11年に及ぶ日韓の仏像の所有権を巡る問題。盗難被害で日本の寺から韓国に持ち込まれた仏像の所有権を韓国の寺が主張している。所有権はどちらにあるのか?韓国で注目の判決が言い渡された。

「ずうずうしいのは日本です」

2023年2月1日午後、韓国中部、大田市の高等裁判所。

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控訴審の判決が言い渡されるのは、1体の仏像の所有権が日本側にあるのか、それとも韓国側にあるかを巡る裁判。

その仏像というのは、長崎県の有形文化財にも指定されている「観世音菩薩坐像」。今から11年前の2012年、対馬市にある観音寺から韓国の窃盗団によって盗み出された。仏像は3カ月後に韓国で見つかり、韓国政府が保管した。当然、盗まれた観音寺に返還されると見られていた。

ところが韓国の寺院「浮石寺」が、日本への返還に待ったをかけたのだ。浮石寺は、対馬から盗まれた仏像について、元をたどれば600年以上前に活動していた日本の海賊集団「倭寇」に略奪されたものだとして、所有権を主張。裁判を起こした。

川崎健太キャスターは6年前、浮石寺の住職を現地で直撃。寺の主張の正当性をただした。

川崎健太記者(当時):
5年前の窃盗事件と数百年前の歴史的出来事を同列に比べるのは、全く妥当性がないと思います。法治国家の常識を疑いますが、どうですか?

「浮石寺」ウォヌ住職(当時):
5年前の韓国の窃盗団と600年前に盗んだ日本は同罪ですよ。窃盗団は刑務所に入ってるでしょ?処罰を受けているんです。でも同じく盗んだ日本は処罰を受けてない。日本は謝罪したこともない。ずうずうしいのは日本です

一審は浮石寺に引き渡しを命じた

仏像の窃盗被害から11年、長期化する所有権争いは解決するのか。

長崎・対馬市の観音寺では、田中節孝前住職が、海を隔てた韓国で言い渡される裁判の判決を待ちわびていた。

「観音寺」田中節孝前住職:
正当に伝わった仏像であると訴えてきたんですけどね

浮石寺側は2016年4月、韓国政府が保管している仏像を引き渡すよう求めて提訴。一審で下された韓国の司法判断は…。

◆韓国・一審判決
「仏像は浮石寺のものと十分推定できる」
「過去に正常ではない方法で対馬に保管されていた」

一審判決は、韓国政府に対し仏像を浮石寺に引き渡すよう命じたのだ。

「浮石寺」ウォヌ前住職:
不法流出で日本に渡った文化財返還のきっかけになってほしい

注目の控訴審判決

一方の韓国政府は判決を不服として即日控訴。仏像は、浮石寺に引き渡されることなく、韓国政府が保管したまま高等裁判所で所有権を巡る審理が続くことになった。

そして2月1日、大田高裁の控訴審判決。「1300年代に仏像が作られた寺と浮石寺が同一であることの証明が不足している」として韓国の浮石寺の所有権を認めず、訴えを棄却した。つまり、盗まれて韓国に渡った仏像は「対馬の寺に所有権」があると認めたことになる。

一審からの逆転判決を対馬市で聞いた観音寺の田中節孝前住職は…。

「観音寺」田中節孝前住職:
元の所有者に返すべきだと認定してくれたものと信じます。浮石寺が描いている、倭寇に略奪されたのみを主眼に、1審では敗訴したわけだが、それが10年かかってしまって長かった。初めて韓国司法が、正当性を認めたということで非常に喜ばしいと思います。10年も当たり前のことが通じなかったというだけのこと。辛抱していたけどかなえられた

果たして日本に仏像が戻ってくるのか?韓国の浮石寺側は上告する意向を示している。

(テレビ西日本)

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