いまから11年前に長崎・対馬市の寺院から盗まれ、韓国に持ち出された仏像の問題。その所有権をめぐる韓国の最高裁判決が言い渡された。

11年前、対馬市の観音寺から1体の仏像が盗まれる

2023年10月26日午前、韓国・ソウルの最高裁判所。仏像は、日本と韓国、どちらのものなのか。10年以上に及んだ問題がついに決着した。

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韓国最高裁が言い渡した注目の判決は、1体の仏像の所有権が、日本と韓国のどちらにあるのか、これを結論付けるものだった。

対馬市の観音寺から盗まれた「観世音菩薩坐像」
対馬市の観音寺から盗まれた「観世音菩薩坐像」

その仏像とは、長崎県の有形文化財に指定されている「観世音菩薩坐像」だ。いまから11年前、対馬市の観音寺から韓国の窃盗団によって盗み出された。

仏像は3カ月後に韓国で見つかり、韓国政府が保管。当然、盗まれた対馬の寺に返還されるとみられていたが、韓国の寺院「浮石寺(ぷそくじ)」が日本への返還に待ったをかけたのだ。

対馬から盗まれた仏像は、元をたどれば600年以上前に活動していた日本の海賊集団「倭寇」が略奪したものだとして、浮石寺が所有権を主張し、裁判を起こした。

「仏像は正常ではないかたちで対馬に渡った」

テレビ西日本は6年前、この浮石寺の住職を現地で直撃した。

川崎健太・FNNソウル特派員(2017年):
5年前の窃盗事件と数百年前の歴史的出来事を同列に比べるのはまったく妥当性がないと思います。法治国家の常識を疑う、そうなりますが、いかがですか?

「浮石寺」ウォヌ住職(2017年):
5年前の韓国の窃盗団と600年前に盗んだ日本は同罪ですよ。図々しいのは日本の方です

そして6年前の2017年、韓国の地方裁判所が言い渡した1審判決は―。

韓国1審判決(要旨)「仏像は、略奪など正常ではないかたちで対馬に渡ったとみられる」

韓国司法の判断は、仏像の所有権は日本ではなく、「韓国の寺にある」というものだった。

600年以上前に日本の倭寇が朝鮮半島から持って行ったことが事の発端だと結論付けたのだ。「現代の窃盗事件」と「歴史の出来事」を同列に比べる判決だった。

これ以降、仏像問題が日韓の新たな火種としてくすぶり続け、ついにこの日、韓国最高裁の判決を迎えたのだ。

「仏像の所有権は対馬の観音寺側にある」

韓国最高裁判決(要旨)「日本の民法上、観音寺が法人格を得てから20年経った時点で、仏像の所有権を取得したと認められる」

韓国の司法は、最終的に「仏像の所有権は対馬の観音寺側にある」と結論付けた。

敗訴が確定した浮石寺の住職はー。

「浮石寺」ウォヌ住職:
韓国の最高裁は、武力的かつ違法な略奪を合法化しました。これは野蛮な判決です。私たちはこの判決を認めることができません

一方、対馬の観音寺の住職は「ひとつ、区切りが付いたのかな」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

「観音寺」田中節竜住職:
「まっとうな判断をしてくれたのかな」と思っている。最終的には、対馬に返還が決まること、実際に観世音菩薩坐像を手元で見るのが最終的なこと、それまでは1つ1つ対処していきたい

ひとつの決着をみた仏像問題。今後、日本への早期返還は実現するのかー。

(テレビ西日本)

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