『一個買うと一個もらえる』
数年前、コンビニ各社で始まったこのキャンペーン。 CMの影響もあってか、最近ますます対象商品が豪華になっている気がする。
筆者もよく利用させてもらっている。 好きな飲料水が対象の時など、引換券の付いたレシートが数十センチの長さになり、少々恥ずかしくなるぐらいだ。
そしていつも思う。「店は損をしていないのかな」。
実質半額で入手できるようなものなので、非常にありがたいが、太っ腹すぎやしないか?昔なら「他の商品も一緒に…」となったが、昨今の物価高で財布のひもは固い。
できればずっと続けてほしいが大丈夫だろうか? コンビニ事情に詳しい流通アナリストの渡辺広明氏に話を聞いた。
大手メーカーしかできない販促キャンペーン
【流通アナリスト 渡辺広明氏】
『一個買うと一個もらえる』キャンペーンのほとんどがメーカーからの協賛です。 ですから、コンビニ側は、店も本部も損をしません。赤字ではなく儲かります。
対象商品を見ると、買う方は大手メーカーの定番商品、もらう方は同じメーカーの新商品や変わり種のフレーバーといったケースが多いことに気が付くと思います。 これはどういうことか。

現在、コンビニの店舗数は、1位のセブンイレブンが約2万2千店、続くファミリーマートが約1万6千店、3位のローソンが約1万5千店ありますから、このキャンペーンでのメーカーの負担は非常に大きくなります。
つまり『一個買うと一個もらえる』は、基本的には資本力のある大手メーカーしかできない、新商品の販促キャンペーンなのです。
負担大でも続けるメーカーの狙い
コンビニの品ぞろえは、店舗の立地や広さによりますが、だいたい3000種類程度。 限られた中で売れ筋商品をそろえなければいけません。
今、コンビニの多くはフランチャイズですから、仕入れる商品はオーナーの意向で決まります。いくらメーカーが本部に「新商品を全店に置いて下さい」と営業をしても、オーナーが発注してくれないと店頭に並ばないのです。
新商品やサブ商品(変わり種フレーバーなど)のうち、店頭に並ぶのは大体30~60%。メーカーはこれをなんとか100%にしたい。
そこで、『一個買うと一個もらえる』キャンペーンなのです。
最初に買うのを定番の人気商品、もらえるのを新商品やサブの商品にすれば、店は引き換え商品を店頭に置かざるを得ません。このようにして100%を目指すのです。
もちろん、消費者にとってお得なキャンペーンですから、店は集客の大きなチャンスでもあります。
コンビニはテレビCMのライバル?
なぜメーカーは膨大なお金を使ってまで、コンビニに新商品を置きたいのか。
実はコンビニは、強大な“宣伝ツール”でもあるのです。
現在、コンビニの店舗数は大手3社だけで全国に5万店舗。スーパーやドラッグストアと比べても圧倒的に多いです。
売り場に商品が置いてあるとお客さんは実際に手にとって見られますし、目の前にあるから売れる可能性だってある。テレビCMを流すより直接的な効果が得られるのです。
もちろん、テレビCMには店頭での販促だけでは難しい、消費者からの長期的な信頼感を築くといった効果もあるわけですが、 すぐに売りたい商品の“宣伝”という点では、テレビ局とコンビニはライバル関係という側面もあるわけです。
今後はどうなる?コンビニでの販促キャンペーン
将来的には、『個人にあわせたキャンペーン』になっていくのではないかと思います。
例えば「この人はいつもチョコレートを買っているから、チョコレートの割引券やプレゼントのキャンペーンをやろう」といった具合です。
メーカーは自社ブランドのファンを増やしたい。継続的に購入してくれる固定客づくりが大切です。そのためには、お客さんそれぞれの特性に合わせた、その人が喜ぶキャンペーンを行った方が効果的です。
メーカーの満足度が高く、消費者も自分の欲しいもののキャンペーンを展開してくれたらうれしい。まさにウィンウィンの関係です。
アプリの購買履歴などから、うまくひもづけていく時代になっていくのではないかと思います。
(流通アナリスト 渡辺広明氏)
取材:高知さんさんテレビ