有明海の養殖ノリが「カモ」に食い荒らされる被害が広がっている。“食害”に漁業者が苦しむ中、沿岸の自治体は、カモを駆除せず、LEDライトを搭載した“ドローン”で撃退する実証実験を行った。その結果は…。
有明海に群れるカモ
この記事の画像(12枚)干潟が広がる有明海で見られるカモの群れ。のどかな自然の風景だが、このカモが有明海の養殖ノリを食い荒らし、漁業者を悩ませている。
毎年、晩秋に始まる有明海のノリ養殖。漁業者によると、カモは網に張り込んだばかりの柔らかいノリの芽を好むという。
半分が食い荒らされたノリ網も
被害を受けたノリ網の中には、ひどいところでは網の中の半分が食べられて無くなっているところも見られた。カモが食べたノリは短くなり、なかなか芽が出てこないため、漁業者にとって大きな損失だ。佐賀県有明海漁協・鹿島市支所の被害額は、年間(2020年度)で約2500万円に上る。
佐賀県有明海漁協鹿島市支所 中島龍 運営委員長:
被害はもう20年ぐらい前から。年々カモは増えている
漁業者としては、いっそのことカモを駆除したい思いもある。しかし、野鳥との共存を目指す鹿島市のラムサール条約推進室は、駆除以外の方法がないか、ここ数年、頭を悩ませながら摸索を続けている。
駆除せずドローンで撃退実験
そして今シーズン、佐賀県の鹿島市と太良町が試みたのがドローンでカモを撃退する実証実験。ドローンの音と、搭載したLEDライトでカモを追い払えるか検証しようというものだ。
主にノリを食べるのは、有明海やその周辺で冬を越す渡り鳥の「ヒドリガモ」。
2024年1月10日、ドローンを使ってカモを追い払う実証実験が行われた。
有明海に漂うカモの群れに、高さ5メートルからドローンに搭載したLEDライトを照らしてみる。しかし、カモは何も反応しない。
このためドローンの高度を下げ、もう少し近づけてみると…。
カモがドローンを嫌がり、群れが分散するのを確認。身の危険を感じたのか、飛び立ちはしないものの、カモは逃げていった。しかし、翌日行った同様の実験では、ライトの角度や点滅間隔を変えるとカモが飛び立つ様子が確認できた。
カモを傷つけず”共生”を模索
鹿島市は、これまでの実験で“夜間”ではLEDライトでカモを追い払う効果があることを確認している。“日中”の効果についても、今回の結果を分析し今後の実用化を検討する方針だ。
鹿島市ラムサール条約推進室 室井利允主任:
ドローンを飛ばしてみてカモが嫌がっている様子は見えた。可能性はあるのかなと。カモを傷つけることなく人とカモが共生できるような方法模索したい
不作と食害…募る漁業者の不安
カモを駆除せず共生していくためには、船で漁場を巡回するなどしてカモを追い払うしか有効な方法がないのが現状だ。
有明海では、昨季に続き今季も栄養塩不足による深刻な色落ち被害が広がっている漁場も多い。漁の先行きに不安が募る中、カモによる食害との闘いが続いている。
(サガテレビ)