鹿児島県大崎町と志布志市で、家庭から出た紙おむつを全てリサイクルする技術が完成した。これまで埋め立て処分されていた紙おむつが新たな資源として生まれ変わる過程と、それを活用した画期的な取り組みが進められている。

リサイクル先進地域で実現した新技術

リサイクルが盛んな鹿児島県大崎町と志布志市の「そおリサイクルセンター」では、空き缶やペットボトルのリサイクルに加え、2025年3月、これまで埋め立て処分されていた紙おむつの完全リサイクルに成功した。

大手メーカー「ユニ・チャーム」の城戸勉上席執行役員によると、同社は15年前、紙おむつのリサイクル技術開発に着手した。その矢先、リサイクルに熱心な大崎町と志布志市からタッグを組みたいとオファーがあり、この画期的なプロジェクトが始動した。

「処分場を見ると紙おむつがたくさん増えているので、それを何とかしたいと彼らが思っているとき、当社は当社で紙おむつのリサイクルに取り組んでいたので『リサイクルできる』とリリースしたら、それを見た志布志市、大崎町の自治体の人から連絡をもらって『じゃあ、一緒にやりましょう』と」と城戸氏は経緯を説明する。

紙おむつ100%リサイクルを実現
紙おむつ100%リサイクルを実現
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紙おむつリサイクルの技術的挑戦

これまで企業秘密が多かった工場を、特別に案内してもらった。

紙おむつは主に3つの素材からできている。パルプ、テープやビニールなどのプラスチック類、そして肌をさらさらに保つ高分子吸収材だ。リサイクル工程では、回収された紙おむつを細かく粉砕し、まずプラスチック類を取り出す。特殊な加工を経たプラスチック類は粒状になり、荷物を乗せるパレット、街なかのおむつ回収箱、そして回収袋の原料として再利用される。

パルプと高分子吸収材は遠心分離機で分離されるが、最大の技術的課題は「いかにしてパルプを新品と同等の状態に戻すか」だった。電解水など20種類以上の方法を試し、10年以上の歳月をかけてたどり着いた解決策が、強い酸化力を持つ「オゾン」を使った洗浄方法だった。

説明するユニ・チャーム 城戸勉上席執行役員
説明するユニ・チャーム 城戸勉上席執行役員

オゾン処理により、再生パルプは殺菌、脱臭、漂白され、木材からできたパルプより白いという。この再生パルプは再び紙おむつに、高分子吸収材は水分が取り出された後、ネコのトイレ用品に生まれ変わる。「紙おむつはゴミじゃない!こういう世の中にしていきたい」と城戸氏は熱意を語る。

画期的な循環型システムの実証実験

2025年9月からは新たな取り組みがスタートした。志布志市と大崎町にある4つの保育施設では、環境省の補助金を活用した実証実験が行われている。園児が使った紙おむつは先生がリサイクルに回し、それが再び紙おむつになって園に戻ってくるという循環型システムだ。

この取り組みにより、保護者はおむつを持たずに子どもを保育園に通わせることができるようになった。保育園の先生は「従来のものと変わりなく、子どもたちもはきやすそうにしている」と評価し、保護者からも「安心して使えるものだな。地球にも優しいし、いいなと思う」という声が聞かれている。

環境教育への展開

さらに、志布志市の福田裕生教育長が自らアイデアを出した新しい教材も誕生した。それは「紙おむつからリサイクルされた紙粘土」だ。2025年9月に発売されたこの教材は、工作を楽しみながら環境教育もできると期待されている。

「まず子供たち。パルプを手にするとにおいを嗅ぎます。しかし全くにおいがしない。手触りもなめらかで驚きの声をあげていました」と福田教育長は子どもたちの反応を語る。

紙おむつ→紙粘土に!子どもが驚いた“においゼロ”
紙おむつ→紙粘土に!子どもが驚いた“においゼロ”

持続可能な社会へ

大崎町と志布志市の取り組みは県外にも広がりを見せている。神奈川県葉山町では保育施設などで回収した使用済み紙おむつを「そおリサイクルセンター」へ輸送し、再び紙おむつに製品化。それを実際に使ってもらうことで紙おむつの「水平リサイクル」について興味、関心を持ってもらうのが狙いで、2025年11月から約1カ月間行われる。

これからの日本は高齢化により紙おむつの排出量は増加の一途をたどる。「紙おむつはゴミじゃない」。私たちも意識を変えていく必要がありそうだ。なお、「水平リサイクル」された紙おむつはイオン九州の各店舗とユニ・チャームのダイレクトショップで購入できる。

(動画で見る:保育園で実証!使ったおむつがまた園に戻る“循環型おむつ”の全貌

鹿児島テレビ
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