独特の語り口で軍記物や偉人伝などの物語を読む話芸「講談」。血液がんの1つである「悪性リンパ腫」という大病を乗り越え、講談の世界で活躍する大分県出身の講談師、一龍斎貞弥さんの思いを取材した。

巧みな話芸を披露する講談師

巧みな話芸を披露する大分県臼杵市出身の講談師一龍斎貞弥さん。
講談とは日本の伝統芸能の1つで、独特の語り口で軍記物や偉人伝などの物語を読む話芸。

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「自分で一生涯技術を積み重ねることで価値を増していくような何かがしたい。自分もそんな芸を身に付けたい」と話す貞弥さんは去年9月、真打に昇進。

高校時代まで臼杵市で過ごし大学卒業後、東京で就職。その後、声優やナレーターとして活躍した。

みなさんも聞き覚えがあるのでは…
一部のメーカーでは給湯器の音声案内の声「お風呂が沸きました」や「給湯温度が変更されました」なども貞弥さんが担当。

体に異変…ステージ4の血液がんに

芸の幅を広げようと模索する中、出合ったのが講談の世界。その奥深さに魅了され、2007年43歳で一龍斎貞花氏に弟子入りした。

それから10数年が経ったころ、体に異変が…ある日、強烈な腹痛に襲われた。
「お腹の中で小さい龍というか、大きな蛇というか、そういうのがもう腸の中をぐるぐるぐるぐるしているみたいな」と貞弥さんは当時を振り返る。

検査の結果は血液がんの1つ「悪性リンパ腫」。
最も進行した「ステージ4」だった。

当時の心境について貞弥さんは、
「青天の霹靂だった。命があと1カ月2カ月あるんだろうかと自分なりに思った。これはもう命が無いぞと思って…」と話す。

2021年から半年に及ぶ抗がん剤治療が始まった。吐き気などの副作用に襲われながらも貞弥さんは強い気持ちを持ち続けたという。
「客観的に死ぬかもしれないと思っただけで、自分が本当に死ぬだろうとか死んだらどうしようという不安は1ミリもなかった。自分が生きると信じていたのかもしれない」

がん乗り越え第一線に復帰

そして、おととし医師に寛解を伝えられた。
その後、高座に復帰し去年からことし5月にかけて東京や大分で公演をやり遂げた貞弥さん。

大病を経験して気付いたことがあるという。

「ただ本当に今を生きるだけ。今の仕事を頑張る。今のこの一瞬を楽しみ、今、目の前にある食事を楽しむ。それだけ、もう本当に人生楽しみたい。皆様が聞いて自分の人生に生かしていけるような講談を作っていきたいし、読んでいきたい」

がんを乗り越え第一線に戻ってきた一龍斎貞弥さん。
新たな目標を胸に講談師としての第二幕を歩み始めている。

(テレビ大分)

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