「物流の2024年問題」。トラックドライバーの時間外労働規制で運べる荷物が減り、「物流の停滞」が懸念されている。その解決策として、鉄道に一部をシフトする案が浮上している。ローカル線は存続の危機に直面している中で、貨物で鉄道の復権はあるのだろうか。

大型コンテナを“鉄道⇔トラック”でスムーズに積み替え

トラックドライバーの時間外労働時間が2024年4月から年間960時間までに制限されることで、運べる荷物が減る「物流の停滞」が懸念されている。

野川諭生アナウンサー
野川諭生アナウンサー
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不足するトラック輸送の受け皿として期待されているのが「鉄道へのモーダルシフト」、つまり輸送手段の転換。10月下旬、斎藤国交相がモーダルシフトの現状を知るためJR貨物の広島貨物ターミナル駅を視察した。

斎藤国交相が視察したのは、「トップリフター」と呼ばれる機械を使って大型コンテナを10トントラックから貨物列車に積み替える作業。

広島貨物ターミナル駅は、トラックから列車へ、また、列車からトラックに容易に積みおろしができる「E&S」方式を採用していて、全国に140あるJR貨物の駅のうち、14番目の取り扱い量がある。

斎藤国交相:
遠距離は鉄道ないしは内航海運、最後のところをトラックが輸送するという役割分担をしっかり行っていくことが物流問題、環境問題両方の解決につながると確信している

また、斉藤国交相は鉄道輸送の課題として、災害などで鉄道が使えなくなった時に、長期間物流が途絶えてしまうことを挙げ、代替輸送手段の確保を上げた。

政府は10月、モーダルシフトを進める緊急対策として、鉄道や船舶の輸送量を今後10年で倍増させる方針を示した。また、コンテナの大型化も推進する方針を出している。

JR貨物の現在の積載率は7割で、まだ輸送能力として余裕がある。中国運輸局は「まずはこの空いたスペースで輸送量を増やしたい」ということだ。

ローカル鉄道衰退の中で、トラックと鉄道の使い分けが必要

日本は道路網を整備し、トラック中心の物流を拡充してきた。その反面、鉄道の貨物輸送は幹線に限られ、ローカル線の貨物扱いはほぼなくなり、旅客輸送も存続の危機に立たされている。

芸備線の貨物
芸備線の貨物

国内の貨物輸送量に輸送距離をかけたトンキロベースのシェアで見ると、トラックは1955年に11.7%だったのが2021年に55.4%に、一方鉄道は52.6%だったのが、4.5%まで減っている。(海運は35.7%が40%に)

このような中で、トラックから鉄道へのモーダルシフト=輸送手段の転換を進めるには、トラックと鉄道間で簡単に貨物を積みかえられるターミナルやシステムの整備とともに発想の転換も必要だ。

コメンテーター・叡啓大学 早田吉信 教授:
日本の物流システム全体を見直すタイミングに来ていると思う。モーダルシフトを進めながら、システム全体の最適化をはかっていくためにデジタル化、DX化を図っていくのが第一。私たち自身も”置き配”や”宅配ボックス”などを利用して、再配達をできるだけさせないという心がけをしていく必要が出てくる

私たちはモノを注文してから数日以内で届くという、恵まれた環境にいるわけだが、持続可能な物流を作っていくためには、従来の考え方を変えていく必要がある。新幹線や高速バスで生鮮品などの軽貨物を運ぶ貨客混載も広まりつつある。

モーダルシフトを進めるとともに、根本的な問題である、トラックドライバーの長時間労働の改善や賃金引き上げなども求められている。

トラックドライバーの現状は、年間の労働時間が全産業の平均労働時間と比べて300~400時間、2割ほど長いうえに、年間賃金は全産業の平均より20~50万円、5~10%ほど低い。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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