韓国の感染予防対策「K防疫」が苦境を迎えている。文在寅政権は「K防疫は世界一」と自画自賛したが、ワクチン確保に苦戦。接種完了者の割合は全体の約13%にとどまり、感染者も急増していて、ワクチンをめぐる激しい争奪戦も起きている。

「取材部 ネタプレ」で今回取り上げるのは、韓国・ソウル支局の熱海吉和記者が伝える「ワクチン不足で偽受験生も登場?」。

感染者急増で過去最多更新…防疫措置が最高レベルに

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
こちら韓国の新規感染者数の推移をグラフにしたものです。日本も感染者が増えていると思いますが、韓国でも7月に入り感染者が急増していて、21日も過去最多(1842人)を更新しています。
こういった状況を受けて、首都圏などでは防疫措置が最高レベルに引き上げられました。どういったものかといいますと、お店での飲食など私的な集まりは午後6時以降は2人まで、冠婚葬祭に関しても出席は親族のみなど、厳しいものになっています

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FNNソウル支局 熱海吉和記者:
こんな規制も登場しています。スポーツジムのランニングマシンの制限速度は6キロ以下、早歩き並みのスピードです。さらにジムに設置されたシャワーも使用禁止。ついには、エアロビクスなどでアップテンポな曲が禁止されました。具体的には1分間の拍数が120を超える曲はだめという基準です。例えば、BTSの大ヒット曲「Butter」はOKですが、2012年に日本でもヒットしたPSYの「江南スタイル」は使用禁止になっているんです

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
口からの飛沫を防ぐためとしていますが、規制開始から1週間以上も経ってましてジムの関係者からは「意味がない」と怒りや戸惑いの声も出ています

背景にはワクチン不足…“偽受験生”まで登場

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
さまざまな防疫措置を取っていますが、防疫の切り札といえるワクチン接種はうまくいっていません。こちらは日本と韓国の接種人数(1回以上)のグラフで、人口も違うので数ではなくグラフの形を見ていただきたいのですが、日本は右肩上がりに伸びているのに対し、韓国は6月中旬以降横ばいの状態が続いて、接種が進んでいません。実際に接種人数がゼロだった日もあるくらいです。比べてみると一目瞭然ですよね

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
さらに、韓国でのワクチン接種完了者の割合。韓国は全人口の13%にとどまり、ここでも遅れをとっているのがわかります。なぜこういったことになっているのか。答えは簡単です。ワクチンが足りていないのです。
韓国政府は国民が3回近く接種可能な1億9300万回分のワクチンを確保したと発表しています。十分な数を確保しているように思えますが、実際に6月までに入ってきたのは確保数の1割以下、1860万回分だけです。韓国メディアは「K防疫の成功に油断してワクチン確保が後手に回った結果、入荷時期が遅れた」と痛烈に批判しています

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
このワクチン不足が別の問題も生み出しているのです。それが「偽受験生でワクチンゲット」。どういうことかと言いますと、受験戦争が激しい韓国では受験生が非常に優遇されています。9月に模擬試験が行われることなり、受験者がワクチンの優先接種対象になったんです。
ところが申し込みが始まったと同時に、受験とは全く関係のない人たちがワクチン目当てに殺到したというのです。韓国メディアによると、この“偽受験生”は3万人にも上るということで、受験生を踏みにじるなりふり構わぬワクチン争奪戦が繰り広げられています

2回目で異なるワクチンを接種する事態に

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
問題は他にもあるんです。2回目のワクチンがなくなりました。文在寅大統領は「6月末までに1300万人が1回目の接種を終える」ことを目標に掲げ、躍起になって接種を進めていました。その結果目標は達成したのですが、2回目のワクチンがなくなってしまったということなのです。ファイザー製のワクチンなども含めて、一定期間内に2回目の接種を受けないと十分な免疫力がつかないとされていますので、重大な問題ですよね

加藤綾子キャスター:
そうですよね。2回目の接種はどうするんですか。めどたってないんですか?

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
はい。私も実は6月にアストラゼネカ製の接種を受けたのですが、2回目はなんとファイザー製の接種を受けることになりそうです。このように、ワクチンがなくなったことで別のワクチンを打たなければならなくなった人、少なくとも76万人に上るということなのです

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
韓国政府は「複数のワクチン接種で免疫効果が高まって安全性に大きな問題はない」と主張していますが、韓国メディアからは「目標を達成するために2回目のワクチンを使い切ってしまった、接種の計画を甘く見積もっていた」と批判が上がっています。
このように世界一と自画自賛していたK防疫への韓国国民の不信感は高まりつつあります。韓国政府は今後、ワクチンを大量に入荷すると発表していますので、ワクチン接種のスピードが日本並みに上がってくるのかが信頼回復の鍵になっていきそうです

感染予防対策に成功したと油断があったのでは

加藤綾子キャスター:
どうもありがとうございました。柳澤さん、これまで感染対策に成功していた国でもワクチン接種をスムーズに進める難しさが浮き彫りになっていると。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
リポートにもありましたけど、油断があったのではと。アリとキリギリスじゃありませんけどね。同じようなケースは台湾もそうなんですよね。感染がうまく抑え込まれていたのでワクチンの調達は遅れをとった。決して油断せずにやっぱり最悪の状態を想定して手を打つというのが危機管理の根底ですからね。もう一度そこは押さえたほうがいいと思いますね

(「イット!」7月22日放送より)

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