中国非公式警察の実態
米司法省は、4月17日、ニューヨーク・チャイナタウンの雑居ビルに入居していた中国「非公式警察」の関係者であるニューヨークに住む中国地方郷友会を運営してきた男2人を逮捕したと明らかにした。
逮捕された2人は、反体制派の中国人を探し、脅迫することを専門に活動していたという。
この記事の画像(6枚)また、米司法省は、ソーシャルメディアプラットフォームに大量の偽アカウントを作成し、偽情報や嫌がらせの情報を拡散する情報工作組織を運営したとして、34人の公安部職員が起訴したことを発表した。
中国の非公式警察拠点は、中国当局が在外中国人を監視、または強制帰国させるため、日本を含む欧米諸国53カ国、102カ所に非公式警察の拠点を設置。一般団体・企業や中華料理店などに偽装し、はたから見れば通常の企業や団体としての活動を行っている。
そして、これまで政権批判や反中思想を見せた在外中国人を強制的に帰国させ、対象となる中国人や中国に残った家族を脅迫・嫌がらせ行っているとされている。
中国非公式警察の日本拠点とは
これまでの外務省などの発表によれば、日本国内に2カ所の非公式警察が存在するとされている。
1つは東京都秋葉原、そして2つ目は福岡である。
東京都秋葉原の拠点は雑居ビルに所在し、最上階には中国福建省の名前を関した社団法人が所在する。
福岡の拠点は、江蘇省南通市公安局が設置したとされ、同拠点には一般企業が入居し、前代表が人民解放軍の関係者であった。
そして、上記の拠点以外にも銀座、名古屋、大阪に拠点が存在すると推察される。
前述の米国で検挙された男は中国地方郷友会を運営しており、日本の拠点も含め、非公式警察と同郷団体・経済団体等との関連性が共通点としてあげられる。
郷友会・同郷会などを通じ在外中国人内でのコミュニティを利用し、在外中国人内のコミュニティから密告を含むあらゆる手段で情報を収集し、反中思想や政権批判を行った人物を特定・監視しながら非公式警察の任務を遂行していると思われる。
また、非公式警察の任務は属人的に与えられている場合もあり、彼らの組織内でも非公式警察の任務を関知している人物はごく一部である可能性がある。つまり、善意の人間・団体に隠れて活動している可能性があるのだ。
このように、善意の人間を隠れ蓑にする手法は、中国の千粒の砂戦略(※)にも共通している。
(※千粒の砂戦略:ロシアのようにスパイによる典型的な諜報活動ではなく、人海戦術のごとく、悪意・善意問わずビジネスパーソン・留学生・研究者など多種多様なチャネルを使用し、情報を砂浜の砂をかき集めるように、情報が断片的であろうとも広大に収集する戦略)
日本における非公式警察への対応
では、日本において、非公式警察への対応はできるのだろうか。
日本の捜査機関では、犯罪事実がなければ検挙できない。そして、その法的根拠は既存の刑法等の法令に依拠するのは言うまでもない。
そして、現状の中国による善意の人間を隠れ蓑にするやり方に、正直打ち手がないのが現状である。
中国当局の横暴なやり方を野放しにしてはいけない。スパイ防止法の検討がなされるべきだ。
【執筆:稲村悠・日本カウンターインテリジェンス協会代表理事】