“世代交代”が進む春の統一地方選挙を前に、2022年山形県で起こった「政治」の動きを振り返る。真夏の決戦となった参院選や、山形県内も悲しみに包まれた安倍元首相の銃撃事件。町議選では「議員のなり手不足」の問題も浮き彫りになった。

参院選 擁立巡り自民混乱

物価高対策や安全保障が焦点となった、7月の参議院議員選挙。山形選挙区では最多タイの5人が立候補し、1議席を争った。

国民民主党・舟山康江氏
国民民主党・舟山康江氏
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激戦を制したのは、国民民主の現職・舟山康江氏。実績のアピールはもちろん、原点とする「草の根」で支持を広げ、3選を果たした。

国民民主党・舟山康江氏:
国会のど真ん中でもう一度、みなさまの思いを受け止めながら議論をし、新たな未来に向けて発信し、地域こそが元気なんだ、地域こそが未来の可能性を秘めている、そんな社会を作っていきたい

敗れた自民は、独自候補がなかなか決まらず、方針も二転三転した。

予算案に異例の賛成をした国民民主への配慮もあり浮上したのが、山形選挙区での「不戦敗」案。さらには舟山氏を推薦する「相乗り」案も出る中、山形県連、さらには党本部からも反発の声があがった。

自民党県連・森谷仙一郎幹事長
自民党県連・森谷仙一郎幹事長

自民党県連・森谷仙一郎幹事長:
県連として国民民主(現職)を応援することは極めて厳しい。向こうも野党だと言っているのであれば、応援できない

自民党・森山裕総務会長代行(当時)
自民党・森山裕総務会長代行(当時)

自民党・森山裕総務会長代行(当時):
野党の公認候補を自民党が応援したことはない。誰かを擁立して戦わないと全国の選挙に影響する

結果的に元県議の大内理加氏の擁立が決まったが、このとき公示まで1カ月を切っていた。

自民党が擁立 大内理加氏
自民党が擁立 大内理加氏

自民党が擁立 大内理加氏:
このまま候補者を擁立できなければ、岸田政権を支持するみなさんの選択肢を失ってしまう。山形県の有権者だけがその議論の機会を与えられないということは、どうしても避けなくてはいけない

岸田首相:
大内理加氏に力を与えていただけますよう

自民党・茂木敏充幹事長:
この山形では大内理加しかいない

自民党・高市早苗政調会長(当時):
たのんまっせ!

次々と県内入りする大物議員からの強力な後押しがあってしても、遅れを取り戻すことはできなかった。これで自民は参院選で3連敗。2021年の知事選も含めると、全県を対象とする選挙で4連敗を喫したことになる。

自民党県連・遠藤利明会長
自民党県連・遠藤利明会長

自民党県連・遠藤利明会長:
「擁立が遅かった」という声が多くのみなさまからあった、それは私の責任

吉村知事と政権与党の距離感

選挙が行われる度に、「支援の形」に注目が集まるのが吉村知事だ。

吉村知事:
舟山康江氏とここにいるみなさんのご活躍を心から願っているし、期待している。みなさん頑張りましょう

信条とする「恩返し」を行動で示したのは、事務所に駆けつけ激励した1回だけだった。

首相官邸で山形県産のサクランボを試食した岸田首相
首相官邸で山形県産のサクランボを試食した岸田首相

岸田首相:
甘くてちょっと酸っぱくてこの微妙な組み合わせ。サクランボ良いですね

6月には首相官邸で、岸田首相に山形県産のサクランボの新品種「やまがた紅王」を手渡す一幕もあった。これまでの選挙では非自民勢力を支援してきた吉村知事だが、「安定した県政運営のため」と、政権与党との距離感を意識している様子が見え隠れする。

吉村知事:
(仮称)米沢トンネル・早期事業化に向け遠藤利明議員と連携した取り組みも行ってきている。様々な場面で協力し合うなどしっかりと連携しながら、県政運営に取り組んでいきたい

自民党と吉村知事の思惑が重なる1つが「山形新幹線」。自民党が開いた高速化に向けた勉強会に出席するなど、連携は日に日に強まっている。

自民党県連・遠藤利明会長:
知事はじめ県のみなさんにも一緒になって、この整備を進めていきたい

県は10月、JR東日本と仮称・米沢トンネルの整備に向けた覚書を交わすなど、「ビッグプロジェクト」は着実に前進している。

議員の“なり手不足”問題に明暗

2022年は5つの市町長選で選挙戦となった。また、2つの町議選で明暗が分かれたのは「議員のなり手不足」の問題だ。

庄内町議選で初当選・伊藤和美氏:
「選挙になってよかった」という人がいたので、自分で選ぶってすごく大事なんだと

庄内町議会では、懸案だった定員割れが解消した。しかし山辺町議会では、補欠選挙の結果、定員割れとなった。

山形県内も“政治とカネ”で揺れる

政治とカネの問題もあった。鶴岡市・皆川治市長の100万円授受問題では、百条委員会が行われた。

鶴岡市・皆川治市長:
私はしっかり収支報告書には記載しておくべきだったところではあるが、このまま受け取ったままにしておいて良いのかなと思ったのは事実

野川政文元県議の政務活動費不正受給問題では6月、懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。

野川政文元県議:
県民には心からおわび申し上げたい。今後の私の残された人生を反省と謝罪を繰り返しながら静かに生きてまいりたいと思う

安倍元首相銃撃 県内にも衝撃

そして、参院選の戦いの中、衝撃的な事件が飛び込んできた。

7月8日、岸田首相は選挙応援のため山形県を訪れていた
7月8日、岸田首相は選挙応援のため山形県を訪れていた

自民党県連・遠藤利明会長:
岸田首相は急用ができたので退席します

岸田首相が選挙応援のため県内を訪れていた7月8日。安倍元首相が奈良県で銃撃され亡くなった。

自民党県連・遠藤利明会長:
(安倍元首相が撃たれたという)正確な情報は分からないが、暴力は許してはいけない。大変怒りを覚えている

山形県内にも安倍元首相の遺影とともに献花台が設置され、献花台からあふれるほどの花が手向けられた。

献花台に訪れた男性:
きょう葬儀(と聞いて)、悲しいというより悔しくて、銃で撃たれてしまったのはとんでもないこと

献花台に訪れた男性:
やるせない気持ち。世界からこれくらいの弔問を受ける、本当に安倍元首相の貢献というのを改めて実感した

功績が称賛される中浮き彫りとなったのが、旧統一教会と政治との関係。悪質な献金を規制する新たな法律が成立するなど、被害者救済に向けた一歩が踏み出された。

統一地方選挙へ

一方、2023年春の統一地方選挙にも、その余波が及ぶかもしれない。

自民党県連・遠藤利明会長:
統一教会とは関係を絶つことが最大の課題。それを踏まえて公認等について決定をしていきたい

県議会は現職のうち10人が勇退の意志を固め、「世代交代」が進むことは必至だ。
年が明ければ再び政治決戦への前哨戦が始まる。

(さくらんぼテレビ)

さくらんぼテレビ
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