鉄道少女が夢を叶えた。上田電鉄の22歳の女性社員が試験に合格し、子どもの頃から憧れていた運転士になった。上田電鉄の女性運転士は「戦後初」だ。入社1年目には台風災害を経験、復旧への歩みの中で住民たちの支えを実感、安全運行を心がけ経験を重ねている。

入社4年目の22歳

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上田電鉄別所線の下之郷駅。運行前、車庫線で車輪などを入念に点検しているのは、入社4年目の小林可菜さん22歳だ。

運転席でマイクやレバーをチェックしたらホームへ入線。小林さんは2022年12月に独り立ちした新米運転士だ。

上田電鉄・小林可菜さん:
本来(停止位置が)こっちだったんですけど、ちょっと越えちゃいました

入線時、停止線をわずかに越えてしまった。

上田電鉄・小林可菜さん:
30センチくらい前に止まっていれば、扉の端っこってこの辺だと思うんですけど、ホームとの幅が広くないので、落ちる心配がなくなるかなと。難しいですね

大の鉄道好き 夢を実現

憧れの運転士になった小林さん。上田電鉄の女性運転士は「戦後初」だ。

上田電鉄・小林可菜さん:
正直、戦後初と言われても実感はあまりなくて、ただ周りに女性の運転士っていうのは、この会社入ってから見たことないし。第一線として頑張っていきたいなと思います

小林さんは長野市出身。物心がついた頃には既に、大の鉄道好きになっていた。

上田電鉄・小林可菜さん:
長野電鉄の沿線に住んでいたので、長電はよく使ったりとか、しなの鉄道とかJRもよく乗ったりとかしてました。気づいた頃には電車が好きで、見に行くのが楽しかったですね。かっこいいですね、ひかれるものがあります

小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「電車の運転士」。

上田電鉄・小林可菜さん:
鉄道好きからしたら、運転士ってすごく立派な職業だと思うので、私もそれになってみたいと思いました

高校卒業後の2019年、運転士志望で入社。まず、集札や窓口対応の業務にあたった。

上田電鉄に入社した理由は…

上田電鉄・小林可菜さん:
片手で数えるくらいしか乗ったことなかったんですけど珍しい駅、下之郷もそうですし、八木沢、別所(温泉)、中塩田、結構きれいな駅がたくさんあるので、駅にひかれたところはあります

台風災害から復旧 住民の支えを実感

台風19号でシンボルの「赤い鉄橋」が崩落(2019年10月)
台風19号でシンボルの「赤い鉄橋」が崩落(2019年10月)

駅員として働きながら運転士になる勉強も始めた入社1年目の秋。上田電鉄に試練が訪れた。

上田電鉄・小林可菜さん:
次の日、実際に来てみたら、本当に落ちてるんだと思って、びっくりしましたね

2019年10月、台風19号の影響で千曲川が増水し別所線のシンボルだった「赤い鉄橋」が崩落。当時、小林さんは払い戻しなどの業務に追われた。

上田電鉄・小林可菜さん:
日に、払い戻し50件とかやったりしてました。結構大変でしたね

ただ、この試練は、別所線が多くの人に愛されていることを実感する出来事にもなった。

復旧を支えようと住民や大学生が募金活動に乗り出すと、ユーミン・松任谷由実さんも応援メッセージ。支援は大きなうねりとなった。

1年半後、全線開通―。

上田電鉄・小林可菜さん:
復旧前は「頑張ってね」っていう声をたくさんいただいて、復旧後は「頑張ったね、ありがとう」と言葉をいただいてました。すごくうれしかったですね。支えられているという実感が湧きました

勉強と訓練 安全運行で信頼得る

復旧を励みに、小林さんは勉強と訓練を重ね、運転士の国家試験に挑んだ。

上田電鉄・小林可菜さん:
(試験勉強は)本当大変でした、全然覚えられなくて。ずっと書いてました、書いて覚えるタイプだったので

2022年11月、みごと試験に合格。夢を叶えた。

上田電鉄・小林可菜さん:
すごくうれしくて、たくさんの人に報告しました。このチャンスにありがとうって思いながら仕事していきたいと思います

学科と実技、みっちり指導したのは下島崇運輸局長だ。

下島崇運輸局長:
いろんなことに気が付いたり、努力する子だなと。安全運行が一番ですけども、楽しくお客さまとの触れ合いを大事にしていってもらえれば

上田電鉄・小林可菜さん:
(下島さんの指導はどうだった?)優しかったです

安全運行を心掛ける小林さん。1人で運行を任せられて2カ月ほどになった。

上田電鉄は2021年、創業100年を迎えた。長い歴史の中、男性が戦地に駆り出された戦時中、女性運転士が活躍した時期があった。

戦後は、小林さんが初めてだという。

別所線の乗降客数は、2018年度130万人だったが、台風災害に続きコロナ禍の影響で2020年度は63万人に。2021年度は88万人まで回復している。

上田電鉄・小林可菜さん
上田電鉄・小林可菜さん

徐々に以前のような光景が戻りつつある別所線。小林さんも手応えを感じつつ、運転士としてのキャリアをスタートさせた。

上田電鉄・小林可菜さん:
お客さんにありがとうって言ってもらえるときが、一番やっててよかったなって思います。この人なら安全だ、任せられると思われるような運転士になりたいです

(長野放送)

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