全国に衝撃を与えている日本大学アメリカンフットボール部を巡る「薬物事件」。福岡市の繁華街で話を聞くと、「大麻を使用する人が増えている」といった声も…。実態について“密売人”・経験者に話を聞いた。

大麻を使用する若者「いっぱいいる」

日大アメフト部では、2023年8月に3年生の部員が逮捕、起訴されたことに加えて、新たに4年生部員が密売人から大麻を購入した疑いで逮捕された。アメフト部内で薬物がまん延していた可能性があり、警察が全容の解明を進めている。
日本大学の林真理子理事長は、記者から「2人目の逮捕となったが受け止めは?」と問いかけられたが、無言のまま車に乗り込んだ。

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大麻は、その所持や栽培などが違法とされている。覚醒剤やシンナーと同じ違法薬物のひとつで、私たちの生活からは離れた存在というイメージもある。しかし、福岡市の繁華街、天神で話を聞いてみると、「大麻を使用する人たちが増えている」といった声が聞かれた。

男性(20代):
(大麻の使用者は増えていると感じる?)しますよ。周り、いっぱい吸ってますよ

女性(20代):
(周りにも吸っている人が)多いよ。(20代も)おるおる、全然おるよ

さらに、驚くべき実態が垣間見えた。

男性(30代):
この辺の界隈の子たち「(大麻)ありませんか」とか言ってくる

若い世代に話を聞くと、周りに大麻を使用する人たちが多くいるという。

SNSで大麻を購入…“隠語”でやりとり

大麻の乱用は福岡でも広がっている。県内では2023年、少年の逮捕、検挙者の数が6月までで58人と、2022年1年間と同じ数にのぼっている。若者たちは、一体どのようにして大麻を手に入れているのか?

男性(30代):
それぞれ違うと思うけど、X(旧Twitter)とか見ると、売っている人も多いです

SNS上が「大麻市場」の入り口と化していると話す男性。その実態はどうなっているのか?
実際にスマホで検索をしてみると、画面上には「手押し」という言葉がずらりと並んだ。「手押し」とは、「手渡し販売」を意味する隠語だ。「野菜」は大麻を意味する隠語だという。

記者が投稿者とやりとりを進めてみると、大麻など薬物のメニュー表と見られるメッセージが表記され、グラム数の横には価格と思われる数字も並んでいた。さらにやりとりを進めると…。

「私に来てほしい場所を指定して下さい」
「あなたの服の色は何ですか。私は白い車を持っています」

やりとりを始めてすぐに具体的な購入場所の話になった。しかし取材を申し入れると、この相手とのやりとりはそこで途絶えてしまった。

別のアカウントで大麻を密売しているという人物に取材を申し込むと、電話で話を聞くことができた。

大麻の密売人:
(大麻は)手渡しもあるんですけど、やっぱりいろんな手段を変えてやっていくんですよ。(購入者の)年齢層はめちゃくちゃ幅広いんですよ。大体はやっぱり高校生、大学生がメインで、中学生とかでも、やっぱり大麻吸ってる子とかもいるし

友人たちと…「危機感持っていなかった」

なぜ、若者は違法と知りながら大麻に手に出すのか? 過去に大麻を使用したことがあるという福岡県内に住む10代の女性に話を聞くことができた。

過去に大麻を使用・福岡在住 ありささん(仮名):
きっかけは親とうまくいってなくて、天神でフラフラしていた時、知り合った人に教えてもらって

ありささん(仮名)が大麻と出会ったのは、高校1年生のときだったという。

過去に大麻を使用・福岡在住 ありささん(仮名):
(天神で知り合った男性に)話しかけられて、車に乗るじゃないですか。そのときに「これ、吸ってみらん?」みたいな感じかな。大麻に対して危機感とか持っていなかった

ありささん(仮名)は家庭の関係がこじれ、日々の寂しさを紛らわそうと、友人たちと大麻を吸っていたという。

過去に大麻を使用・福岡在住 ありささん(仮名):
(他の薬物にも手を出す人は)いましたね。でも結局、みんなやめられてない

一部ネット上では、「合法な国もあるから安全」「依存性はない」などの意見が流れているようだが、薬物問題に詳しい専門家によると、「長く大麻を吸い続けると認知機能の低下、記憶の劣化、そして幻覚や妄想などの症例が多く報告されている」という。

プログラムや出前授業でまん延阻止へ

深刻化する大麻のまん延を食い止めようと、福岡県警も「新たな対策」に乗り出している。ありささん(仮名)が参加しているのは、大麻経験者を対象にした「再乱用防止プログラム」だ。

「再乱用防止プログラム」で使われているのが、「F-CAN」と呼ばれる冊子。イラストを多用している点が大きな特徴だ。少年向けの取り組みで、大麻に頼らない生き方を県警職員と一緒に考えていく。

少年育成指導官・金田律子さん:
自分自身を見つめてもらうとか、生活を見直してもらうとか、素直に出来事とか、そのときの気持ちっていうのを語ってもらう。そのプロセスが大事なのかなと思って(そういう時間を大切にしています)

県警などは、大麻の正しい知識を身につけてもらうために中学校での出前授業にも力を入れている。

少年育成指導官・上野敬子さん:
皆さんの体と心は成長中。大麻が入ってくると、この成長を止めてしまう

若者の間で広がる大麻。若い世代にまず、大麻の危険性について認識してもらうことが必要だ。実効性のある対策が急務といえる。

(テレビ西日本)

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