「去年より厳しい」と海を見つめる漁業者。有明海の養殖ノリは、黒くならない“色落ち”で2季連続の不作が懸念されている。原因は少雨による海の栄養不足。漁業者は“恵みの雨”を願いながら漁を続けている。
ノリ漁は終盤へ…回復しない海況
この記事の画像(11枚)昨シーズン記録的な不作となった有明海の養殖ノリ。“復活”が期待された今シーズンだが、終盤にさしかかっても漁の先行きには暗雲が立ち込めている。
晩秋から始まる前半の「秋芽網」と冬に本格化する後半の「冷凍網」の2期作で行われる有明海のノリ養殖。今シーズンは序盤から厳しい状況が続いている。
シーズン後半も続く“色落ち”
特に佐賀県西部沖の漁場ではノリが黒くならない“色落ち”がひどい。まとまった雨が降らず川から海に供給されるはずの栄養塩不足が色落ちの原因だ。
有明海の白石沖で15年近くノリ養殖を営む漁業者、森慎二さんの漁場では、前半の秋芽網ノリで色落ち被害のため販売枚数、販売額ともに昨シーズンを下回る結果となった。
このためシーズン後半の冷凍網ノリで巻き返しを期待していたが、色落ち被害は続いている。
“降ってほしい時”に降らない雨
この冬の少雨は12月と1月の降水量をみると明らかだ。12月の合計降水量の平年値は59.5ミリだが今シーズンはその約半分の31ミリ。1月も平年を下回っている。
冷凍網ノリの生育には、この時期の雨が重要だと専門家は指摘する。
佐賀県有明水産振興センター 増田裕二副所長:
12月の半ばから1月の上旬。そのあたりで雨が降ってくれると一番良い冷凍網ノリがとれる。一番降ってほしい時に降っていない
色落ちしたノリは、色だけでなく食感なども違うため商品価値が大きく下がる。
このため、ノリの摘み取りや網の張り込みを遅らせて、海況の回復を待つ漁業者も多い。
「入札会」も異例の2週間延期に
今シーズンの養殖ノリの厳しい状況は、入札会にも影響を与えている。
2月7日に佐賀市で開かれた有明海の養殖ノリの入札会には、今季の漁を左右する冷凍網ノリが初めて出品された。ノリ網の張り込みを遅らせる漁業者が多いため、予定を2週間ほど延期して開かれるという異例の入札会だった。
品薄のため平均単価は去年の同じ時期を上回ったものの、質の高いノリの出品枚数は少なく、漁業者としては手放しで喜べる結果ではない。
“色落ち”深刻な西部地区の漁場
佐賀県有明海漁協によると、海況が徐々に回復し色落ちが改善されている漁場もあるとのことだが、ノリの出来に大きな“地域差”があり、特に有明海の西部地区で色落ちが深刻だ。
佐賀県有明海漁協 深川辰已参事:
東部地区と中部地区の一部は全然問題ないと思うが、(西部地区の)白石地区は若干色落ちが激しいので、どこまで回復するのかが問題
「プランクトンが浮いている」
ノリの成長に必要な海の栄養塩を食べるプランクトンの増殖も漁場に悪影響を与えていると専門家は指摘する。
佐賀県有明水産振興センター 増田裕二副所長:
天気の良い日がものすごく長く続いて、ノリと栄養塩を競合するプランクトンの発生が長期間続いている
プランクトン対策でカキ養殖も
ノリの色落ちに悩む西部地区の漁業者、森慎二さんは、「海に白いプランクトンが浮いているのが見える。プランクトンがずっと居座り続けている」と回復しない海況の現状を語った。森さんの漁場では、プランクトンを食べるカキを養殖するなど地道な対策を行っている。
漁は終盤へ…あきらめない漁業者
有明海の養殖ノリのシーズンは2月に入り終盤にさしかかった。不作の懸念は消えないが、まとまった雨が降ることで海況が大きく回復することもあり、多くの漁業者はあきらめずに漁を続けている。
漁業者 森慎二さん:
ちょっとでも黒くて良いノリを採りたいので。雨を願うばかりですね
(サガテレビ)