世界中でトランプが勝っている

世界中で「保守の反乱」が起きている。オランダで22日行われた下院選挙で「オランダのトランプ」と呼ばれるヘルト・ウィルダース率いる極右政党が第1党となり、連立政権の樹立を目指している。

アルゼンチンでは19日に行われた大統領選で、極右のハビエル・ミレイが勝利した。この人は「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれている。

“本物”トランプ氏も来年のアメリカ大統領選挙で勝つ可能性が…
“本物”トランプ氏も来年のアメリカ大統領選挙で勝つ可能性が…
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本物のトランプも来年の米国大統領選挙で勝つ可能性がある。細谷雄一・慶大教授は産経新聞への寄稿で「習近平氏が岸田文雄首相との会談で、戦略的互恵関係を再確認したのは注目される。(中略)予測不可能なトランプ前米大統領の返り咲きの可能性を考慮し、対日関係の重要性が向上したのだろう」と指摘している。

イタリアでも昨年、極右政党が第1党となり、党首のジョルジャ・メローニが首相になったのだが、特に欧米諸国ではリベラル政権による行き過ぎたLGBT、移民、グリーン政策に対する保守派の不満が極右政治家の選択につながっているという指摘がある。

まじめな保守はなぜ怒る

もう一つ注目されるのは選ばれる政治家は「ヤバい」人が多いのだが、選ぶ方の人たちは穏健な保守層の人たちが多いということだ。つまりまじめな保守の人たちが怒っている。

日本では6月16日にLGBT法が成立
日本では6月16日にLGBT法が成立

これは日本にとって他人事ではない。岸田政権によるLGBT法の拙速な成立によって岩盤保守層が自民党から離れたことが内閣支持率の低下の原因とも言われるが、私は保守が「離れた」だけでなく「敵に回った」ために、減税などを巡って岸田政権を激しく攻撃していると見ている。

また移民について、政府は人手不足に対処するために外国人労働者の拡大に舵を切った。ただ埼玉県川口市で一部のクルド人と住民とのトラブルが相次ぎ、当時の衆院外務委員会の委員長が駐日トルコ大使に懸念を伝えるという事態になっている。

人手不足はわかるのだが、移民を入れるなら、入れっぱなしにしないで、大人も含めて教育の機会を与えるなどの「公的な投資」が必要なのに、それが足りないのではないか。外国人が日本に住むなら、言葉を覚えてもらい、ルールを守ってもらわねばならない。外国人を入れるだけでほっぽらかしにしているのではないか。

これはLGBTも同じで、LGBTの人たちが生きやすい社会を作ることに反対する人はいないと思うのだが、一方で心は女性でも体が男性の人が女湯に入ってくるのは困るのだ。女性や子供の安全を守ることをまず先に考えてほしいのだ。

国民の安全をおろそかにするな

美しい山々に醜く設置された太陽光のソーラーパネルや、見るからに危険な電動キックボードも同じ話だ。規制を緩和して利益と便利さを追求するのは結構だが、自然や安全を「破壊」する危険については厳しく規制しないといけない。

民間の業者が先走りするのはやむを得ないとしても、なぜそれを政治家や官僚が放置するのか。だから欧米では「保守派の反乱」が起きているのではないか。

先週の小欄で「岸田さんはこんなに実績がある」と書いた。原発処理水の放出では国際社会を味方につけて中国を孤立させたこと、また日本がホワイト国再指定という最低限の譲歩で韓国と関係改善したことで、今回の処理水問題で韓国が中国側につかなかったことは、岸田外交の誇るべき勝利だと思う。

岸田政権はなぜ不人気なのか…
岸田政権はなぜ不人気なのか…

ではなぜ不人気なのか。LGBT、移民、グリーン、いずれもやるのはいいのだ。だがやりっぱなしになっている。そのために最も大事な「国民の安全」がおろそかになっている。ここに国民は怒っているのではないか。というか私は怒っている。

改革はやりっぱなしではいけない。海外での「保守の反乱」を他人事とは思わない方がいいと思う。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。