「戦艦大和」が誇る世界最大級の主砲身を削り出した大型旋盤を、再び呉の地に運ぼうと、大和ミュージアムが始めたクラウドファンディング。
国内だけでなく、海外にも支援の輪が広がっている。
「戦艦大和」にまつわる貴重な資料が呉に
8月3日から、クラウドファンディングを通して始まった大型プロジェクト。
8月26日までの寄付額は、目標額を大きく上回り、なんと2億円近くにまで達している。
広島・呉市の大和ミュージアム。
呉が生みだした巨大戦艦大和は、いまなお多くの人に注目を浴びる存在だが、その大和に関わる貴重な現物資料が呉市にやってくる。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
この大きな主砲を、1つずつ削り出していったのが大型旋盤。今回は、なくなってしまったら取り戻せない貴重なものだったので、譲り受けて展示をしたい思いだった
“この世に1台”の大型旋盤…開館当初からラブコール
1938年にドイツから輸入され、呉海軍工廠の砲身工場に設置されていた大型旋盤「15299機」。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
(当時工場があったのは)ちょうど今、小さい船が走っている対岸ですね。大型旋盤は、あちらのほうにあったと記録がある
旋盤とは、金属の横から刃を当て削り出す工作機械。
長さ17メートル、幅5メートル、重さ219トンある機械は、戦艦大和が誇る世界最大級の主砲身を削り出した、この世に1台しか残っていない貴重な現物資料。
戦後、民間企業に払い下げられ、船の部品を作るために稼働していたが、大和ミュージアムは2005年の開館当初からラブコール。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
(担当者が会社を訪ねたが)当時はまだ現役で削っていた。働いていたので、ちょっと勘弁してもらえないかと断られた
1日で1億円!前例のないスピードで目標達成
それから15年の月日がたった2020年の初め、兵庫県の会社から寄贈の話が持ち掛けられた。
2021年の春先から輸送費などの費用を募るため、クラウドファンディングの準備をし、8月3日から応募を始めた大和ミュージアム。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
額、スピード、ほとんど前例がないと聞いている。2カ月を予定していたが、1日(で達成)ということになりましたので、ある意味、対応が追い付かなかったと。わたしたちが寝ている間に集まってしまったので…
第1目標の4,800万円、さらには第2目標の7,200万円を一気に乗り越え、第3目標の1億円を、わずか1日で達成した。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
本当に驚きで、大和を応援してくださる人の思いを感じた
ふるさと納税型のため、呉市以外に住む人からの寄付が多く、年齢層は20代~40代が中心。
海外からの問い合わせもあるという。
現在、寄付の総額は約1億9,700万円。
呉まで運んで設置するだけでなく、屋根の設置も可能となることから、充実した展示環境を整えるための準備も進められている。
大和ミュージアム学芸課・兼光賢課長:
呉の街だけじゃなく、全国的に(コロナ禍で)暗い状況になっている。少しでも明るい話題が提供できるように頑張っていきたい
クラウドファンディングは9月30日まで行われ、大型旋盤の除幕式は2022年4月23日に予定されている。
大和ミュージアムは、緊急事態宣言のため、2021年9月12日まで臨時休館中。
(テレビ新広島)