「東大の入試問題を小学生が解けるなんて、ありえない!」と多くの人が思うだろう。

受験シーズン真っただ中。それぞれの志望校を目指して日々勉強に励んでいる中で「小学生でも解ける」なんて言われても信じられないかもしれない。

しかし、偏差値35から東大受験を決意し、二浪の末に見事合格した西岡壱誠さんは「本当なんです」と語る。

著書『小学生でも解ける東大入試問題』(SBクリエイティブ)では、東大で過去に出題された5教科(国語、数学、英語、理科、社会)の問題から32問を取り上げている。

いずれも求められるのは、問題の表現や単語の複雑さに惑わされず、シンプルに考えること。今回は理科の問題から一部抜粋・再編集して紹介する。

なぜ山の天気が移り変わりやすい?

問題:
なぜ、山の天気は平野の天気より変わりやすいのか。【2000年 地学 第二問】

まず、この問題に取りかかる前に、押さえておきたいポイントがあります。

東大の入試では、私たちの日常生活に立脚した問題が出題されます。

では、日常生活に立脚した理科のテーマといえばなにか?それは、やはり天気でしょう。

天気は私たちの日常と密接に関わっている(画像:イメージ)
天気は私たちの日常と密接に関わっている(画像:イメージ)
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自分の日常生活に「天気は無縁だ」という人はいないはずです。

私たちの日常生活に直結したテーマである天気という自然現象について、みなさんは、本当に胸を張って理解できているといえるでしょうか?

ここで理科の問題は、いずれも小学生で習う範囲の知識で解けます。ただし、理科の専門的な用語をたんに“知っている”だけだと、太刀打ちできません。

それでは問題を解いていきましょう。

“当たり前”の自然現象も説明できる?

「山の天気は変わりやすい」

この自然現象を知っている人は多いと思います。

この問題も身近な自然現象について「当たり前」で終わらせずに、しっかりと理科の知識に結びつけて理解しているかどうかがポイントになります。小学校でも習う、日本海側に雪が多い理由にもつながります。

『小学生でも解ける東大入試問題』(SBクリエイティブ)より
『小学生でも解ける東大入試問題』(SBクリエイティブ)より

それは、「フェーン現象」です。

フェーン現象を簡単に説明すると、「水分を含んだ湿った風が山にぶつかると、その風が上昇し、その過程で含んでいる水分が雲をつくる」という自然現象です。
 
雲は、水分でできています。上空に行けば行くほど気温が下がり、空気に含まれた水分が冷やされるので、雲ができるのです。
 
たとえば、日本海側では、日本海の水分をたくさん含んだ風が山にぶつかることによって上昇します。そして、上昇した風が冷やされて大きな雲になります。

その雲が、やがて雪を降らせる原因になるのです。

同じように、山の場合も湿った空気が上昇して雲、特に積乱雲をつくることが多いため、平地に比べて天気が変わりやすいということなのです。
 
いかがでしょうか?この問題の答えも、非常にシンプルです。

私がこの問題を受験生時代に初めて見たとき、少し恥ずかしくなりました。

なぜなら、「山の天気が変わりやすい」ことも「日本海側には雪が多い」ことも、知識として知ってはいたものの、「なぜ?」と疑問を抱き、理科の知識と結びつけて理解していなかったからです。

実際、当時の私は正解できませんでした。自分の理科の勉強の仕方を見直すきっかけにもなったので、私自身にとっても非常に思い出深い問題です。

大切なのは「知識」の応用

東大は入試問題について解答例を公表していないため、私の個人的な意見ではありますが、高度で複雑な解き方よりも、シンプルかつ簡潔に解いたほうが採点者の評価は高いのではないかと考えています。

実際、東大のアドミッション・ポリシーの「入学試験の基本方針」の中には、「知識を詰めこむことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視します」と書かれています。

大切なのは知識の量よりも「思考力」(画像:イメージ)
大切なのは知識の量よりも「思考力」(画像:イメージ)

小学生の知識レベルで対応できてしまう問題は、まさに「知識量」よりも「思考力」を重視する東大のアドミッション・ポリシーの象徴といえるかもしれません。

かつての私も、まさに勉強の結果は知識量で決まると思っていた一人です。しかし、知識量ではなく思考力を重視する東大の入試問題を通じて、学び方が大きく変わりました。

さて、この理科の問題の解答例です。東大は模範解答を公表していないため、あくまで私が参考になればと思い作成したもので、必ずしもこの通りに解答する必要はありません。

「山は標高が高い。標高が高くなればなるほど大気の気温が下がるので、水蒸気を含んだ湿った空気が山にぶつかると上昇して平地に比べて雲を、特に積乱雲をつくることが多くなるため」

小学生のお子さんがいる方は、ぜひ親子で一緒に本書の問題に挑戦してみてください。大切なのは知識の「使い方」と、その知識を使って問題を解く力です。学ぶとはどういうことかについて親子で一緒に話し合うきっかけにしてほしいです。

次は社会と国語の問題を取り上げたいと思います。

『小学生でも解ける東大入試問題』(SBクリエイティブ)
『小学生でも解ける東大入試問題』(SBクリエイティブ)

西岡壱誠
株式会社カルぺ・ディエム代表。
偏差値35から東大を目指すも、2浪する。3年目から勉強法を見直し、偏差値70、東大模試で全国4位となり、東大合格を果たす。東大入学後、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)の編集を行うほか、TBSドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」の脚本監修を担当。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(東洋経済新報社)など著書多数。

西岡壱誠
西岡壱誠

株式会社カルぺ・ディエム代表。
偏差値35から東大を目指すも、2浪する。3年目から勉強法を見直し、偏差値70、東大模試で全国4位となり、東大合格を果たす。東大入学後、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)の編集を行うほか、TBSドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」の脚本監修を担当。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(東洋経済新報社)など著書多数