福井市の中心部ではアリーナの建設構想が進んでいる。これまで事業費は2度上振れし、最終的に事業費は150億円で着地。約3年後の2028年秋の完成を目指すことになっている。今後、建設に向けた県議会や福井市議会での議論が本格化するが、市議会ではすでに資金繰りを疑問視する声が、近隣住民からは騒音や渋滞への対策を不安視する声が上がっている。

スポーツやコンサートなどの興行で年間7億円の収入を見込む

8月19日、福井商工会議所の八木誠一郎会頭らが会見に臨み、福井アリーナの事業計画を発表した。
 
福井商工会議所・八木誠一郎会頭:
「県都のにぎわいを創設するとともに、若い人たちを中心に福井に誇りと夢をもたらし、人口減少でも明るい未来が展望できる可能性が高いと考えている」 

示された計画では、事業費の総額は当初の計画の約2倍となる150億円に膨らんだ。150億円のうち60億円は国や県、福井市が支援し、残り90億円は融資や寄付など民間で調達するとしている。

事業費負担の内訳
事業費負担の内訳
この記事の画像(7枚)

開業後30年で借り入れを返済する計画

アリーナの運営については、福井市のIT企業・オールコネクトの子会社が担う。
 
プロスポーツの試合やコンサートなどの開催による利用料収入を柱に、年間7億円の収入を見込んでいるという。この運営会社は、福井商工会議所が新たに設立するアリーナの整備・所有会社にリース料を支払うことになる。

年間の収入見込み
年間の収入見込み

プロスポーツやコンサート、セミナーなどで年間300日近い利用を想定し、その利用料などで年間約7億2000万円の収入を見込む。また「ネーミングライツ」による収入も見込む計画です。

こうした枠組みで年間約2億8000万円の利益を生み出し、民間調達分の90億円のうち寄附などの25億円を除いた、金融機関銀行などからの借り入れ分の65億円を返済する計画で、30年間で完済するとしている。
 
建設費の上振れなどで2度にわたる計画見直しを余儀なくされたが、福井商工会議所は「これ以上の大幅な見直しはない」としている。
  
2026年1月頃から設計などを始め、2028年秋頃の完成を目指す。

運営スキーム
運営スキーム

車社会の福井だが…“歩いて行くアリーナ”を想定

福井アリーは延べ床面積が約1万3000平方メートル(従来の計画より1000平方メートル拡大)、観客席は5000席。観客席数は、プロバスケットボールチーム「福井ブローウィンズ」が最高カテゴリーに昇格した際に必要となる基準に合わたという。
  
また、大きな駐車場は設けず、“歩いて行くアリーナ”として公共交通機関での来場を想定している。

施設概要
施設概要

渋滞や騒音…地域住民の懸念は払しょくされず

4年前、北陸新幹線の開業に向けてアリーナ構想が持ち上がった段階から、地域住民からは防音や渋滞を懸念する声が上がっていた。今回の計画では、それらの対策を「強化した」と強調するが、具体的な事例は示されていない。地元はどう受け止めているのか。
     
アリーナ建設予定地の豊島2丁目地区の岡孝敏区長は「多くの人が訪れるので防犯上の問題がある。近くの人は(交通渋滞や防犯対策などの)条件がクリアされれば納得するのではないか」と話すが…
 
現状、これらの問題がクリアされているかを尋ねると「まだクリアされていない」との返答だった。

駐車場問題
駐車場問題

事業計画発表の3日後に行われた福井市議会の特別委員会では、議員らから完成後の資金繰りに疑問の声が上がった。計画によると、企業からの寄付や協賛で毎年2億円を集めるという点に対し「30年間、毎年2億円を集められるという根拠はどこにあるのか」といった意見が寄せられた。
 
今後、県議会でも、今回の計画の実効性について議論が進む見通しだ。

借入金の返済計画
借入金の返済計画
福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。