冬に重宝する、はんてん。12月1日から7年ぶりとなる節電要請がスタート。コロナ禍やウクライナ侵攻による燃料価格の高騰で電力需給のひっ迫が予想されるため、国はエアコンの設定温度を下げ、重ね着などの工夫を呼びかけている。そこで注目されているのが「綿入りのはんてん」。定番からおしゃれなデザイン、高機能タイプまで最新事情をお伝えする。

亡き母が縫った綿入りの「はんてん」…冬には欠かせない

「はんてん」を羽織る長野市松代町の山下園子さん(78)。

 
 
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山下園子さん(78):
これ母が作ったの、生きてれば106歳になる

寒くなるこの時期は母・里つさんが縫った「はんてん」が欠かせない。

山下園子さん(78):
何でも作った人なの。捨てられないんだよね、親が作ったのはね。暖かい(笑)。(暖房を)使わなくても大丈夫って感じね

高校生のお孫さんも愛用しているそうだ。

山下園子さん(78):
(孫が)勉強するのにちょっと寒いって言うから「おばあちゃん、はんてん持っていっていい?」って言うから、「いいよ」って持たせてやったの

寒い信州の冬に重宝されてきた綿入りの「はんてん」。今シーズンはこれまでと少々、事情が異なる。

昨シーズンを上回る売れ行き…背景に「おうち時間」、「節電」

長野市松代町の衣料品店「ファッションパーク カヤマ」。店の一角にはおよそ50点の「はんてん」が並んでいる。

購入した客:
家で着られるのね、寒くなってきたから。いつもお風呂入った後、着るんだよ

こちらの店では昨シーズンも100着ほど売れたが、今シーズンはそれを上回るペースで売れている。コロナ禍で「おうち時間」が長くなっていることに加え、節電意識も働いているようだ。

ファッションパーク カヤマ・香山篤美社長:
おうちでみんなゆったりするっていう生活が長くなってきたんで、おうち生活を充実させようと。それには、はんてんが見直されてきてるのでは。物価高の折ですし、電気代も上がるし、灯油代も上がるし、そういう中で、はんてん一枚を手元に置くだけで随分と節約もできると思う

様々な種類…久留米はんてん、五分袖タイプ、キルト生地など

店の一番人気は、落ち着いた和柄のいわゆる「久留米はんてん」。(5980円~9980円)

(記者リポート)
着てみると重量感があって、包まれている心地もして、体がすぐに温まるように思います

他にも袖が短く動きやすい五分袖タイプや暖かいキルト生地のもの、かわいい動物などがプリントされたものも人気だ。

ファッションパーク カヤマ・香山篤美社長:
お仕事やってる時とか、勉強やる時とか、キッチンでちょっとお料理する時とか、こういったものがあると寒さよけにもなるし、ちょっとおしゃれでいいかなって感じで

「一枚着てるだけで全然違う」

名古屋から帰省中の客
名古屋から帰省中の客

名古屋から帰省中の客:
これもいいですね、迷っちゃいます

はんてんを品定めしているのは、名古屋から帰省中の女性。

名古屋から帰省中の客:
これ一枚着てるだけで全然違いますからね。かわいらしいのもあるし、半分の袖の物とか、いろいろあって目移りしちゃいます

1時間ほど悩んで、久留米はんてんとキルト生地の五分袖はんてんの2着を買った。

名古屋から帰省中の客:
とてもかわいい柄に出合えたので、2着も買ってしまいました。エアコンつけなくても結構暖かいので(冬を)乗りきれると思います

軽い…アウトドアブランドの「はんてん」

こちらはモンベル長野店。アウトドアブランドも「はんてん」を扱っている。

モンベル長野店・中村肇店長:
非常に軽量で暖かく、ご好評いただいてる商品になります

中綿にダウンとフェザーを使った「ダウン プリント ハンテン」(税込1万3530円)

最大の特徴は軽さで、300グラムほどしかない。

(記者リポート)
着心地がとても軽くて、体も動かしやすいです。また、中にダウンがしっかりと詰まっているのでとても暖かいです

モンベル長野店・中村肇店長:
非常に軽量にできてるんですね。ですので長時間着たとしても肩こりもしづらく、疲れにくいというお声もたくさんいただいております

モンベル長野店・中村肇店長
モンベル長野店・中村肇店長

実は2010年から販売していて毎年、欠品になるほどの人気商品。最近は購入者の傾向も変化しているそうだ。

モンベル長野店・中村肇店長:
年を召された方が購入されることが多かったんですけど、テレワークが主流となった今、若い方も仕事用にってことで購入されます

ノースリーブのちゃんちゃんこタイプもある。

モンベル長野店・中村肇店長:
はんてんとちゃんちゃんこって昔からある日本の防寒着だと思うんですね。ちょっと独特なシルエットなんですけど、ここには知恵が込められてると思ってまして。そこに弊社の技術を駆使してより暖かく、より軽く。それでいて作業だったり仕事ができるので、幅広く使っていただけるかなと思います

シャツづくりの技術で…サスティナブルとファッション両立

県内の企業も「はんてん」に着目。千曲市のシャツメーカー「フレックスジャパン」が手掛けているのが、「半纏(Japanese short coat)」(3万8500円)だ。

開発担当・桜井太河さん:
すっきりとしたノーカラーのジャケットコートみたいな形で着ることができるデザイン。(和柄などは)なかなか若い人には街着、外着には難しいだろうなというのがあって、老若男女問わず着ていただけるようなはんてんに仕上げた

開発担当・桜井太河さん:
開発担当・桜井太河さん:

開発したのは、社員の桜井太河さん(34)。2020年、創業80周年の取り組みで、サスティナブルとファッションの両立などをテーマにしたブランド「co:do(こどう)」を立ち上げた。

その第1弾が「はんてん」。
生地には、毛織物の産地・愛知県一宮市の毛七(けしち)と呼ばれるリサイクルウールを使用。シャツづくりで培った技術で体にフィットする形に縫い合わせている。

開発担当・桜井太河さん:
2枚の生地で、生地の間に空気が閉じ込められるようになっているので、保温性が向上している。中綿を使う必要がないので見た目にもすっきりしながら、保温性は中綿が入っているものにも負けないものになってる

開発担当・桜井太河さん
開発担当・桜井太河さん

地域との結びつきにもこだわり、内ポケットには、松代焼のボタンを使用している。昨シーズンから本格的に販売を始め、幅広い世代から支持されているという。

開発担当・桜井太河さん:
(はんてんは)さっと手に取って、羽織って外に出る流れがスムーズにいくアウターだと思う。日本のファッションもおもしろいんだなと思ってもらえるきっかけになれば

さっと羽織れて腰まで暖かい「はんてん」。節電の呼びかけもあり、この冬も多くの人に重宝されそうだ。

(長野放送)

長野放送
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