鳴き声が大きくゴミなどをあさる上に人を威嚇することもあるカラス。春から夏にかけては繁殖期を迎えるため活動が活発になるという。電柱に巣を作り停電や火災につながるケースもある。こうしたカラスを追い払う方法として徳川家康公も愛したある伝統技能が注目されている。
春先から夏にかけて繁殖期

電線の上に停まり、悠々と滑空を繰り返すカラス。私たちの生活圏に生息しているカラスだが、この時期は特に注意が必要なようだ。

静岡市環境共生課・大友光夫さんは「春先から夏頃にかけて産卵期になり、巣作りや子育てのために活動が活発になる特性がある。周りを威嚇して、低空飛行で攻撃をすることもある」と注意を促す。

また、一時的に姿が見えなくなったとしても安心することはできないという。
静岡市環境共生課・大友光夫さん:
帰巣本能もあるので巣を作った後に餌を取りに行っても必ずその巣に戻ってくる。その周りにはカラスが集まるようになる

静岡市駿河区の住宅に面した道路には電柱の上に大きなカラスの巣ができていた。
カラスの被害に悩む住人:
朝早くからカラスが鳴いてやかましくて目を覚ます、明るくなると鳴くので。巣を作るときに下へポトポト落とすので、ゴミが電柱の周りに落ちていて気になる
電力会社が巣の撤去を

住民からの連絡を受けて、県の許可を得た作業員によるカラスの巣の撤去作業が行われた。
中部電力パワーグリッドの谷下恵梨さんは「停電を未然に防ぐための取り組みとして撤去作業や巣の管理を行っています」と話す。

中部電力パワーグリッドによると、2024年に入り静岡市内だけでカラスの巣を撤去した件数は約130件にのぼり、停電も5件起きているそうだ。(2024年4月10日時点)

中部電力パワーグリッド・谷下恵梨さん:
巣の通報を受けると、まずは現地を一度確認して、巣がどのような形で、どの場所に作られているかで停電を引き起こす可能性を見極め、すぐに撤去するかどうか判断しています。

市街地などでは洗濯物を干すハンガーなどで巣を作られることもあり、通電性の高い針金などが使われていた場合、ショートや漏電、火災を引き起こす恐れもあるそうだ。

今回通報を受け出動した場所には、電圧を操作する変圧器の間に巣が作られていた。高所作業車で上昇すること約10m…そこには直径 約50cmのカラスの巣と卵があった。周囲の高圧線には6600ボルトの電流が流れているため慎重に作業を進めていく。

作業開始から約5分。カラスの巣と卵の撤去に成功した。こうした巣の撤去を行うことによって停電のリスクを軽減でき、カラスの往来を防ぐことにつながる。
自然環境を損なわない害鳥対策

一方、カラスなどを追い払う方法として注目を集めてきているのが、かの家康公も愛した“鷹狩り”だ。徳川家康が生涯に渡って愛したとされる鷹狩り。実は自然環境を損なわない害鳥対策として依頼が殺到しているそうだ。
鷹匠・田中実さん:
鷹とずっといるので、パートナーというか生活の一部です。鷹しかやっていないので
鷹匠の田中さんの元には全国各地から年間 約3000件の依頼が寄せられているという。
田中さんは「捕食者(鷹)を頻繁に連れて行って“危ない場所”だと(カラスに)認識させる」と言う。そうすることでカラスなどの害鳥は「危険な場所では子育てできない」と他の場所へ移っていくそうだ。
薬やネットを使わないため周囲の環境に影響を及ぼさず、カラスなどに直接的な危害を加えることなく被害を防ぐことができる。

鷹匠・田中実さん:
常に「鷹がいるよ」ということを見せている。あとは(鷹が)気流を拾って上昇する時もあるし、追い払うターゲットがいれば威嚇しにいく
レーザーポインターで目標を指示

ハリスホークのオス・六太くんはレーザーポインターの光を当てた場所へ正確に飛んでいくことができる。

鷹匠・田中実さん:
これができると自分が見にいけない所にも行ってもらえる。ホテルとかマンションのベランダを『見てきてよ』って

カラスを含む、すべての野生鳥獣は鳥獣保護管理法によって保護されているため、許可なく殺傷したり、卵やヒナを捕獲することはできない。
自然環境に影響を与えず私たちの生活圏を守っていくために、先人の知恵や技能を活用していくことも選択肢の1つと言えそうだ。
(テレビ静岡)