衣服が大量廃棄される現状。そこで、愛媛県内の縫製を学ぶ学生や高校生が、まだ着られる洋服を無駄にしないユニークな取り組みに挑戦した。

この記事の画像(25枚)

亡くなった祖母の形見の着物 洋服にリメイク

洋服をチェックする高校生と専門校生。「どうですか?」「本当に…」、「着やすい?」などと、高校生の着る洋服の状態をチェックするのは、裁縫を学ぶ学生たち。

彼らが学ぶ、愛媛県立宇和島産業技術専門校は、就職のために必要な知識や技術が習得できる学校で、縫製技術が学べる「アパレルビジネス科」のほか、木工が学べる学科などがある。
ここで、2022年に立ち上がったプロジェクトがある。

宇和島産業技術専門校 教務主任・田窪聖子さん:
クローゼットとか、タンスの中にある服っていうのを上手に利用して、また着られる形にするっていう取り組みはどうかなと。これもまた、SDGsの活動のひとつになるんじゃないかということで

それは、高校生がデザインした洋服を、専門校生が形にするという試み。

宇和島東高校津島分校 2年・酒井永愛さん:
先生から話を聞いた時、すごいやる気でした。実は去年、おばあちゃんが亡くなって、おばあちゃんちにいっぱい着物があって、それを売ることになったんですけど、どうせなら着てほしいっていうおじいちゃんの思いがあって

宇和島東高校津島分校の酒井永愛さんは、亡くなった祖母の形見の着物を、洋服にリメイクすることにした。しかも、そのデザインは…。

宇和島東高校津島分校2年・酒井永愛さん:
一見、普通のセットアップっていうか、実は手をあげたり何かの動作をすると、ここのおなかが見えるんですよ。そこが一番のポイントで、私が好きな韓国のアイドルの女の子が、こういうセットアップを着てたんですよ

なんと、着物から韓国風のカジュアルセットアップに。そして、同じく津島分校の梅田旭さんは…。

宇和島東高校津島分校2年・梅田旭さん:
アニメみたいな服が作ってみたいなって思って

アニメが大好きで、イラストを描くのも趣味だということで、好きなキャラクターが着ている服をイメージしたという。今回、リメイクのために、お母さんからはブラウス、お父さんからはTシャツを譲り受け、Tシャツとパーカーが合体したデザインにした。

高校生のデザインを専門校生が形に

初めて描いたデザイン画。果たして、イメージ通りの洋服はできるのか。専門校では、酒井さんから預かった着物を生地の状態にするために、ほどいていく作業が始まっていた。

宇和島産業技術専門校・三好麻衣子さん:
ミシンの縫い目と違って、(着物は)手縫いで全部一針一針やってるので、(縫い目を)一本ずつ解いていく感じ。(着物が)古いと糸が滑らないので

今回の取り組みには、南予の5高校から13人の高校生が参加していて、自分で考えたデザイン画が寄せられた。これを、専門校生10人で形にしていく。両親の洋服をリメイクしたい、梅田さんのデザイン。ポイントでもあるフードを縫い合わせていく。

宇和島産業技術専門校・伊勢緑さん:
ずれてます…。だいぶずれてると思う

宇和島産業技術専門校 教務主任・田窪聖子さん:
めっちゃ難しいやろ

宇和島産業技術専門校・伊勢緑さん:
全部、仮どめして(ボーダーの)線では合ってるんですけど、折り返した時の線が合わない

宇和島産業技術専門校・三好麻衣子さん:
ある程度劣化じゃないけど、使ってきた年月を経た素材って、何度も縫い返しをすると、そんなに丈夫じゃないので(いためる)

思い出や歴史のつまった大切な生地で作るリメイク服。作り手には、替えがない、失敗ができないという別のプレッシャーもあるという。

それぞれの物語が…リメイク服お披露目

祖母の形見の着物をリメイクした酒井さんと、両親の洋服をリメイクした梅田さんの洋服が完成した。

津島分校の生徒:
めっちゃかわいい!ここに柄が、着物の柄入りです

宇和島東高校津島分校 2年・酒井永愛さん:
めっちゃいいです!想像してたのと100%一緒です、本当に

絹素材ならではの、高級感のある素敵なセットアップができあがった。着物の名残りもそっと残して、おばあちゃんの思い出も。

そして、梅田さんのTシャツパーカーは…。

宇和島東高校津島分校 2年・梅田旭さん:
相当いいです

さっそく、出来上がりを両親に見せると…。

梅田さんの両親:
すごいね、お母さんの服よね。これをフードにするとはね。リメイクされるってすごいよね。リメイクいう発想は全くなかった。あの服からああいうのは想像できてなかった、全然

宇和島東高校津島分校 2年・梅田旭さん:
出かける時とかに着ていきたい

梅田さんの母親:
いいかもね。みんなびっくりするかもね

それぞれの物語を持つ13のリメイク服は、縫製を手掛けた宇和島技術専門校の日ごろの成果を発表するイベントでお披露目された。

宇和高校 3年・松本太一さん:
この服は中学生の時に着てて、サイズとかも小さくて、しばらく着ていなかったんですけど、今回新しくしてもらってサイズ感も良くて、着心地も良かったです

宇和高校 3年・宮崎和奏さん:
ネットで買って似合わなかった服だったので、ちゃんとお店に行って試着して、自分に似合う服を買って捨てたりしないように(したい)

専門校生と高校生の起こす“化学変化”。挑戦したからこそ生まれる気づきがそこにはあった。

(テレビ愛媛)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(25枚)
テレビ愛媛
テレビ愛媛

愛媛の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。