本格的にスタートした2021-2022シーズンのフィギュアスケート。

北京オリンピック代表最終選考会となる、12月の全日本選手権の予選会が始まった。6つの地方大会、東・西日本選手権を勝ち抜いた選手だけが、全日本の舞台にたどり着くことができる。

10月1日から10月3日に行われる関東選手権に出場するのは、18歳の鍵山優真だ。昨シーズン、2種類の4回転を武器にシニアデビュー。

鍵山優真
鍵山優真
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その目覚ましい活躍は、世界に強烈なインパクトを残し、一気に北京オリンピックメダル候補にまで名乗りを上げた。

オリンピック2大会の出場経験を持つ父・正和コーチと共に目指す、鍵山の北京オリンピックシーズンの挑戦に迫る。

“王者”同士の熱き戦いに刺激

世界選手権(2019年)をスタンドで観戦する鍵山優真
世界選手権(2019年)をスタンドで観戦する鍵山優真

2019年の世界選手権、鍵山はさいたまスーパーアリーナのスタンドにいた。

リンクで繰り広げられていたのは、オリンピック王者・羽生結弦と世界王者・ネイサン・チェンの息をのむ熱戦。

「すごい、すごすぎる。こんなん勝てない」

当時中学3年生の少年には眩しすぎる光景だった。

王者たちに大きな刺激を受けた鍵山は翌シーズン、その才能を開花させる。

この年に4回転トゥループを習得。大きな武器を手に入れ、全日本ジュニア選手権で初優勝。さらにジュニアながら全日本選手権で3位。国際大会でもメダルを量産(ユース五輪:金、四大陸選手権:銅、世界ジュニア選手権:銀)、結果を残したシーズンとなった。

飛躍したシーズンで見えたオリンピック

ジュニアでの実績を引っ提げ、満を持してシニアデビューを果たした2020ー2021シーズン。

初戦の関東選手権で当時、世界5位相当のハイスコア(287.21)を叩き出し、優勝という最高のスタートを切った鍵山。

その後、NHK杯でも優勝を飾り、シニアでも実力をいかんなく発揮する。

2020年の全日本選手権は2年連続3位に
2020年の全日本選手権は2年連続3位に

さらに12月の全日本選手権では、オリンピックメダリストの羽生、宇野昌磨と渡り合い、2年連続の3位。

羽生も「彼の強さは負けん気の強さだったり、向上心だったり、勢いだと思っている」と期待を寄せる存在にまでなった。

そして、世界選手権代表に選出。スタンドで観戦していた日からわずか2年で世界最高峰の舞台にたどり着いた。

その世界選手権で、鍵山は躍動する。
ショートプログラム(SP)で、初出場とは思えない堂々とした演技を見せ、自身初の100点台(100.96)を突破。

世界選手権でフリーを演じる鍵山
世界選手権でフリーを演じる鍵山

さらにフリー(FS)でも、高い出来栄えで4回転を3本とも成功させると、スピンやステップでも最高評価を受け、技の1つ1つで高得点を連発。

初出場ながら銀メダルを獲得し、ネイサン・チェンや羽生と同じ表彰台へと上った。

世界選手権で表彰台に上った鍵山
世界選手権で表彰台に上った鍵山

「ちょっとびっくりし過ぎて、何も…、何も言葉が見つからなくて、ただただびっくりしているのと、うれしいのが半々くらい」

メダル獲得後の感情入り交じった気持ちを話す鍵山。そんな初々しさが残る中でも見据えていたのは、オリンピックイヤーでもある次のシーズンだ。

「オリンピックは今まで自分が小さい頃から“夢”として掲げているものなので、もちろん来年の北京オリンピックは出場して表彰台を狙っていきたいと思います。自分だけじゃなくて他のライバル選手ももっともっと頑張ってくると思うので、自分も負けないように頑張りたい」

大会から一夜明けた会見では「調子が悪くても良くてもスケートはすごく楽しいというか、挑戦し続けている限り楽しいので、イヤになったりとかはしない」と、スケートへの情熱をさらに燃やしていた。

“挑戦”の新プログラム

2021年の世界選手権で北京オリンピックの枠を男女ともに3枠獲得した日本。

その1枠をつかみとるため、鍵山は2つのプログラムを新調。振付を担当するのは浅田真央ら数々のトップスケーターを手掛けたローリー・ニコル氏。タッグを組んで2シーズン目となる。

SPの曲は「When You’re Smiling」、FSは「グラディエーター」で勝負に出る。両プログラムとも、ローリー氏が選曲した。

げんさんサマーカップで新SPを披露した鍵山
げんさんサマーカップで新SPを披露した鍵山

SPはジャズの音楽にのせた軽やかなプログラム。「もっと成長した姿を見せたい」と挑戦することを選んだ。

鍵山は「こういう状況だから少しでも笑顔が増やせるようにとローリーさんが選んでくれました。自分の持ち味の“たくさんの笑顔”を見せられたらいいなって思います」とSPに込めた思いを語る。

一方のFSは静かな曲調が続き、高度な表現やスケーティング技術が求められ、鍵山にとっても新たなチャレンジになる。

ローリー氏からは「力強く、でも戦っているだけじゃなくていろんな人の思いや優しさ、切なさなどいろんな感情が含まれている、そういう部分を強弱つけて演技をしよう」とアドバイスを受け、今後さらにブラッシュアップしていきたいという。

「あとは登るだけ」壁にぶちあたってもはい上がる

しかし、レベルアップしたプログラムはそう簡単に滑らせてくれない。

今シーズン初戦の「げんさんサマーカップ」で、鍵山は思わぬ壁にぶつかった。

SPでは冒頭の4回転サルコウが2回転になるミス。続く4回転トゥループでも転倒するなど精彩を欠いた。自己ベストよりはるかに低いスコア72.41で3位スタートに。

「つながりとかが難しい。あとはほとんどステップなので、これからもっと体力が必要になってくると思いますし、ジャンプの精度を上げていかないといけない」と新SPの難しさに直面した。

新FSも鍵山にとっては新たなチャレンジに
新FSも鍵山にとっては新たなチャレンジに

翌日のFSでも前日に課題として挙げていたジャンプのミスが重なり、スコアは伸ばせず、総合で2位という波乱のスタートとなった。

それでも高みを目指す鍵山は、前だけを見て前進していく。

「今までにないくらいボロったので、悔しいと感じますけど、開き直ったというか、ここまで落ちちゃったからあとはもう登っていくだけじゃんっていう、そういう気持ちです」

次戦は関東選手権。11月からGPシリーズで再び世界のトップスケーターたちと渡り合う鍵山にとって、貴重な実践の場。初戦からおよそ2カ月、しっかりと修正をしてきているはずだ。

北京オリンピック出場、さらにメダル獲得を見据える鍵山の挑戦はまだ始まったばかり。

関東選手権でどんな演技を見せるのか注目したい。

特集「@リンクサイド」では、12月の全日本選手権までフジテレビフィギュアスケート取材班が独自の目線で取材したエピソードを伝えていきます。

フィギュアスケート取材班
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