――このほか、施設での備えなどはしている?
防災用の備蓄倉庫を、浸水する危険性のもっとも低い最上階に設けています。施設は宿泊機能もあるので、各宿泊室にも防災備蓄セットを2つずつ保管しているほか、建物の敷地内は火気厳禁、禁煙とし、調理器具も電気機器のみとしております。
苦労もあるが…木造は“森の新陳代謝”にも役立つのでは
――高層建築を木造で建てることのメリットは?
さまざまなところであったように思います。意匠(デザイン)としては、木造の調温、色、質感が健康的にも精神的にもよい影響を与えてくれると感じました。構造的には、木材は軽量のため、条件によっては杭を使わなくてもよいなどのメリットが出てくると思いました。
建設工程の進み方は、鉄骨造と同等か少し遅いくらいです。現場は騒音や臭気がなく、ごみやほこりも少ないため、非常にきれいで、深夜に作業を進めるようなことも削減できました。
――木造で高層建築することで、苦労したことは?
建築材料の保管や湿度管理ですね。今回は工場で作り、現場で組み立てるような形でした。工場だと乾燥状態で保管できますが、現場では湿度が違ったり、雨にぬれたりします。木材は水分で膨らんだりそったりするので、対策として様々な養生をしました。
――木造の高層建築は選択肢として普及しそう?
他の工法と組み合わせて構造体に木材を使用する「ハイブリッド木造」や、構造体は鉄骨・コンクリートにして、表層には木材を潤沢に使う「木質化」などが中心になっていくのではないかと思います。森林は二酸化炭素を吸収して酸素を生みますが、成長しすぎると二酸化炭素の吸収が減るため、50年程度の樹齢の木を使い、苗木を植えていく“森の新陳代謝”が必要です。
そのため、より多くの木材需要を生んでいく必要があります。また、大規模な木造建築にも対応できる供給体制を構築していく必要もあります。Port Plusが国内の木材流通の改善のきっかけにもつながればとも思います。
今回はPort Plusに注目したが、木造の高層建築は災害に備えるため、材料や構造などを工夫しているようだ。このような形での木材の活用は広がっていくかもしれない。
