富士山とコンビニを撮影できる山梨県の人気スポットに外国人観光客が殺到し問題となる中、静岡県富士市でも富士山の撮影をめぐる外国人観光客の迷惑行為に住民や市が頭を抱えている。“富士山に登る階段”が撮影できる場所に、外国人観光客が集まる。

“富士山に登る”ような「夢の大橋」

国道にかかる「富士山夢の大橋」(富士市)
国道にかかる「富士山夢の大橋」(富士市)
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富士山に向かって続くように見える階段。まるで富士山を登っていくように見える。富士市を走る国道にかかる「富士山 夢の大橋」だ。富士山の眺望が素晴らしいことから、開通の際に市が名称を公募した。

この場所が2023年末ごろにSNSなどで発信され、富士山の撮影スポットとして外国人観光客がたくさん訪れている。取材した平日の5月8日もタクシーに乗るなどして外国人観光客が訪れていた。

外国人観光客に尋ねると「上海(から来た)。中国と日本のSNS(で知った)。こちらはすごく富士山が大きい」と返ってきた。
タクシー運転手は「(外国人観光客を乗せることは)ここのところ毎日あります。土日は外国人ばかり」と話す。

橋の中央分離帯から撮影する人も

 
 

記者が取材をしていると、外国人観光客と見られる人たちが駐車禁止の場所に車を停めて橋を登っていった。問題となっているのは駐車違反だけではない。

中央分離帯で撮影する人たち
中央分離帯で撮影する人たち

5月5日夕方に橋を通った車のドライブレコーダーには、橋の中央分離帯で写真撮影する人が映っていた。中央分離帯には、橋の歩道から車道を横切らなければ行けない。非常に危険だ。

橋の道路脇に設置されたコーン
橋の道路脇に設置されたコーン

橋の上に車を止めて撮影する人もいて、駐車したり道路を横断したりできないよう、現在は道路脇にコーンが置かれている。

中央分離帯には併設された歩道から渡る
中央分離帯には併設された歩道から渡る

この道路をよく利用する人は「写真を撮るのはかまわないが、中央分離帯の方に行って座ったり立ったりして撮影するのはいかがなものか。日本の交通ルールからしても危ないし、車を運転していて(道路を)横切られると怖いのでやめてほしい」と嘆く。

「散歩に行けなくなった」

駐車違反や道路への飛び出しに加え、ゴミのポイ捨てや騒音もあり、近所の住民も頭を悩ませている。

住民は「(外国語で)『写真を撮っているので通ると邪魔になる』と言われるのだと思う。だから橋はもう散歩に行けなくなった」と話す。

「撮影の際に大きな声で会話して怖い」という苦情も、市に寄せられている。富士山を入れた構図にしようとすると、撮影者と被写体が10数mほど離れるため「右」「左」と大きな声で指示しているのだろう。

さらに近くにあるアパートの住人も、仕事で外出中の時に駐車場に無断で車を止められ困っているという。

山梨県のコンビニでも問題に

山梨県富士河口湖町
山梨県富士河口湖町

外国人観光客の殺到は、山梨県富士河口湖町のコンビニでも問題になっている。
富士山と青い看板を一緒に収めようと大勢の外国人観光客が集まり、コンビニ周辺では道路への飛び出しやゴミのポイ捨てなどが問題になった。
町は向かいの歩道からコンビニと富士山が撮影できないよう、大きな黒い幕で覆い隠すことにしている。

市は駐車場確保や看板設置

富士市は看板や柵を設置
富士市は看板や柵を設置

住民とともに困惑しているのが地元の富士市だ。想定していなかった場所に外国人観光客が殺到したからだ。
富士市交流観光課・松村岳典課長は「観光地として整備した橋ではなく生活道路なので、駐車場もない。違法駐車が多いということで苦情が当初からたくさんきている」と話す。
富士市は国と協議をして使っていない土地を早急に借り、駐車場4台分を確保した。また駐車禁止やマナーを記した多言語の看板や柵も設置した。対策を施しながら、外国人観光客との共生を目指ざす。

富士市観光交流課・松村岳典課長:
(住民が)不安に思うのはまさにその通りと思うので、まずは地元の区長たちと話しながら、今できることをやるしかできない。どういう状態がベストなのかを地域に住んでいる方の声を聞きながら進めていきたい

富士山ブームの今、地元住民の安心と理解を得ながら外国人観光客との共生を両立させる対策が求められている。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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