千葉・幕張メッセで行われたシッティングバレーの予選リーグ。
記者のいるメディアルームの隣には、選手たちがウォーミングアップを行うスペースがあり、ボールの音、そして外国チームの陽気な歌声が耳に届く。
そんなシーンに出くわすと、まさに今、世界各国が集うパラリンピックが開催されていることを肌で感じさせられる。

午後に行われたのは3大会ぶりの大舞台に挑む日本男子の初戦。相手は格上のRPC(ロシアパラリンピック委員会)。
高さと、パワー。見るからに強靭なフィジカルを持つ選手たちが揃い、日本の前に立ちはだかった。両チームによる試合は驚きの連続だった。

シッティングバレーはその名の通り『座って行うバレーボール』
パラリンピック競技の中では、テレビ中継される機会が少なく、陸上や水泳などに比べると目にする機会は少ないが、初めて生で試合を観ると、その迫力に圧倒される。

目を引くのは選手たちの上半身の力強さ。
下半身に欠損があったり、運動機能に障がいのある選手たちが上半身のパワーや、鍛え上げられた体幹を駆使してプレーする。
お尻が床から離れると反則となるため、手を巧みに使ったり、床を蹴ったりして、滑るようにコートを移動。

中でも、体を少し傾けて放つスパイクは驚愕だ。
一般のバレーボールよりも狭いコートに選手たちが密集するため、その間を、針の穴を通すように決めていく。体のバランスを保ちながら高速のスパイクを繰り出す選手。それを綺麗にレシーブしてみせる選手。

目で追うだけで大変な、見事なラリーが続いていく。一般のバレーボールに負けずとも劣らない、激しい応酬。そんな超人的な選手たちによる試合は熱戦となった。

第1セットを大差で落とし、第2セットも奪われて後のなくなった日本。
それでも第3セット、リズムに乗り出し、意地を見せる。
セット序盤、北京大会にも出場した皆川鉄雄選手のアタックが決まる。
さらにRPCのミスも重なり、この日、初めてリードを奪うと、観戦に訪れていた千葉市の中学生たちの大きな拍手が、選手たちの背中を押す。
シーソーゲームを繰り広げながら、格上に食らいつく日本。

得点が決まると、ノリノリのJ-POPが会場に流れる。アニメ「鬼滅の刃」のテーマ曲に、嵐の人気ソング。大歓声はないが、その代わりに日本の選手にとって、なじみのあるメロディーが、苦しい時間帯でも奮い立たせてくれていたのではないだろうか。
記者席や関係者席、ボランティアたちからも日本の得点に拍手が送られた。

最後はRPCに押し切られ、敗れた日本。
それでも終盤にかけて力を発揮し、次戦につながる戦いを見せてくれた。

試合後には、両チームが互いに向き合って拍手を送り健闘を称えあった。
日本は女子も敗れたため、ともに次の試合で今大会初勝利を目指す。
次戦以降も、自らと向き合い、コートの上に辿り着いた選手たちの華麗な技に注目だ。

【フジテレビパラリンピック取材班 村山尊弘】

村山 尊弘
村山 尊弘