「処理したから安全」と公共の下水道へ放出

2016年、沖縄県は突如、県民45万人に供給されている水道水に発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」が含まれていたと発表。それは、国際条約で製造・使用が禁止された化学物質だった。

汚染源は米軍基地だとみられているが、5年経った今なお、日米地位協定が壁となり基地内への立ち入り調査すら行われていない。

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目に見えない汚染物質に県民が不安を募らせる中、2021年8月26日、アメリカ軍は日米で協議中に宜野湾市・普天間基地からPFOS・PFOA(総称してPFAS)を含む汚染水を「処理したから安全」として公共の下水道へ放出。

自然界でのPFASの分解には数千年かかるとされ、“永遠の化学物質“と呼ばれる物質が最終的には沖縄の海に流された。

さらに9月、防衛省は普天間基地で保管されていた汚染水を日本側で引き取り処分することを決めた。私たちの1億円近い税金を投入して…。自分の住む土地に汚染物質を流されたら、あなたは黙っていられるだろうか。

防衛省は10月7日までに、普天間基地に保管されていた有機フッ素化合物「PFAS」を含む汚染水、約36万リットルを引き取る作業を終了したとしている。しかし、この間、防衛省は事実の解明に不可欠な汚染の濃度の検査を行っておらず批判の声があがっている。

防衛省は濃度検査せず「税金投入ならば説明を」

8月26日、米軍はPFASを含む汚染水を公共の下水道へ放出。その際、1リットル当たり2.7ナノグラム以下に処理したとして安全性を強調するも、宜野湾市の調査では下水から670ナノグラムが検出された。これは国の指針値の約13倍にあたる。

事実の解明には、濃度の検査を行うことが不可欠だが、防衛省は沖縄テレビの取材に対し「米軍から情報を得ている」として、独自の検査を行っていないことがわかっている。

この対応について、防衛省に調査や情報の速やかな公開などを求めてきた、子育てをする女性は…

水の安全を求めるママたちの会 山本藍代表:
事実をまず把握して、そのためにはもちろん数値も測らないといけないでしょうし、誰に頼ったらいいんですかという気持ちですね。どうしたらいいんだろう、という気持ちですけれど、求めていくしかないですかね。ここで生活している人間としては

防衛省は約9200万円の税金を投入し、米軍から引き取った汚染水、ドラム缶にして2100本分を県外の業者に送り処理する。多額の税金が投入されるからには国民に十分な説明がなされるべきだと、沖縄大学の桜井国俊名誉教授は指摘する。

沖縄大学 桜井国俊名誉教授:
当然のことながらサンプルをとって、この濃度なら業者は幾らで処理しますよ、という見積が出て。「このような廃棄物だったので幾らでやってもらうことにしました」ということで、初めて国民への説明責任が果たせるわけです

さらに、今回の防衛省の対応について桜井名誉教授は、環境問題が起きた際の汚染者負担の原則に反したもので“悪しき先例”になると批判した。

沖縄大学 桜井国俊名誉教授:
基地を返す前なのに日本政府が尻拭いをするという、とんでもない先例が生まれたんです

泡消火剤であふれる普天間基地、湧水からは高濃度を検出

これは、沖縄テレビが米情報公開法で入手した写真。

2020年4月、基地の外にも泡が流れ出し、県民を不安に陥れた事故の際の普天間基地内を捉えたものだ。一面、大量の白い泡で覆われている。

米情報公開法で入手

泡消火剤が排水溝に流れこまないよう、海兵隊員が資材でせき止めようとしている様子がわかる。この事故の原因は兵士たちのバーベキューだった。

今回入手した報告書からは、普天間基地内で2019年から2020年まで4件の流出事故が起きていたにもかかわらず、そのうちの2件しか日本側に通知されていないことがわかった。

基地内で一体、何が起きているのか…。汚染源の特定が不可欠だが、日米地位協定が壁となり調査は行われないままだ。

平良いずみアナウンサー: 
普天間基地内での立ち入り調査が行えない中、汚染源を特定するにはより詳細なデータが必要として、県はこれまでに高濃度の値が検出されている宜野湾市の喜友名泉(チュンナガー)をはじめ6カ所で毎月、水質調査を実施します

水質調査の現場を取材する平良いずみアナウンサー

2020年度まで年に2回行われてきた調査。宜野湾市の喜友名泉では、1リットル当たり1600ナノグラム、1100ナノグラムと国の暫定指針値をはるかに上回るPFOSとPFOAが検出されている。

また、メンダカリヒーガーでは670ナノグラム、1100ナノグラムなどとなっている。こうした湧水から高濃度の値が検出されることは、何を意味しているのか。

京都大学 環境衛生学 原田浩二准教授:
PFOS、PFOAは少しずつ土壌にしみ込む。ずっと過去から使われてきたものを表していると考えている

汚染源の特定ができない状況で今回、日本側が引き取った汚染水の検査を行うことは事実の解明には不可欠。桜井名誉教授の指摘にもあったように多額の税金が投入される以上、防衛省は説明責任を果たすことが求められている。

【編集後記】
“永遠の化学物質“と呼ばれるPFASは、発がん性のみならず、赤ちゃんや子どもの成長に悪影響を与えるという研究結果が、次々と明らかになっています。私自身、6歳の息子を育てる母親のひとりとして、不安でたまらないというのが正直な気持ちです。

息子が乳幼児だった時は、問題の発覚前。粉ミルクを作る際に水道水を煮沸して飲ませてきました。ミネラルウォーターに含まれるマグネシウムなどのミネラル成分が、赤ちゃんの胃や腎臓などに負担をかけてしまうとされているからです。その後、突き付けられたのは、子どもに飲ませていた水に汚染物質が含まれていたという事実。何とか何とかしなければ、その一心で取材を続けています。

現在、汚染が発覚した北谷浄水場から供給される水に含まれるPFOSとPFOAの値は、厚生労働省の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムを下回っています。ただ、国内のPFAS研究の第一人者である京都大学・医学研究科の小泉昭夫名誉教授は「胎児・子どもへの影響を考えると、10ナノグラム以下が望ましい」としています。

「子どもたちを守りたい」。いま沖縄の母親たちが勇気を振り絞り、声をあげています。その慟哭にも近い声を全国に届け、現状を変えていくのが私の仕事。そう自分を奮い立たせて、きょうも現場に向かいます。

最後に、この問題は決して沖縄だけの問題ではなく、全国の在日米軍基地で起きているということを追記して、ペンを置きます。

(沖縄テレビ アナウンサー 平良いずみ)