2020年、鹿児島・曽於市の病院で、当時20代の男性看護師が自殺した。それから3年、「自殺したのは深夜に及ぶ残業やパワハラが原因ではないか」として、遺族が国に労災の認定を求めて鹿児島地裁に提訴した。

自殺の原因 仕事とは関連付けず

10月31日、鹿児島市で開かれた遺族の弁護士の会見で遺族のコメントが代読された。

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「息子を死に追いやった原因が仕事であると認められないのはおかしい。どうしても納得がいかないという思いもあり、力を振り絞って今回の裁判を起こすことにした」

弁護士によると2020年5月、曽於市の病院で新卒で働き始めて約1カ月だった当時20代の新人男性看護師が自殺した。その後、病院の第三者委員会による調査で、先輩看護師によるパワハラや過重労働があったことが確認されたが、病院の第三者委員会はパワハラや過重労働を自殺の原因とは関連付けていない。

遺族はこの報告書などをもとに、鹿屋労働基準監督署に労災の申請を行ったが、労働基準監督署は「職場のパワハラや過重労働が原因で自殺したとは認められない」として労災とは認定していなかった。

コロナ禍の対応含め労災認定求め提訴

男性が自殺した時期は、新型コロナの感染が拡大した時期だったが、当時の労災の審査ではコロナ禍の対応については考慮されていなかった。

しかし2023年9月、労災認定基準に「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」という項目が追加されたことを受け、新型コロナ禍の対応も考慮した形で判断してもらおうと、遺族は国に対して労災の認定を求め、31日鹿児島地裁に提訴した。

「職場を辞めさせればよかった」

会見で代読された遺族のコメントはこう続いている。

「深夜に及ぶ持ち帰り残業やパワハラのせいで精神的に追い詰められて自死した息子が、どうして労災にならないのでしょうか。

看護部長に辞意を伝えに行った面談の直後、息子は自ら死を選びました。どうしてあの時、面談に行かせてしまったのか。無理にでも親が前に出て、職場を辞めさせればよかったと、悔やんでばかりです。

私たちは感情面、身体面、行動面、生活面などでさまざまな影響を受けています。息子の死は仕事によるという判断を得て、何とかして息子の無念を晴らしたい」

今回の提訴を受け、男性看護師の勤務先の病院は「今後事案内容を確認していくため、今の段階ではコメントできない」としている。

(鹿児島テレビ)

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