安倍元首相の銃撃事件をきっかけに表面化した旧統一教会をめぐる問題について、日本政府が教団の解散命令を請求することを決定。
韓国の教団本部は、日本からの資金不足から資産の売却などを余儀なくされていた。被害者救済はどうなるのか動きに注目だ。
“解散命令”を政府が請求
安倍元首相の銃撃事件をきっかけに表面化した旧統一教会を巡る問題。ついに政府が大きな決断を下した。
この記事の画像(16枚)10月12日に臨時の記者会見を開いた盛山正仁文部科学相。盛山文科相は、会見に先だって行われた宗教法人審議会で世界平和統一家庭連合(=旧統一教会)に対する解散命令請求が全会一致で了承されたと発表した。
盛山正仁文科相(10月12日):
宗教法人、世界平和統一家庭連合に対し、解散命令請求を行うことについて、解散命令請求は相当であるとの全会一致のご意見でした
文科省は、これまで教団に対し、7回にわたる質問権の行使や170人を超える被害者へのヒアリングを実施している。この調査の結果、損害賠償などの被害額は総額204億円にのぼり、これまでの教団の行為は宗教法人法における解散命令の要件に「該当する」と判断したのだ。
盛山正仁文科相(10月12日):
多くの方々を不安や困惑に陥れ、その親族を含む多くの方々に財産的、精神的犠牲を余儀なくさせて、その生活の平穏を害するものでした
信者にとっては「不当な内容」
福岡市南区にある旧統一教会の施設。看板には大きく「生命館」と書かれている。関係者によるとこの場所では信者への研修などが行われていて、この日も施設を訪れる信者らの姿が見られた。旧統一教会施設前(福岡市南区)で信者に取材を試みるも…
記者「おはようございます、解散請求の決定について受け止めを聞かせていただけますか?」
信者A「・・・・・・」
記者「おはようございます、解散請求についてどう受け止めていらっしゃいますか?お話を聞かせてください」
信者B「・・・・・・」
ほとんどが口を閉ざす中、1人の信者が足を止め取材に応じた。
福岡の信者:
解散請求自体が、我々にとっては不当な内容だと受け止めている。現役信徒の声が全く無視されているし、どうしてそこまで差別するのかなと思っている。いち信徒としてショックですね、非常に。悲しいですね。私たちがいままで信じてきたものが否定されるわけじゃないですか…
自分の信じるものを「否定」されたとして憤りを隠せないようだ。
岸田文雄首相(10月12日):
宗教法人法に基づいて、客観的事実に基づき厳正に判断した
世界平和統一家庭連合(=旧統一教会)に対し、解散命令を請求することを決定した政府。文科省は10月13日午前、段ボール20箱、約5,000点にものぼる証拠を持って東京地裁に解散命令を請求。地裁に受理されたことで、その判断は今後、司法の場に委ねられる。
解散命令請求を受け教団は一体どうなっていくのか。そして補償の行方は。
「信仰だけを純粋にやればいい」
福岡県在住の50代の女性。30年ほど前、短大に進学した当初、学生による関連団体に誘われ1人暮らしの寂しさからセミナーなどに複数回参加していたという。
福岡県在住の50代の女性:
文鮮明先生がどれだけ素晴らしいかとか、過去の功績とか、そうなのか、素晴らしいなっていうふうに思いました、私は、教えに関して疑いは持っていなかったです。私も合同結婚式とかに行っていたかもしれない
交際していた人の写真を取り上げられたほか、人間関係を否定されたことで、団体とは疎遠になったが、当時の記憶は強烈に残っているという。一連の報道を受け、女性は、教団に対し「純粋に信仰だけに向き合ってほしい」と話す。
福岡県在住の50代の女性:
信仰の自由は守られないといけないと思うんですけど、金品を取るとか、そういうのは違うのかなと思います。信仰だけを純粋にやればいいんですけどね。やはり解散請求というのは致し方ないと思います
解散命令請求を受け教団側は「解散命令を受けるような教団ではないと確信している」とコメントし、全面的に争う姿勢を見せている。
日本から送金滞り資金繰りに苦しむ本部
取材班は、教会本部のある韓国を緊急取材した。
「教団の聖地」と呼ばれる韓国・加平(カピョン)の「天苑宮(テンエングウ)」。2023年5月には、教団の一大イベント、合同結婚式も開催されるなど豪華施設の建設費は300億円以上ともされている。
韓国の宗教ジャーナリストのオ・ミョンオクさんは、安倍氏銃撃事件以降、日本からの送金が減っているとして、教団の象徴でもある「天苑宮」の建設などに影響が出たと話す。
宗教ジャーナリスト オ・ミョンオクさん:
日本からの送金が簡単にできなくなりました。そのため、教団の財政に問題が出て、天苑宮の工事に遅れが出たとの話もあります。また韓国本部の人員削減や給与の減額などをしているようです
年間数百億円にのぼる高額献金問題の要因ともなっている日本からの送金。その送金が滞る中、韓国で見えてきたのは、資金繰りに苦しむ教団の実態だ。
仲村健太郎記者:
ソウル市内にあるこちらの建物は、旧統一教会が拠点としている教会ですが、この教会の建物と土地について売却に向けた手続きが進められていることが分かりました
4階建てのこの施設は、2009年に教団が買い入れたものだが、2023年、韓国・国交省のホームページで売却の手続きが公表された。売却額は2,000億ウォン、日本円で約220億円だ。ジャーナリストのオ・ミョンオクさんによると教団の資産売却の動きはほかにもあるという。
宗教ジャーナリスト オ・ミョンオクさん:
済州島の建物と土地、ソウルのいくつかの建物を売却したようです。アメリカの不動産も処分を進めています。現金の調達が厳しいため資産を売っていると思われます
2023年10月、アメリカ・ラスベガスを訪れた韓鶴子総裁。現地で撮影されたとされる写真には、日本教団の田中富広会長の姿もあった。
その場で、一体何が話し合われたのか。そして、資金難の解消に向けて新たな指示は出されたのか。
重大な局面を迎えた旧統一教会問題。宗教法人としての解散が現実味を帯びる中、被害者救済の鍵となる教団の資産の動きにも注目だ。
(テレビ西日本)