お酒を飲んだ後などに利用する運転代行。業者の数は沖縄が全国で一番多く700社を超えていて、2位の福岡県の倍近くに上る。しかし、沖縄では700社以上の業者があるにもかかかわらず、待ち時間が1時間かかるなどサービスに課題も多い。こうしたなか、AIを活用することで利便性の向上を図るほか、業者の安定的な売り上げにもつなげることを目的としたアプリを開発した企業を取材した。

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独自のAIシステムで到着時間は平均9分に

画期的なアプリを開発したのは、沖縄県で起業したアルパカラボ。

棚原生磨代表は「運転代行は電話をかけて配車をしないといけないので、あちこちの業者の名刺やウェブを頼りに電話をかける必要があるし、電話がつながっても待ち時間が1時間など平気にある」と課題を指摘する。

アルパカラボが開発したアプリ「エアクル」は、独自のAIを用いて最適・最短のルートを利用者と運転代行業者のアプリに表示させることができる。

棚原代表は「代行業者もアナログからデジタルに移行して、本当に効率的にサービスを利用できるような営業ができるようになった」とアプリ開発の意義を語る。

電話で運転代行を予約した場合、配車が確定し業者が到着するまでおよそ60分かかっていたが、エアクルだと平均でおよそ9分にまで短縮される。

棚原代表は起業するにあたって、運転代行業者の安全面や保険の加入など実態を探るため、沖縄県警と運転代行協会の調査に同席した。そのほとんどが、何かしらの規定にひっかかるような運行をしていたという状況で、中には逃げる業者もいたと話す。

 安心・安全の業者だけが享受できる仕組みを構築

エアクルに登録するドライバーは、運転代行に必要な認可の書類や自賠責の確認などを全てクリアした人が登録されていて、客が安心して利用できるようになっている。

棚原代表は、「当然ながら代行業者の皆さんもかけつけ時間が減るので、一時間あたりの収益も増えるが、それは安心安全の業者だけが享受できるもの」と語る。

エアクルを通じて受注している業者にも話を伺った。

運転代行の代走をしている與儀裕基さんは、「エアクルを使用すれば、行った先で近くのお客さんをマッチングしてどんどんチェーンしていくような動き方になるので、空走距離が少ないく、メリットはだいぶ大きい」と話す。

飲酒運転の歯止めにも期待

取材した日の営業に同行したところ、開始ボタンを押してわずか10分で配車のオーダーがあり、その後も利用客を降ろした近くで別の注文が入った。

沖縄県内では2023年に入り、9月末までに840人が飲酒運転で検挙されており、2022年の1年間の数をすでに165人も上回っている。

このサービスが普及することで、飲酒運転の歯止めになるとも期待されている。

アルパカラボの棚原代表は、「運転代行が今までよりもっと便利に早くつかまるようになれば、もっともっと飲酒運転が減るはず」「それがかっこいいというイメージに繋がっていくような活動ができれば唯一、飲酒運転を具体的に減らしていく手段になり得る」と話す。

利用客の男性は、「知り合いから(エアクルを)聞いたが最高。いつも常連の代行がいるが、今日も一時間かかるって言われたので、エアクルを使いました」「人によっては(お酒を飲んだ)流れで飲酒運転をして捕まったとか、代行が来るのが待てない人がいるとか聞くので、エアクルを使ったらそういうことは無いので、いいことだと思います」と評判は高い。

運転代行の料金を適正化

値下げ競争が激しい業界の現状を踏まえ、初乗り料金は4キロまで2000円とする一律の料金設定にしている。運転代行の利用料金を適正化して、業者の売り上げを安定的に確保することが狙いだ。

棚原代表は、「運転代行業は、貧困ビジネス化しているところがある」「働いている方々のほとんどが最低賃金以下で就労されていたり、あとは非効率が問題であったり深刻なドライバー不足だったりと、そういったものを内包していて、沖縄が持つ課題とすごく似ていると思うので、この業界全体が変わることによって、世の中が便利になっていくと思う」と力を込める。

デジタル技術とAIで社会の課題を解決しようと試みる取り組みのエアクルは、福岡や和歌山などにも展開しており、県外からも注目されている。

(沖縄テレビ)

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