米とともに、新潟が誇ってきた日本酒。
しかし、酒離れなどにより、取り巻く環境は厳しくなってきている。こうしたなか、柏崎市で廃業予定の酒蔵を立て直し、新たな可能性を模索する若手後継者を追った。

老舗酒造の6代目 若者・女性をターゲットにしたブランド開発

7月16日、東京・豊洲で開かれたのは日本酒を楽しむイベント。
全国から集まった8つの蔵元が自慢の日本酒を振る舞う中、絶えず訪れる客に自慢の日本酒を売り込むのは、柏崎市で1804年から続く酒蔵「阿部酒造」の6代目・阿部裕太さん(34)。

阿部酒造6代目 阿部裕太さん
阿部酒造6代目 阿部裕太さん
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阿部酒造では淡麗辛口の「越乃男山」をメインに販売してきたが、阿部さんが製造責任者となってからは“圧倒的にうまい”をテーマに、若者や女性に向けた新ブランドを次々と立ち上げている。

阿部酒造 阿部裕太さん:
きょうはラベル、エチケットからもすごく日本酒から逸脱したような形で、カジュアルに楽しんでもらえればいいかなと思ったので、そういうラインの「★(スター)シリーズ」という一等星の名前がついているものを持ってきた

阿部酒造の「★シリーズ」
阿部酒造の「★シリーズ」

この日、阿部さんが持ってきたのは★シリーズの「VEGA(ベガ)」と「REGULUS(レグルス)」。東京でも、その評判は上々の様子。

試飲した人:
酸味もあって、甘みもあって、すごく飲みやすい。日本酒っぽくない感じで、すごくおいしい

試飲した人:
本当に飲みやすくて、あまり日本酒を飲んでない女性にもおすすめできる

評判が良い阿部酒造の日本酒
評判が良い阿部酒造の日本酒

イベントの主催者も、その味に太鼓判を押す。

イベントの主催者:
日本酒のトレンドがどんどん変わっているなと思う部分として、やはり毎日飲む晩酌酒よりは、高くて特別な日に飲めるお酒を求めていると感じる。そういう特別なシーンの一つに、阿部酒造さんというのは必ず選ばれる一本

お客さんに商品を紹介する阿部さん
お客さんに商品を紹介する阿部さん

阿部酒造 阿部裕太さん:
自分たちの造っているお酒が「すごくおいしい、おいしい」と言ってもらって、「いつも飲んでいます」とかコメントを頂けるとやっぱりうれしい

経営厳しく廃業予定も…「日本酒造りの面白さ」気付き6代目に

順風満帆そうに見える阿部酒造だが、日本酒を取り巻く環境の変化に大きく影響を受けていた。

阿部酒造
阿部酒造

阿部酒造 阿部裕太さん:
最初は酒造りを継ごうというのは全くなかった。5代目の社長の代で「蔵は辞めようか」という話をしていたので

最初は継ぐ気がなかったという阿部さん
最初は継ぐ気がなかったという阿部さん

1973年に170万キロリットルを超えていた日本酒の国内出荷量。この好調な日本酒の出荷を背景に、酒蔵としての規模が小さかった阿部酒造は、その業態を酒造り中心から販売中心へとシフトさせていく。

日本酒の国内出荷量
日本酒の国内出荷量

しかし、その後 日本酒離れが進んだことで、国内出荷量は2013年にはピーク時の3分の1に。阿部酒造も厳しい経営を余儀なくされていた。

こうしたなか、東京の大学を卒業後、新潟には帰らずIT企業に就職していた阿部さん。
しかし、社会人としての付き合いの中で様々な特徴を持つ日本酒と出会うこで、次第に酒造りへの意欲が芽生えたと言う。
そして2014年、5代目である父の反対を押し切って地元に戻り、酒蔵を継ぐことを決意。

阿部酒造 阿部裕太さん:
僕が日本酒を造りたくなった理由は、日本酒というジャンルの中で本当に色んな味わいだったり、香りだったり、造り方があって、とても広範囲にわたって表現できるというところに面白さを感じたから

地元の米を生かした酒造りも…伝統つなぐため続く挑戦

「日本酒が苦手な人にも様々な味わいがあることや、そのおいしさを知ってほしい」と、米のうまみと酸味を生かした日本酒や、アルコール度数の低い日本酒造りなどに取り組んできた。
さらに、主食用米を作る農家がほとんどの柏崎市で、「酒米を作ってほしい」と農家に直談判。各地域の田んぼの酒米ごとに日本酒を造り、それぞれの地名を名前に冠した「ほ場別シリーズ」も立ち上げている。

酒米農家 上杉英之さん:
地域活性化にもつながるし、なによりも地元の方がそれを喜んで、お酒を買ってくれる。うちとしても、お米の作りがいがある

酒米農家 上杉英之さん
酒米農家 上杉英之さん

阿部酒造 阿部裕太さん:
僕らはお米を使ってお酒を造る。柏崎自体もおいしいお米を作っているし、酒蔵としてはそれをお酒で伝えたいなという思いがずっとあった

その消費の落ち込みから、今も厳しい状況にある日本酒業界。こうした逆境を乗り越え、日本酒の伝統をつなぐため、阿部さんの挑戦は続く。

日本酒を次世代へ
日本酒を次世代へ

阿部酒造 阿部裕太さん:
良くも悪くも、日本酒という言葉に対してイメージはやっぱり持たれる。そういったものを外していこうかなと。やるからには、次へのバトンを渡せる準備はしていきたいと思う

(NST新潟総合テレビ)