2021年7月に編集部が取り上げた“ラーメン店が1軒もない町”を覚えているだろうか。栃木県茂木町という自治体で、ラーメン専門店の出店を求めるSOSを出していた。5年前に専門店が閉店して以来、近くても車で片道20分はかかる町外にしかなかったという。

(参考記事:「1軒もありません」栃木県茂木町がラーメン専門店“急募”に反響…既に家系や二郎系から応募も?今後の展開を聞いた)

「ふるさと起業家支援補助金」を活用した本気の誘致に乗り出していた茂木町に朗報が。
そんな誘致活動が実を結び、12月20日に専門店ができたのだ。事業者は「特級鶏蕎麦 龍介」(本店:茨城県土浦市)、鶏だしの濃厚スープが魅力の人気店。そのフランチャイズ店となる「特級鶏蕎麦 龍介 もてぎ」が、町中心部の近くに開店した。

「特級鶏蕎麦 龍介 もてぎ」の外観とお客(画像提供:龍介)
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お店は空き店舗を改装したもので、町にとっては久々の専門店となる。カウンター8席と6人がけテーブル席を4つ用意しているが、待望のラーメン店とあって早くも行列ができているという。

栃木県内でのプロデュース店も成功の実績

茂木町の募集は2021年6月下旬~7月下旬に行われ、複数の事業者から応募があったという。まずはどのように決定したのか、その選考過程を茂木町商工観光課の瀧田隆課長に聞いた。

ーー町の募集にどんな店から応募があった?

募集への問い合わせが24件、このうち、実際に茂木町まで内覧いただいたのが14件。さらに実際に事業計画書を出して応募いただいたのが5件となります。濃厚鶏白湯系のお店、濃厚魚介豚骨のお店、醤油中華そば、貝だし汁中華そばのお店から応募がありました。
 

ーー選考の過程と選考基準を教えて。

一次審査として、商工観光課や商工会が8月16~20日に2つのお店を選ばせていただきました。事業計画書などから経営面や見通し、3年後までの運営計画などを審査させていただきました。

最終審査は8月下旬、町長、副町長、商工会長が残った2つのお店の方と直接面談しました。茂木町での経営の考え方、町の特産品を使った戦略があるか、町経済の波及効果、本人の熱意などを聞いて、8月30日に採用を決定した形になります。

ラーメン専門店急募のチラシ(提供:茂木町)

ーー特級鶏蕎麦 龍介に打診した決め手は?

募集にあたり町側も「茂木の立地で本当にできるのか」という思いがありました。龍介様のお話を聞いたとき、本店での実績があり、栃木県内でのプロデュース店も成功を収めていたことから、龍介様で行こうとなりました。

「特級鶏蕎麦 龍介」本店サイトより(画像提供:龍介)

ーー念願のラーメン店、人々からの反応は?

誘致が決まったときから、人に会うたびに「いつオープンするんだ」と聞かれました。開店以降も多くの人が訪れているので、皆さん待ち望んでいたのではないかと思います。私も食べましたが、以前に龍介様の本店で食べた味が茂木町で食べられたことに感動しました。

これまでは行こうと思っても車で1時間ちょっとかかったのが、今は町役場から歩いて2~3分の場所にあります。ただ、行列がすごいので、私は「お昼の休憩時間内に間に合わない」とあきらめて夜に行きます。そういうつらさはありますね(笑)。

社長「茂木は水がいい。本店よりもおいしいものが作れるのでは」

悲願とあって大満足のようだが、ラーメン店側はなぜ、茂木町に出店しようと思ったのか。そしてどんな味が楽しめるのか。続いて、龍介の代表・浅野明仁社長にお話を伺った。

ーー茂木町にお店を出店した理由を教えて。

SNSで茂木町が誘致したいという情報が流れてきたことがきっかけです。フランチャイズ事業は検討していたのですが、ラーメン店がないと知り「ならば、応募してみよう」と思いました

茂木町には訪れたことがなかったのですが、SNSで見た次の日に行くと、水も空気もすごくよかったんです。麺作りにもスープ作りにも水は欠かせません。水が良ければ食材もおいしい、ラーメン店としてのメリットがあると思いました。

浅野明仁社長(画像提供:龍介)

ーー選考を通過して出店要請が来た時の気持ちは?

当社の思いが伝わってよかったです。最後の面接では、茂木は水がいい、環境もいい。この環境であれば本店のラーメンよりもおいしいものが作れるのでは、という思いを伝えました。町の地域活性化を担うことにもつながればと思いましたね。
 

ーー「特級鶏蕎麦 龍介 もてぎ」の魅力を教えて。

私たちは鶏専門のラーメン、つけ麺を販売していて、もてぎ店でも「栃木しゃも」を使った、鶏白湯、鶏清湯のスープが魅力です。お勧めは「龍介つけ蕎麦」で、つけ汁には濃厚な鶏の旨味と独自にブレンドした“かえし”を使っています。もう一口食べてみたいと思うメニューです。ラーメン「純鶏蕎麦」もお勧めです。こちらは鶏を炊いたスープ、だしを堪能できます。

龍介つけ蕎麦(画像提供:龍介)

ーーお店のにぎわいはどんな感じ?

日ごとにお客様が増えています。来店客数はオープン日が1日で約270人でしたが、最近だと12月26日は300人以上が来てくれました。行列もできましたし、大盛況となっています。

炭火焼きのチャーシューも魅力だ(画像提供:龍介)

ーー今後はどんな店にしていきたい?

地域の皆さんに愛されるお店にしたいですね。茂木とせっかく関われたので、町と協力して地域活性化に担えるものがあれば。ラーメンで盛り上げていきたいですね。

「特級鶏蕎麦 龍介 もてぎ」のメニュー(画像提供:龍介)

浅野さんによると、龍介では食後の限定スイーツとして、茂木町の名産品・ゆずと酒かすを使った「もてぎシェイク」を開発中だという。町側は機会があれば、他のラーメン専門店の出店も誘致したいとのことだ。“ラーメン店が1軒もない町”がラーメンの町として、有名になる日がくるかもしれない。