視覚障害を持つ選手たちが、鈴の入ったボールの”音”を頼りに得点を奪い合う競技「ゴールボール」。
世界ランク5位の日本女子は、3位決定戦で世界ランク3位のブラジルに挑んだ。
予選リーグでは4-4と引き分けていた相手を6-1で破り、2大会ぶりとなるメダルを獲得した。

今大会、チームを牽引し続けてきた、最年少20歳の萩原紀佳(はぎわら・のりか)選手が表彰台をかけた大一番でも、気迫のプレーを見せた。

準々決勝と準決勝でチームの全得点である9ゴールをあげるなどここまで、チームの全得点のうち実に80%以上をマークしている萩原選手。
網膜芽細胞腫により右目の視力はなく、左目は文字が少し読めるほどの視力である彼女はスポーツとはあまり関わることなく過ごしてきた。

そんな彼女が、ゴールボールと出会ったのは高校生の頃。
当時は「すぐにドハマりすることはなかった」が、その後、努力を重ね、20歳にして日本代表の”エース”となるまでの成長を果たした。

迎えた3位決定戦では前半から2得点を奪ってみせる。
さらに、欠端瑛子(かけはた・えいこ)選手も3得点をマークし、前半で5-0と強豪ブラジルを突き放す日本。

さらに、萩原選手はディフェンスでも素晴らしいパフォーマンスを披露した。
後半残り約6分で迎えた相手のペナルティスロー。
たった一人で大きなゴールを守るため、防ぐことは難しく、多くの場合、得点を奪われてしまう場面だ。

相手選手の投じた強烈なスローイングは、ゴールネット目前。
それでも萩原選手の集中力は極限まで研ぎ澄まされていた。
見事な身のこなしで横っ飛び。足でボールをはじき返した。
たくさんのボランティアスタッフも見守ったスタンドが、大きな拍手に沸いた。

見事、6-1でブラジルに勝利し、銅メダルを手にした日本。
試合後には涙にくれる選手たちが円陣を作るとスタンドからも労いの拍手が鳴りやまることはなかった。

萩原選手は涙交じりの声で、ゴールボールという競技への思いを語ってくれた。
「金メダルを目指していたので悔しいけれど、銅メダルを持って胸を張って帰りたいです。ゴールボールに出会って、本当に欠かすことのできない存在になりました。ゴールボールがなければ”悔しさ”や”嬉しさ”そして、スポーツの素晴らしさを知ることはできなかったので本当に出会うことができて良かったと思っています」

高校までスポーツと関わることのなかった一人の少女は、ゴールボールと出会ってトップアスリートにまで成長した。
そして20歳となった今、パラリンピックのメダリストとなった。
3年後、パリの舞台では表彰台の真ん中で笑っている姿を見せてくれることに期待したい。

【フジテレビパラリンピック取材班 村山尊弘】

村山 尊弘
村山 尊弘