「トランプティ・ダンプティ」という言葉と共に、レンガ造りの塀の上に危なっかしい格好でドナルド・トランプ前大統領が座っている戯画が10日発行の米国の大衆紙「ニューヨーク・ポスト」紙一面に広がっていた。

英語圏の子どもの誰もがあやされて育った「マザーグース」で歌われる童謡「ハンプティ・ダンプティ」をもじった皮肉だ。

トランプ支持だったニューヨーク・ポスト紙がトランプをからかう戯画掲載(10日)
トランプ支持だったニューヨーク・ポスト紙がトランプをからかう戯画掲載(10日)
この記事の画像(6枚)

オリジナルの歌詞はこうだ。

「ハンプティ・ダンプティ塀の上に座っていたら、ハンプティ・ダンプティ勢いよく落ちたよ。王様の馬や家来たちもハンプティ・ダンプティを元に戻せない」

「ニューヨーク・ポスト」紙の戯画の横にはこうある」

「ドン(親分ートランプ)は(移民を締め出す)塀も完成させられなかったが、そこから勢いよく落ちたよ。共和党の男たちは党を元に戻せるだろうか?)

いうまでもなく今回の中間選挙で共和党が予想外に振るわず、その責任がトランプ前大統領にあるという批判を戯画化したものだが、それがこれまではトランプ前大統領を全面的に支持し、その3日前には「ドナルド・トランプ、今夜にも2024年の大統領選に再出馬表明か」と期待感を込めて伝えていた新聞だったので驚いた。

同紙は9日にも選挙結果を総括した紙面で、フロリダ州知事に大勝したロン・デサンティス氏とその家族が巨大な星条旗の前で祝福を受ける写真を「未来だ」というキャプションと共に一面に掲げ、共和党はトランプからデサンティスの時代になると示唆していた。

「デサンティス氏こそ未来だ」ニューヨーク・ポスト紙(9日)
「デサンティス氏こそ未来だ」ニューヨーク・ポスト紙(9日)

トランプ氏への支持を考え直した主要マスコミはこれだけではない。「ウォールストリート・ジャーナル」紙は9日「共和党の最大の敗者はトランプだった」という論評記事を掲載し、中間選挙での民主党が勝利したのは「(2020年の大統領選の結果を否定し、民主主義を危うくしている)トランプ氏の存在を争点にしたことと、トランプ氏もそれに加担するような言動を繰り返したからに他ならない」と批判している。

「共和党の最大の敗者はトランプだった」ウォールストリート・ジャーナル紙(9日)
「共和党の最大の敗者はトランプだった」ウォールストリート・ジャーナル紙(9日)

「ウォールストリート・ジャーナル」紙は基本的に共和党よりで、トランプ前大統領を支持する報道を続けてきたが、同じ日の紙面には「デサンティス、フロリダから津波を起こす」という記事が掲載されている。

さらに、トランプ支持で知られていたマスコミに「FOXニュース」テレビがある。数ある米国のテレビ局の論調が反トランプの中でひとり前大統領を支持してきたが、9日そのホームページにこういう見出しの記事が掲載された。

「ロン・デサンティスこそ共和党の新しい指導者。党はドナルド・トランプを抜きに前進する」

FOXニュースの見出し(9日)
FOXニュースの見出し(9日)

筆者は「FOXニュース」のコメンテーターのリズ・ピークさんで、やはり共和党はトランプ氏ではなくデサンティス氏の下で再建できると論じている。

「FOXニュース」にはショーン・ハナティ氏のようにトランプ氏の代弁者のようなキャスターもいるが、今のところこの問題では沈黙を保っていて同社の編集方針が変わったのではないかと感じさせるものがある。

実は、「ニューヨーク・ポスト」紙も「ウオールストリート・ジャーナル」紙も「FOXニュース」も、メディア王と言われるルパード・マードック氏の所有下にある。編集方針も同氏の考えに沿っていると言われるので、今回の「トランプ切り」も同氏の意向によるものではないかと米マスコミ界をにぎわせている。

トランプ前大統領
トランプ前大統領

それはともかく、これで米国でトランプ氏を支持する主要マスコミは無くなったも同然で、トランプ氏は2024年の大統領選に出馬を表明してもその支持を広げる上で大苦戦を強いられことになりそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】