プーチン大統領は、2024年のアメリカ大統領選でバイデン大統領を望むと述べ、バイデン大統領について、「より経験豊富で古いタイプの政治家」と発言した。
これはバイデン大統領の再選支持とも、潜在的なネガティブキャンペーンとも受け取れる。

プーチン大統領が異例表明

ロシアのプーチン大統領はアメリカの大統領について、11月に再選を目指すバイデン大統領の方がトランプ氏より望ましいと即答した。

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プーチン氏が2024年のアメリカ大統領選について、公の場で発言するのは初めて。

トランプ前大統領は、「ロシアのプーチン大統領は、私に素晴らしい賛辞を送ってくれた」と発言していた。

トランプ氏は、14日にサウスカロライナ州で行った演説の中で、今回のプーチン氏の発言について皮肉交じりに、バイデン氏が大統領である方が、ロシアが利益を得られやすいからとの見方を示した。

プーチン大統領からきわめて異例の発言が飛び出した。
その真意について、フジテレビ・立石修取材センター長がお伝えする。

ぱっと聞くと次の大統領選に向けて、バイデン大統領の再選を支持しているように聞こえるが、そんな単純な話ではないようだ。

14日に放送されたロシア国営テレビのインタビュー。

記者が「ロシアにとって良いのはバイデン?トランプ?」と聞くと、プーチン大統領は「バイデン。彼の方がより経験豊かで予測可能。古いタイプの政治家だ。だが、アメリカ国民が信頼する。大統領なら誰とでも協力する」と答えた。

インタビュアーに聞かれると、即答で「バイデン」と答えたプーチン大統領。
その理由として、「予測可能で古いタイプの政治家だ」と話している。

つまりプーチン大統領にとって、何を考えているかわかりやすい、コントロールしやすい相手とも聞こえる。

実はプーチン大統領とバイデン大統領は、ウクライナ侵攻前の2021年6月に、スイス・ジュネーブで一度だけ直接会談を行っている。
インタビューでは、その時の話も出てきた。

プーチン大統領は「3年前にスイスでバイデン氏と会った。みんな『バイデンは無能』と言うがそうは感じなかった。確かに彼は常に紙を見ていたが、私もそうだったし変ではない」と話している。

バイデン大統領を批判しているようにも聞こえる。
「ずっと紙を見ていた」というのはつまり、自分の言葉でしゃべっていなかったということを言わんとしている。

そもそも「みんながバイデンを無能と思っている」という前提で話している。

さらに、こんなエピソードにも触れている。
バイデン大統領は2023年6月、大統領専用ヘリコプターに頭をぶつけたことがニュースになったが、この話を引き合いに出してきた。

プーチン大統領は、「バイデン氏がヘリから降りる際に頭をぶつけたことを話題にするなら、一度も頭をぶつけたことがない人を教えてほしいね」と話していた。

バイデン大統領は、報道陣の前で何回か頭をぶつけたり転倒したりしていて、最近では、体力や記憶力の衰えを指摘する声がアメリカでは上がっている。

プーチン大統領は、「誰だって頭はぶつけることがある」とフォローもしているものの、わざわざこの話題に触れることで、バイデン氏の衰えを強調している印象も受ける。
「バイデン大統領を支持する」という言葉とは裏腹に、ネガティブキャンペーンのようにも聞こえる。

トランプ氏も早速反応

プーチン大統領の発言の思惑はどんなものなのだろうか。

ウクライナ戦争をめぐり、プーチン大統領は、ウクライナ支援に積極的なバイデン大統領と激しく対立してきた。

一方でトランプ氏は、ウクライナ支援やNATO(北大西洋条約機構)に後ろ向きだ。
そのためプーチン大統領にとっては、トランプ氏が大統領になった方が都合がいいかもしれない。

これまで、プーチン大統領とトランプ氏は、首脳会談などで何度も顔を合わせている。

2017年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議では、トランプ氏が座っているプーチン大統領に歩み寄り、立ち上がったプーチン大統領と何か耳打ちをしている様子も見られ、関係が近い印象がある。

ほかにも、2016年にトランプ氏が勝利した大統領選に、ロシアが関与した疑惑もあった。
またトランプ氏が、ロシアを訪問した際に、プライベートな部分を撮影したビデオをロシアの情報当局が握っているという話もあり、さまざまな関係性が指摘されてきた。

こうした背景を見ると、プーチン大統領はバイデン氏を支持するふりをしておとしめ、トランプ氏を大統領にしたいのではと考えられる。

そしてトランプ氏も、早速反応している。

14日、トランプ前大統領は「ロシアのプーチン大統領は、私に素晴らしい賛辞を贈ってくれた。彼は『トランプよりもバイデンを大統領にしたい』と言ったんだ」と発言した。

つまり、プーチン大統領がバイデン大統領を選んだのは、「トランプ氏の方が大統領として優秀でおそれられたからだ」と主張している。

また、プーチン大統領と自身の関係性については一切話さなかった。
アメリカ大統領選に向けて、ロシアが情報戦を仕掛け始めたのではないかという印象を受ける。
(「イット!」 2月15日放送より)

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