高市首相が国の重点投資対象として位置付け、17の戦略分野の1つに盛り込まれている宇宙開発。2020年に4兆円だった市場規模を、国は2030年代の早いうちに2倍の8兆円にまで成長させる計画を掲げている。宇宙ビジネスに積極的に挑戦する福岡の地場企業の動きを取材した。

福岡の“下町ロケット” 夢は宇宙

福岡・久留米市にある『オガワ機工』。主にベルトコンベアーを製造する企業だが、17年ほど前から宇宙分野にも力を入れいる。

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久留米市を中心に自動車産業などを支える町工場の仲間とともに宇宙に関する研究や開発を行うチームを結成。九州大学発の宇宙ベンチャー『QPS研究所』の衛星開発に携わってきた。

『オガワ機工』の伊藤慎二副社長は、衛星開発に求められる高い技術力を身につけることで、本業の拡大に繋げられるとの狙いもあったと話す。

「QPS研究所の衛星は、14号機まで飛んだのかな。これからも作り続けていきますし、そっちはそっちで進みながら、また自分達も新しいことをやっていきたい」と更なる高みを目指している。

『オガワ機工』では、新たな挑戦として、衛星に乗せるオリジナルの機器も初めて開発した。

小さな箱の中には、カメラやGPSアンテナ、温度センサー、衛星の姿勢を検出する装置などが組み込まれている。

残念ながら『カイロス3号機』の打ち上げ失敗で、宇宙には送り出せなかったが、伊藤副社長は、前向きだ。

「九州に宇宙産業を根付かせることが私の人生の夢の1つになっている。できることは、何でもやりたいなと思っている」と強い意欲を見せた。

宇宙ビジネス新規参入支援に新拠点

宇宙に関心を持つ福岡の企業は、『オガワ機工』だけではない。2026年3月6日。宇宙ビジネスに関心を寄せる福岡県内の企業とJAXAや大手企業の担当者を結び、ビジネスの拡大に活かしてもらおうと県主催の会合が開かれた。

会場には、不動産デベロッパーの『福岡地所』や2025年7月から「新しく宇宙の部署を立ち上げた」という福岡に拠点を置くテクノロジーカンパニー『FUSIC』の担当者らも参加。

「他の宇宙系の会社が、今どういうことをやっているのか、そういう会社と仕事を一緒にやれることがないかを検討するために来た」と語る。

『福岡県商工部』の小野昌志企画監は、「ここまで熱心にやっているのは、福岡県が1番だと私は思っている。新年度は宇宙ビジネスの新たな拠点づくりなどに取り組んでいきたい」と強い意欲を示した。

福岡県は、民間企業の宇宙関連ビジネスへの新規参入を支援する新たな拠点を整備する方針を固め、2026年度一般会計当初予算案で4000万円超を盛り込み2月県議会で審議している。新拠点は、『フクオカ・スペース・ビジネス・アクセラレーション・ラウンジ』(仮称)で、JAXA・宇宙航空研究開発機構と連携し、企業の新規参入やビジネス拡大に取り組む。県の特産品を活用した宇宙食や衛星データを活用した防災システムの開発も進めるとしている。

宇宙食の開発から災害用備蓄食へ

福岡県内企業による宇宙食開発の取り組みも実を結ぼうとしている。

福岡県のブランド地鶏『はかた地どり』を生産販売する久留米市の『福栄組合』。

開発した『はかた地どりともち麦のお粥』が、JAXAから宇宙食として、間もなく認証を受ける段階まで来ている。

現在、日本国内で宇宙食として認められたものは、51品目にのぼるが、認証を得られれば、福岡県内では初めての快挙となる。

「日本国内で『はかた地どり』を販売し、輸出も一部香港の方でやっているが、これが宇宙まで行っちゃうと思ったら感無量です」と『福栄組合』の中垣誠専務理事は、胸を張る。

この商品は、もともと一般販売もされていたが、宇宙食に認められるためには賞味期限である1年半、実際に味に問題がないか確認するなど、4年近い時間がかかった。ようやく夢に手が届くところまで漕ぎつけたが、目指すものは、まだその先にあると中垣専務理事は話す。

「宇宙の環境というのは、閉ざされた環境の中で生きていかなきゃいけない。この状況は、災害の環境と一緒です」。中垣専務は、宇宙食の認証をきっかけに、災害時用の備蓄食として認めてもらうことを目指していると話す。

宇宙に関わる製品開発を技術の向上や万一の際に備える製品作りに繋げ、更なる企業の成長に生かす。こうした新たな取り組みが、福岡では、業種を問わず広がりをみせている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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