2021年10月、沖縄テレビがアメリカ情報公開法で入手した、2020年4月に普天間基地で起きた泡消火剤の流出事故の際の基地内を捉えた写真。

この事故の後、基地内で初めて国・県・アメリカ軍による土壌調査が行われ、排水路周辺では有機フッ素化合物「PFOS」が、最も高い値で1キログラムあたり3万5000ナノグラム検出された。

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しかし、この土壌汚染は一過性のものではない。その”蓄積性”を示すのが基地周辺の湧き水で確認されている高濃度の値である。この水を使っている土壌にどれだけPFOSが蓄積されているのか、沖縄テレビでは独自の調査を実施した。

国内で土壌に関する基準値はない

普天間基地のフェンス沿いにある湧き水、喜友名泉(チュンナガー)。琉球王朝時代から喜友名区の人々の暮らしを支えてきた泉は、国の有形文化財にも指定されている。

喜友名区自治会 知念桂子会長:
昔からここはお正月、赤ちゃんが生まれた時など、常に生活とマッチしているカー(湧水)だと思うんですね。なくてはならない場所だと思っています

集落に水道が整備される前の1957年にポンプで汲み上げられるようになった水を、今でも約100世帯が自宅の庭に引いて利用している。その水から高濃度のPFAS(有機フッ素化合物の総称)が検出されている。

2020年度の県の調査では、国の暫定指針値「1リットルあたり50ナノグラム」の32倍にあたる1600ナノグラムが確認されている。これは、土壌に染み込んだ物質が地下水を汚染しているためとみられている。

ただ現在、国内には土壌に関する基準値はなく調査も行われていないため、京都大学の原田浩二准教授はこう指摘する。

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
地下水を汚染する可能性を考えた(土壌の)基準値を早く定める必要があると考えています

ひとつの目安になるのが、アメリカ環境保護庁が定めた1キログラムあたり378ナノグラムという値だという。

土壌調査で高濃度のPFOS検出…米基準の約22倍も

今回、沖縄テレビは喜友名区の住民の協力を得て、喜友名泉(チュンナーガー)の水をまいている家庭菜園2カ所と水道水、雨水を利用している家庭菜園のあわせて4カ所の土壌を採取し、原田准教授に分析を依頼した。

その結果、長年チュンナーガーの水を使ってきた家庭菜園から最も高い、1キログラムあたり8500ナノグラムのPFOSが検出された。これはアメリカで安全とされる値の約22倍に上る。

このほか別の有機フッ素化合物「PFOA」なども検出されている。そして、もうひとつの畑でもPFOSが5900ナノグラムと高い値を示し、ここで採れた葉野菜からはPFOSが100ナノグラム検出された。

こうした食物から摂取するPFOSの体への影響について、原田准教授は「どれだけの量を食物や水道水から摂取しているのか総合的な評価が必要で、データが不十分」とした上で次のように述べた。

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
どれだけ食されるか、こういったところから実際、血液への蓄積などへの影響は考えていく必要があると思っております。いかにPFOSの摂取を下げていくことができるのか、このような観点が必要かと

平良いずみアナウンサー:
こちらの家庭菜園では、通常の水道水を使用しているということです。こちらからも土壌を採取します

水道水を使用している家庭菜園ではPFOSが760ナノグラム、雨水を利用した家庭菜園は380ナノグラムと、いずれも喜友名泉の水を使用している場所と比べて値は各段に低くなっていることがわかった。

命を守るための調査と対策を

この数値を知った住民と原田准教授とをオンラインで結び、疑問点を直接聞いてもらった。

喜友名区自治会 老人会長 新垣清凉さん:
野菜を育てるために使っている水なもんですから、野菜に含まれている部分が非常に気になるんですね

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
飲むということだけを考えるんじゃなくてですね。こういった水を利用するということがあるので、そこも含めた対策を考える必要がある

喜友名区自治会 老人会長 新垣清涼さん:
人間の皮膚への影響はどうなんでしょうか?

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
PFOSはそこまで皮膚を通りやすいわけではないんですね。(喜友名泉の水を)使った後に、また水道などで手を洗うとことをしている限り、問題点はそこまで大きくはないと思っております

他にも健康への影響を懸念する声があがり、原田准教授は「水の基準値が設定されたのは、PFOSが胎児や子どもの成長に悪影響を及ぼすことがわかってきたため」だとして、体内への蓄積について説明した。

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
10年、20年ずっと取り続けていくことによって、血中濃度が上がっていくというのが問題になってます。あまり日常的に摂取すると上がってきてしまうというところは、注意しないといけなません

話を終えた住民たちからは、国や県に対して命を守るための調査と対策をとってほしいとの切実な声があがっていた。

喜友名泉を管理する 知念参雄さん:
使っている私たちが悪いのではなくて、根本的に水を汚している根っこを捕まえないといけない。それを一番願っているんですけど

喜友名区自治会 老人会長 新垣清涼さん:
危険だと言われている物質が含まれている。その原因を断つための方策を国は、国民を守るためにしっかりやってほしいと思います

人々の暮らしを支えてきた水を守り、次世代へとつないでいくためにも詳細な土壌調査と汚染対策が求められている。

(沖縄テレビ)

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