愛媛・松山市の中心地、銀天街商店街で親しまれてきた「明屋(はるや)書店 松山本店」が、2月20日、75年の歴史に幕を下ろした。
利用客から別れが惜しまれつつ、商店街でまたひとつ老舗のともしびが消えた。

訪れた人:
子どもの時以来、来てましたので、残念です

松山市の銀天街商店街にある「明屋書店松山本店」。
2月20日、75年の歴史に幕を閉じた。

銀天街商店街で親しまれてきた「明屋書店松山本店」
銀天街商店街で親しまれてきた「明屋書店松山本店」
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この本店が今の場所にオープンしたのは、戦後間もない1946年。

1号店のオープンは戦後まもなくの頃
1号店のオープンは戦後まもなくの頃

その後、明屋書店は1都12県で80店舗以上を展開する、松山発の大規模な書店に成長を遂げた。

しかし、本店はエレベーターなどはなく建物の老朽化が進んだため、この場所での営業を断念。
郊外にある「中央通店」に本社の機能を移し、3月にリニューアルオープンする予定だ。

建物の老朽化が進み…
建物の老朽化が進み…

店内には75年の歴史があちこちに…

閉店へ向けては、営業と同時に並行して準備。
2月13日、鵜篭正人(うごもり・まさと)店長が取りかかっていたのは、本のコーナーを示すポップを外す作業。

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
お客さまへの案内とか、商品がどこにあるのかっていう(ポップ)を撤去していくと華やかさがなくなってきますので、寂しい思いもありますし、実感が一枚一枚はがすたびに、もうすぐ閉店なんだなと

店内に詰まっているのは75年の歴史。

老舗出版社の看板があちこちに
老舗出版社の看板があちこちに

老舗の出版社の看板があちこちに見られる。

歴史の詰まった「お宝」たち
歴史の詰まった「お宝」たち

店長も、子どものころから本店を利用していたようだ。

(Q.この看板はすごい古いですよね?)
明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:

私が小さいころ、本店に買い物に来た時からあったので、すごく古い出版社さんの紹介の看板だと思います。30年以上は経っていますね。それをお目当てに、お客さまも閉店する前に写真を撮りに来られたり、結構いらっしゃいますので、「お宝」というような感じじゃないかなと思います

ただ、この「お宝」は取り外しができず、次の業者に処分が委ねられる。

閉店は、刻一刻と迫っている。

銀天街の“シンボル”の調整もきょうで最後

そして、20日は営業最後の日。午前中から別れを惜しむ多くの客が訪れた。

訪れた人:
(子どもが)ゲーム類の本が見たいっていうので来てる。高校時代の頃にはちょいちょい来てたんですけど、なくなるとなればやっぱり寂しい

店内にはメッセージを書き込むコーナーも。

メッセージを書いた人:
「長い間本当にありがとうございました」と書かせていただきました

壁一面につづられているのは、感謝の言葉。

街の人から閉店を惜しむメッセージ
街の人から閉店を惜しむメッセージ

メッセージを書いた人:
高校生ぐらいの時とか、勉強の時にボールペンとか参考書を買いに来てましたね。銀天街行ってる時に目に入ってたので、ちょっと寂しいところもあるんですけど。松山の方の憩いの場というか、気軽に立ち寄れるような所だったと思うので

街の人にとっても気軽に立ち寄れる場所。
その顔になっていたのが店先の時計だ。

商店街のシンボル
商店街のシンボル

「只今の正確な時刻」をうたっているが…

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
10秒ぐらい違ってました

これまでどうやって時刻を直していたのかというと…

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
私が日曜日に週一で合わせてたんですけど。やはり歴史のある時計なので、5秒とかはズレてくるっていう感じ

この作業もこれが最後
この作業もこれが最後

時刻は、歴代の店長が操作盤で「正確な時刻」に微調整していた。
ただ、この作業も20日が最後となった。

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
大げさな話なんですけど、銀天街のシンボルでもあると私の方で勝手に思っていますので。
最後なので手が震えたんですけど、75年間刻まれた時計の最後の調整が終わりました。あとは一日何事もなく終わってくれたらと思います

誇りと精神は新たな店に受け継がれる

一方、カウンターでは、接客の合間にスタッフがある作業に追われていた。

店舗スタッフ:
コミックの新しい「今月出ましたよ」っていうお知らせのポップ。(移転先の)中央通店のコミックの売り場で使うようになると思います

(Q.閉店の準備もしながら?)
店舗スタッフ:

変な感じがしますね

閉店と並行してリニューアルオープンの準備も着々と進む。

そして、時刻はついに閉店の午後8時。

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
この銀天街で開店してから長らくご愛顧承りまして、改めて心から熱く御礼申し上げます。
本当にありがとうございました

閉まっていくシャッター。
75年の歴史に幕が下りた。

75年の歴史に幕が下りた
75年の歴史に幕が下りた

明屋書店松山本店・鵜篭正人店長:
ああ、これで閉店してしまうんだ。長い歴史の明屋書店の中の1ページが終わってしまう。その1ページに私が少しでも携わることができたっていうのは、今後の“明屋人生”の中でひとつの誇りになるかなと思います

地域の人々に愛されながら、本の楽しさや魅力を伝えてきた松山本店。
その誇りと精神は、3月にニューアルオープンする新たな店に受け継がれる。

(テレビ愛媛)

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