国内3例目 "ゲノム編集”トラフグにGOサイン
10月29日、ゲノム編集技術で開発された「高成長トラフグ」の販売・流通が認められた。ゲノム編集技術応用食品としては、2020年12月の血圧を下げる成分を高めたトマト「シシリアンルージュハイギャバ」、2021年9月の可食部を増やしたマダイ「22世紀鯛」に続き国内3例目。
今回開発されたゲノム編集トラフグは、従来品種と比べ、成長速度が平均で1.9倍、最大で2.4倍に高められているのが特徴。食欲を抑える働きをする「レプチン」という遺伝子を、機能しないようにするゲノム編集技術がこれを可能にした。
この記事の画像(4枚)あわせて、飼料の利用効率も42%改善。飼育期間の短縮や、えさの削減などにより、生産コストを抑え、環境負荷への低減も期待される。このトラフグは京都大学と京都市のベンチャー企業「リージョナルフィッシュ」が共同開発したものだ。
来世紀には当たり前?「22世紀ふぐ」と命名
開発会社では、ゲノム編集技術を活用した「ナノジーン育種」によって育成された新しい品種として、22世紀には当たり前に食べられているかも知れないという意味で「22世紀ふぐ」と命名した。「ナノジーン育種」という言葉も、開発会社が、ゲノム編集食品関連のベンチャー企業や研究者とも相談し、特別に作った名称だ。
ゲノム編集技術は、DNAを切断する酵素を用いて、ゲノムの特定の場所を改変する技術だが、外来遺伝子を組み込むこともできる。厚生労働省は、2019年、ゲノム編集食品の食品衛生上の取り扱いについて、生物が本来持つ遺伝子だけを改変したゲノム編集食品は、従来の品種改良と差がないと判断。安全審査を必要としない「届け出制」を導入した。
消費者の「誤解」を解くためのネーミング
外来遺伝子が組み込まれている場合には、当然、「遺伝子組換え食品」と同様に国の安全審査が必要となる。しかし、消費者からは、ゲノム編集食品に対して安全性を不安視する声もある。中には、ゲノム編集が、遺伝子組み換えも含んだ広範囲に及ぶ技術で、ゲノム全体を編集している技術と”誤解”している人もいるという。
「ナノジーン育種」の名前には、ゲノム編集が、10億分の1(ナノ)程度の遺伝子(ジーン)を改変する技術だということを伝える狙いがある。開発会社では、外来遺伝子が組み込まれていないことをアピールし、ゲノム編集技術に対する正しい理解を広めていく考えだ。(後編に続く)
(画像は、リージョナルフィッシュ提供)
(フジテレビ社会部・厚労省担当 熱田信)