捨てられるハチの巣を有効活用した「ミツロウバッグ」。何度でも洗って使えるサステナブルな商品だ。佐賀・神埼市の養蜂場が開発し、障害がある人が一般就労を目指して働く施設の利用者が製作している。

熱でやわらかく冷やすと固まる性質を利用

巣の接着剤としてハチが分泌する“ミツロウ”。

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一般的に化粧品やワックス、クレヨンの材料に使われる。

このミツロウを塗りこんだ生地で作られた袋、それがミツロウバッグだ。

橋爪和泉アナウンサー:
ミツロウバッグに冷凍したお米300グラムを入れました。逆さにしてみると…ミツロウが固まっているので全く落ちてきません

バッグは体温の熱でやわらかくなり、冷やすと固まるミツロウの性質を利用して作られた。ポリ袋の代わりに食材を入れて保管したり持ち運んだりするもので、洗えば何度でも使うことができる。

はらまき養蜂場 田村ちせさん:
生活の一部にしてほしい。ポリ袋と併用してミツロウバッグを使ってほしい。そうすると少しずつゴミが減るんですよね

商品を開発した神埼市のはらまき養蜂場の田村ちせさん。ミツロウに着目したのはママ友からの一言だった。

はらまき養蜂場 田村ちせさん:
公園で、あるお母さんから「ミツロウを分けてほしい。ミツロウラップを作りたい」と提案があった。一味違うものを作りたいと思っていた時だったので(ミツロウの商品を)作ってみたいと思ったのが始まり

廃棄していたハチの巣を有効活用

蜂蜜を取り終えた巣に太陽の熱でじっくり温めると溶け出してくるのがミツロウ。

しかし採取できるのは巣全体の重さのわずか1%。手間と時間がかかるため養蜂場ではこれまでミツロウをとるどころか巣を丸ごと廃棄していた。

はらまき養蜂場 田村さんの父 腹巻佐一郎さん:
蜜をとった残りですからね。これ(ミツロウ)をとろうと思ってハチを育てるわけじゃないから、余ったものを利用してもらうと

捨てられる巣を有効活用して作られたミツロウバッグ。田村さんはここ数年人気が高まっているミツロウラップをアレンジして8カ月ほどで製作に成功した。

田村さんが定期的にミツロウを届ける場所。一般就労を目指して障害がある人が働く佐賀市の就労継続支援B型事業所「ワンフラワー」だ。ミツロウバッグは施設の利用者が製作している。

施設利用者の女性:
買ってもらえるうれしさもあるし、自分の手がけたものが売れる、販売されることにうれしさを感じます

ワンフラワー 小野憲一朗さん:
成功することで「自分はこんなにできるんだ」と「こんないい商品作っているんだな」と思うことが利用者のプラスに働く。ひとつの働き方として、すごくいい取り組み

障害者雇用の選択肢にも期待

なぜ障害がある人にバッグの製作を依頼するのか。そこには田村さんの強い願いが込められている。

田村さんは夫と息子2人の4人家族だ。長男の蒼君は1歳のころ発達障害の診断を受けた。

はらまき養蜂場 田村ちせさん:
障害者の施設の人たちと接することが多くて、現状とか色々聞くことが多い。何かしたいというより、不安になった。蒼君の将来が。時給の話聞いたら「えっ、無理でしょ。そんなお給料で生活できないでしょ」と。もし私が何かできるのであれば、楽しんで取り組めたらと思ったのがミツロウバッグでした

息子の将来を思う1人の母として、障害者雇用の選択肢を増やしたい。ミツロウバッグの販売はその実現に向けた第一歩だ。

はらまき養蜂場 田村ちせさん:
限られた中で仕事を選ぶのってすごく苦痛じゃないですか。その幅を広げたいなって。障害のある人にも「ああいうこともできる」「こんなこともできる」と広めたい

販売に向けた資金は、クラウドファンディングで約180万円集めた。年間の売り上げ目標は、はちみつにかけて830万円。売り上げは製作を依頼しているワンフラワーなどへ贈られる。

はらまき養蜂場 田村ちせさん:
聞こえていないものが聞こえていたり、私たちに見えていないものが見えたりして、その人にとって居心地のいい環境を作ってあげないとストレスになる。そういう人たちをもっとくみ上げられる環境を養蜂を通して作っていきたい

(サガテレビ)

サガテレビ
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