込んだりすると乱れやすいとのこと。次のチェックポイントに当てはまるほど、秋バテになる可能性は高まるという。
【秋バテになる可能性 チェックポイント】
・冷房を27℃よりも低く設定することが多い
・冷たいものを習慣的に飲食している
・夏なのに体の冷えを感じる(体温が35℃台なら要注意)
・疲れていても、仕事や家事などを頑張りがち
・運動をあまりせず、体力があまりない
・天気が悪くなると頭痛などの不調を感じる
・疲れやすい
・下痢がちである
もしチェックポイントにひとつでも当てはまったなら、川嶋さんは「入浴法の改善」や「軽めの運動」を始めてみてほしいとしている。次回の記事ではそのポイントをお伝えする。
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川嶋朗
医学博士。北海道大学医学部卒業、東京女子医科大学大学院修了。内科、腎臓病学、血液浄化、膠原病、高血圧が専門で、近代西洋医学と補完・代替医療を統合した医療を目指している。冷え性対策や温活のエキスパートとしてメディアに多数出演。現在は神奈川歯科大学特任教授、統合医療SDMクリニック院長を務める。『どうせ一度きりの人生だから 医師が教える後悔しない人生をおくるコツ』(アスコム)など、著書多数。