高層建築に木造を活用する動きが広がっている。他工法と組み合わせるなど形はさまざまだが、東京ではビルが銀座にできたり、丸の内などでも建設計画が進んでいたりする。

木材を一戸建てに使うのはよくあるが、高層建築となると珍しい。木のぬくもりを感じられるし、森林資源の活用などにもつながりそうだ。

その一方で気になるのが、災害への対策。鉄骨、鉄筋、コンクリートなどに比べると、木造ということで心配に思う人もいるのではないだろうか。

高さ約44メートル“純木造ビル”が完成

こうした中で2022年3月、横浜市に純木造の高層ビルが完成した。総合建設会社の「大林組」(東京・港区)が建てた「Port Plus」で、地上11階建て、高さ約44メートル。

純木造で建設された「Port Plus」(提供:大林組)
純木造で建設された「Port Plus」(提供:大林組)
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1990立方メートルの木材を使用し、表層だけではなく、柱・梁・床・壁といった、主要な構造部の全てが木造になっている。同規模の建物を鉄骨造で建てた場合と比べると、コストはやや上回ったものの、1700トンのCO2削減効果があったという。

表層だけでなく内部も木造だ(提供:大林組)
表層だけでなく内部も木造だ(提供:大林組)

Port Plusは同社の社員用研修施設で、宿泊にも使えるとのことだが、災害への備えはどうなっているのだろうか。そしてなぜ、木造なのか。大林組の担当者に聞いてみた。


――Port Plusを建設した狙いを教えて。

弊社は中長期のビジョンとして、再生可能エネルギー事業の推進など、環境に配慮した社会づくりに取り組んでいます。研修施設の建て替え計画は以前からありましたので、新たなビジネスが生まれることにもつながると考え、チャレンジしました。


――木造の高層建築は珍しいが、難しいものなの?

日本は地震が多いので、構造体(建物の骨組み部分)の接合部分に剛性が必要になりますし、クリープ現象(木材の変形が時間を経て大きくなること)、床の遮音性能にも配慮しなければなりません。建設コストや現場での雨水対策も課題です。こうしたところが障壁だったと思われます。