避難所での生活では、十分な物資や、落ち着ける静かな空間が確保できるとは限らない。
そんな中、「普段と違う環境」が苦手だったり、アレルギー対応食が必要だったりという“特別な配慮”が必要な子供もいる。
そういったニーズのある子供を守るためには、どうしたら良いのだろうか。NPO法人「ママプラグ」の理事・冨川万美さんに聞いた。
アレルギー配慮食の備蓄は、近隣と協力して
食物アレルギーを持つ子供たちには当然、アレルギーに配慮した食事が必要となる。また、ADHD(注意欠陥・多動性障害)や自閉症といった特性がある子供たちには、「普段と違う環境が大きなストレスになる」ことも想定されるが、災害時はそういった“特別なニーズ”が理解されにくい傾向にある。
「避難所で出された食事に小麦が入っていたので、小麦アレルギーの子供に食べさせずにいると『贅沢だ』と言われた」とか「避難所となっている体育館で走り出してしまいトラブルになる」といった事例も実際に発生しているという。このため、避難所は「ニーズをひとつひとつ拾ってくれる場所ではない」という前提に立って、事前に準備をしておくことが大切になってくるという。
たとえば、子供が小麦アレルギーであるなら、グルテンフリーのレトルト食品を取り寄せるなどして備蓄しておき、避難所にも持っていくこと。また、自宅が被災して備蓄を持ち出せなくなってしまうことを考え、近隣の“ママ友”などと必要なものを「少しずつ備蓄し合う」ことが理想だという。
他にも、持っているアレルギーをピクトグラムなどで分かりやすく表示するバッジやシールなどを持っておくのも大切だという。
「保護者が、子供のニーズについて、他人にわかるようにサインを出せるように準備しておくのがとても大事です」
また、食物アレルギーだけでなく、入浴ができないためにアトピーが悪化するなど、避難所内のチリやほこりで小児性喘息の症状が出るといったことも考えられる。必要な薬を多めに用意しておくなどの対処をすると良いだろう。
「色々なニーズ」を誰もが知ることが大切
発達障害や身体的な障害がある子供の場合は、周囲のサポートを得やすくするため、障害の程度や対応の仕方、連絡先などを書いたカードを持ち歩かせるのも有効だ。
また、自宅に倒壊や焼損、浸水といった危険性がない場合は、そのまま自宅で生活する「自宅避難」をすることも、選択肢として考えられる。
子供が慣れない空間にストレスを感じてしまう場合は、必要に応じて、駐車場や庭にテントを張って過ごすなど「子供を刺激せずに過ごせる場」を用意しておくといいという。
自宅避難が難しい場合は、障害の度合いに応じて、福祉避難所を利用できる場合もある。自治体に問い合わせてみることも大事だ。
冨川さんは、避難所生活においては「いろいろなニーズのある人がいるということを、当事者以外が知ることが大切。周りの人たちがサポートしてあげるという姿勢が必要」と話す。
その上で、特別な配慮を必要とする当事者自身も「ニーズに対して自分たちで備えておく、もしくは相談できる場所をあらかじめ知っておくのが大切」とも語っている。
子どもたち誰もが安心・安全に過ごすために、改めて自分たちに必要なものを確認し「サポートが受けやすい環境」を整えてほしい。
冨川万美
特定非営利活動法人MAMA‐PLUG(NPO法人ママプラグ)理事。青山学院大学卒業後、大手旅行会社、PR会社を経て、フリーランスに転向。東日本大震災での母子支援を機に、NPO法人ママプラグの設立に携わる。防災に対して、アクティブな姿勢で行動を起こす「アクティブ防災」を提唱し、全国各地でセミナーを行っているほか、東京都の「東京防災」「東京くらし防災」編集・検討委員なども務める。二児の母。