福岡で多発する交通死亡事故。2023年9月末までの死者数は75人にのぼり、2022年同月比より25人増えている。なかでも目立つのは、夜の横断中の事故だが、そこには驚くべき理由があった。

「乱横断」する地元の人たちのワケ

福岡市東区若宮にある片側一車線の道路は国道3号線につながるため交通量が多い。この道路では日常的に、歩行者が横断歩道のない道路を横断する、いわゆる「乱横断」が見られる。

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取材中、高齢女性が杖をつきながら車の間をすり抜けて行った場面も見られ、高齢女性は「横断歩道ね、ないでしょう。ずっと。だけん、ここ渡らないと向こう行ったら、また帰って来なならん」と乱横断をした理由を説明した。

この道路の横断歩道から横断歩道までの距離は約330メートル。「近道だから」と横断する人が多い場所となっている。

この状況に地元の女性は「事故もよくあっていたという話。『危ないね』っていつも思っていました」と困っている様子だった。

地元の人も危ないからやめてほしいという無理な横断。さらに、暗くなると横断をチャレンジして事故になりそうな場面に遭遇することが増えた。

横断歩道がない場所を横断しようとしていた女性は、なんと「迷惑だ」とインタビューに答えていた地元の女性だった。女性を直撃すると…。

「乱横断」をしようとしてした地元の女性:
買い物が不便。今もこんなんじゃ向こうまで行けないじゃないですか。不便。私、困る。いつも思っています

右側からの横断が特に危険?

日没が早まり、暗くなってからの無理な横断が死亡事故につながっている。

2023年の県内の交通事故死者は、2022年より25人多く75人。そのうち午後6時から午後10時までの時間帯が24人と最も多くなっている。

死亡事故で多いのは運転手から見て右側から左側に渡る際に起きる事故だと、福岡県警交通企画課の井上敬さんは言う。その理由は対向車や前走車などがいる場合に使用するロービーム。その左と右で照らし方が違うため、右側から横断する際の死亡事故が多いというのだ。

一体どういうことなのか?

ロービームの照らし方確認してみた

暗い時間帯に福岡県内の自動車学校でロービームの照らし方を確認してみた。

壁を照らすと右ライトの方が高さが低い
壁を照らすと右ライトの方が高さが低い

ロービームを前から見ても左右の光は、変わらないように感じるが、壁を照らしてみると、左側は上の方まで光が当たっているが、右側は上の方が暗い。明らかに右のライトが照らす高さが低くなっていた。

実は、左側の車線を走る日本では、対向車が眩しくないように右ライトの上方向の照射が一部カットされている。

では人が横断歩道の左側と右側にいた場合、どのぐらいの距離まで近づけば運転手が認識できるのか確認してみた。

運転手が人を認識できる距離
運転手が人を認識できる距離

左側に人がいる場合は、交差点に侵入したあたりで停止。人から約21メートル離れた位置で認識できた。

続いては、右側に人がいる場合は、交差点の真ん中あたりに停止、人から約14メートル離れた位置で認識できた。左側に比べ、光が当たる範囲が狭い右側の方が7メートルほど近づかないと人を認識できなかった。

南福岡自動車学校の山田宏之副校長:
右側から来る、照らされていない場所から来る、歩行者はやはり、ほぼ見えなかったり見にくかったりするので、注意して運転しなきゃいけないと思います

例年日没が早まり死亡事故が増える傾向にあるこの時期に、改めて夜の運転で気をつけることを山田副校長に聞くと「ロービームだと40メートルぐらいしか見えない。ハイビームにすると100メートル見えるので、夜間はできるだけハイビームで走ることが安全につながる」ということだそうだ。

ロービームは「すれ違い用前照灯」。ハイビームは「走行用前照灯」と区分されていて、夜間のライト点灯は「原則ハイビーム」で細かな切り替えが重要となる。

(テレビ西日本)

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